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アンソニー・トゥー「毒 サリン、VX、生物兵器」

・本書は毒性学の世界的権威である著者が明かす「最も恐れられる兵器」の実態と今後の日本が取るべき方針について書いた毒の解説書。

・サリンは1938年にナチス・ドイツの化学者が有機リン系殺虫剤の合成に従事していた中で誕生した。もともと虱(しらみ)に対する農薬として開発されたものだったが、ほんの少しテーブルの上に落としただけでも、呼吸困難や瞳孔の圧縮を引き起こすほどの凄まじい効果があった。

・VXはサリンよりも強力な神経ガスで、第二次世界大戦後のイギリスで開発がはじめられ、最終的にアメリカ陸軍が製造を成功させた。VXの特徴は蒸発しにくいこと。雨や風のない日なら、2週間ほど毒性を維持するとされている。意識障害やけいれん発作の初発症状から始まり、重症になると心肺停止が起こる。呼吸が致命的になるのはもちろん、皮膚からも浸透し死に至らしめる。

・数多ある生物兵器の中で「理想的な生物兵器」とされているのは炭疽菌。炭疽菌は炭疽病を起こす細菌であり、死亡率が高いので大変恐れられている病気。人間が感染するのは稀で、主に動物と接触する人(獣医・猟師など)がかかる病気であるが、その炭疽菌が多くの人の関心を集めている理由は、それが生物兵器として使われる可能性が高いから(人が炭疽菌によって死亡するまでのプロセスは本書をご覧ください)。

・本書では、数々の毒の説明(生物兵器・化学兵器・毒素兵器など)、これまでに歴史を揺るがした事件(オウム真理教地下鉄サリン事件・イラク戦争など)と毒の関係性、毒ガスの対処法、各国(アメリカ・イスラエルなど)の毒にまつわる実情と防衛体制など、知られざる毒の実態が書かれている。

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