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サイエンスコミュニケーションの新たな課題? X上で科学者は平均よりも多く政治的発言を行っており、強いほど信頼を失う傾向があるという論文

2016年から2022年にかけて、Twitterを利用していた9万8000人の科学者行動と、1,700人のサンプルに対する科学者のオンラインでの政治的発言の影響を分析した論文「Politicized Scientists: Credibility Cost of Political Expression on Twitter」(Eleonora Alabrese, Francesco Capozza, Prashant Garg、CESifo Working Paper No. 11254、2024年、 https://www.cesifo.org/en/publications/2024/working-paper/politicized-scientists-credibility-cost-political-expression )が公開された。


●概要

オンラインのサイエンスコミュニケーションにおいてはツイッターが重要な役割を果たしていたことがわかる。

「Politicized Scientists: Credibility Cost of Political Expression on Twitter」(Eleonora Alabrese, Francesco Capozza, Prashant Garg、CESifo Working Paper No. 11254、2024年、 https://www.cesifo.org/en/publications/2024/working-paper/politicized-scientists-credibility-cost-political-expression )

調査対象となった科学者97,737人の44%が政治的発言をしており、これは一般利用者の6倍に当たる。政治的テーマの中でも特に気候変動と人種問題について科学者の中で分極化していることがわかった。

「Politicized Scientists: Credibility Cost of Political Expression on Twitter」(Eleonora Alabrese, Francesco Capozza, Prashant Garg、CESifo Working Paper No. 11254、2024年、 https://www.cesifo.org/en/publications/2024/working-paper/politicized-scientists-credibility-cost-political-expression )
「Politicized Scientists: Credibility Cost of Political Expression on Twitter」(Eleonora Alabrese, Francesco Capozza, Prashant Garg、CESifo Working Paper No. 11254、2024年、 https://www.cesifo.org/en/publications/2024/working-paper/politicized-scientists-credibility-cost-political-expression )


また、「右」と「左」のどちらかへの支持が強いほど、その科学者に対する信頼度は低くなった。
科学者の性別は信頼度に影響がなかったが、評価の高い大学に所属し、正教授であることは信頼性に寄与した。

●感想

なんとなくそんな気はしたが、アメリカの科学者は政治に関心が高い。日本の場合は専門領域でだいぶ温度差がありそうだ。

政治的信条が強いほど、信頼性が下がるのは感覚的に納得できる。日本でもさまざまな科学者の方々がXで政治的な発言をしている。
気になったのは周囲からみた政治的な傾向と実態は違う点だ。たとえば、私は偽・誤情報に関して日本政府や官公庁の施策に疑問を呈することがよくある。これをもって、「左」、「リベラル」と思う人がいる。その一方で、リベラルな主張(特にメディアから発信されるもの)の問題点もよく指摘する。なぜか、この時、「左」、「保守」と言われることがない。その結果、「左」、「リベラル」という印象が強くなるような気がしている。
そもそも左、右という分け方も無理がありそうな気がするのだが。

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