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デジタル権威主義

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デジタル権威主義についての情報を発信してゆきます。 当面は備忘録代わりにニューズウィーク日本版などに発表した記事の資料を掲載します。余裕できたらオリジナル記事を書くかもしれません。
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#影響工作

DFRLabによる中国の対台湾デジタル影響工作の実態

DFRLabによる中国の対台湾デジタル影響工作の実態

DFRLabが中国による台湾に対するデジタル影響工作をまとめたレポート「Targeting Taiwan: China’s influence efforts on the island」( https://dfrlab.org/2024/05/06/targeting-taiwan-chinas-influence-efforts-on-the-island/ )が5月6日に公開された。

●概

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失敗しても成功? ヨーロッパの亀裂につけ込む中露

失敗しても成功? ヨーロッパの亀裂につけ込む中露

EU議会選挙を控えてヨーロッパ全域で中露の工作への警戒が強まっている。多くの国は深刻な国内問題を抱えており、その問題を煽っているのが中露という構図になっている。そのため各国が戦っているのは中露と国内のグループの両方だ。そして、多くの国では対中露を優先し、かならずしも国内グループには対処しきれていない。実態としては国内問題の方が大きく、中露はそれを悪化させている。実態と対策の優先度のギャップは国内問

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ロシアの影響工作をチェコ保安情報庁が暴いたのはEU議会選挙対策?

ロシアの影響工作をチェコ保安情報庁が暴いたのはEU議会選挙対策?

先だってチェコがロシアの影響工作を暴いたニュースが流れた。このnoteではこうした影響工作について取り上げてきたが、あえて取り上げなかった。いろいろと気になることがあって取り上げなかった。

●事件の概要親ロシア派のウクライナの政治家Viktor Medvedchukと、ウェブサイト「Voice of Europe」運営者Artem Marchevskyiがヨーロッパで影響工作を行っているとチェコ

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日本でロシアの情報戦について語る時、必ず抜けている話題についての備忘録


●ロシアの情報戦を語る時にすっぽり抜けているいくつかの話題2016年のアメリカ大統領選以降、ロシアの情報戦について国内外で語られることが多くなり、ウクライナ侵攻以降さらに増えた。
しかし、欧米の研究機関などで取り上げられているのに日本ではなぜか語られることの少ないことがいくつかある。気になるので備忘録代わりにここに書いておく。

1.コロナ禍で中露は欧米の極右、陰謀論などと反ワクチンでつながり、

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ウクライナ侵攻から2年 ISDによるロシア情報戦の分析

ウクライナ侵攻から2年 ISDによるロシア情報戦の分析

Institute for Strategic Dialogue (ISD) はワシントン、ベルリン、アンマン、ナイロビ、パリに拠点を持つ国際的な非営利団体だ。人権の保護、偽情報や過激派の活動の分析を行っている。2024年2月23日にISDが公開した「Two Years On: An Analysis of Russian State and Pro-Kremlin Information War

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中国のSpamouflageについてはニュースよりISDの記事がわかりやすかった

中国のSpamouflageについてはニュースよりISDの記事がわかりやすかった

ここ数日、中国のSpamouflageについてのニュースをよく見かけるようになった。Metaの第3半期ごとの脅威レポートが公開されたことがきっかけなのだろう。記事は第2四半期の脅威レポートに書かれていた史上最大規模のテイクダウンの話と、第3四半期のレポートの内容がごたまぜに書かれており、さらにインタビューなども入っていてイメージはよく伝わるが具体的なことがわかりにくい。というか出典へのリンクのない

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ハマスのサイバー能力に関するあれこれ

ハマスのサイバー能力に関するあれこれ

ハマスのサイバー能力に関するあれこれをメモしておこう。近いうちにまとめます。

●ざっくりした全体の箇条書き・ハマスのサイバー能力は中露やアメリカと比べるとまだまだ低いが急速に成長しており、その背景にはiイランのIslamic Revolutionary Guard Corps=IRGCのQuds Forceの支援がある。ハマスが開発したアプリにもその痕跡があった。大西洋評議会はグリーンハットと呼

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米国務省GECの中国影響工作報告書は網羅的だが、「アメリカの古い地図」だった

米国務省GECの中国影響工作報告書は網羅的だが、「アメリカの古い地図」だった

アメリカ国務省グローバル・エンゲージメント・センター(GEC)が2023年9月28日に公開した「HOW THE PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA SEEKS TO RESHAPE THE GLOBAL INFORMATION ENVIRONMENT」(https://www.state.gov/gec-special-report-how-the-peoples-republi

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昨年に比べ体系的整理の進んだ大西洋評議会の中国言論戦略分析レポート

昨年に比べ体系的整理の進んだ大西洋評議会の中国言論戦略分析レポート

中国のデジタル影響工作を論じる際、多くの専門家は個別の事象に焦点を当てる。そのことは問題ではないのだが、全体像を体系的に整理する試みはあまりない。全体像が見えなければひとつの作戦の成否も判断できないし、そもそも目的を正確に読み取ることもできない、と思うのだが、多くの専門家はそうは考えていないようだ。
大西洋評議会のレポート「CHINESE DISCOURSE POWER: CAPABILITIES

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2011年から2022年の127件の影響力活動を調査したプリンストン大学Online Political Influence Efforts Dataset

2011年から2022年の127件の影響力活動を調査したプリンストン大学Online Political Influence Efforts Dataset

プリンストン大学が定期的に行っているデジタル影響工作に関する今年の結果をまだ書いていなかった。今回はV4だ。以前のものについての記事は末尾のURLに掲載した。

レポートは、Online Political Influence Efforts Dataset(https://esoc.princeton.edu/publications/trends-online-influence-effort

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『中国の情報戦略: 世界化する監視社会体制』は網羅的な中国の影響工作解説書

『中国の情報戦略: 世界化する監視社会体制』は網羅的な中国の影響工作解説書

『中国の情報戦略: 世界化する監視社会体制』(ジョシュア・カーランツィック、前田俊一、東洋経済新報社)を読んだ。中国の影響工作についての網羅的な解説書になっていて、とても参考になった。いくつか気になる点もあったが、まずは内容をざっと紹介したい。

●本書の内容中国が世界に展開する影響工作(本書ではソフトパワーとシャープパワーに分けて論じている)について豊富な事例と歴史的経緯を追って紹介している。冒

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ウクライナ情勢を受けてロシアのプロキシも増強

ロシアのプロキシの動きについてはすでにご紹介したが、新しく発見されたプロキシがあったので付け加えた。オレンジ色の部分が新しく発見されたもので、主としてウクライナ情勢に関するプロパガンダを発信している。
ロシア対外情報庁(SVR)、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)、ロシア連邦保安庁(FSB)がそろって暗躍している。

*ウクライナ関連記事
ロシアが繰り広げるツイッターによる世論操作 Mytho

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