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ロシアのAI強化型ボットMelioratorによる影響工作をFBIとオランダ、カナダ当局が連携して摘発

アメリカ司法省はFBI、Cyber National Mission Force (CNMF)と、オランダのthe Netherlands General Intelligence and Security Service (AIVD)、Netherlands Military Intelligence and Security Service (MIVD)、the Netherlands Police (DNP)およbにカナダのthe Canadian Centre for Cyber Security (CCCS)と協力し、ロシア政府支援のAI強化型ボットMelioratorによる影響工作を暴き、SNSプラットフォーム各社に警告を発した。

●概要

2022年初頭、ロシアのプロパガンダメディアRTの副編集長だった人物がMelioratorの開発を主導した。2022年以来、RTの経営陣のテレビニュース放送以外の情報配信手段の開発のためにその人物はSNSボットファームを作成、運用できるソフトウェアの開発を開始した。
SNSで架空のオンライン人格を作り出し、RTやボットファームの運営者はそのアカウントを通じて情報を大規模に配信できるようになった。2022年4月にSNSボットファームのインフラを準備した。
2023年初頭、ロシア大統領府の承認と財政支援を受け、ロシアのFSBが民間情報機関(P.I.O.)を設立し、指揮した。P.I.O.のメンバーには、RTで開発を主導した人物を含むRTの従業員などが含まれていた。

MelioratorはXで稼働しており、968のXアカウントが特定されている。コードの内容からXだけではなく他のSNSでの課活動も視野にいれていたと考えられる。Melioratorには下記の機能があった。

・本物らしく見えるSNSのペルソナを大量に作成する
・典型的なSNSユーザーに類似したコンテンツを書き込んだり、他のアカウントのフォローやいいね、リプライ、リポストなどひととおりの活動を自律的に行える。
・他のボットペルソナの偽情報をミラーリングする。
・既存の虚偽の物語を継続的に利用して影響力を増幅する。
・プロトタイプに基づいて、トピックとフレーミングを含むメッセージを策定する。

State-Sponsored Russian Media Leverages Meliorator Software for Foreign Malign Influence Activity、https://www.ic3.gov/Media/News/2024/240709.pdf

また、検知を逃れるための工夫なども行われていた。

Justice Department Leads Efforts Among Federal, International, and Private Sector Partners to Disrupt Covert Russian Government-Operated Social Media Bot Farm
https://www.justice.gov/opa/pr/justice-department-leads-efforts-among-federal-international-and-private-sector-partners

State-Sponsored Russian Media Leverages Meliorator Software for Foreign Malign Influence Activity
https://www.ic3.gov/Media/News/2024/240709.pdf

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『犯罪「事前」捜査』(角川新書)<政府機関が利用する民間企業製のスパイウェアについて解説。

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