ヘレン・フィッシャー「人はなぜ恋に落ちるのか? 恋と愛情と性欲の脳科学」
・本書は、恋愛の進化、表現、化学作用を専門とするアメリカでもっとも著名な人類学者である著者が、恋愛における強烈な脳の作用について解明した1冊。
・恋に落ちると、まずは意識が大きく変化する。あなたの「愛する対象」が、心理学者曰く「特別な意味」を持つようになる。愛する人が、新鮮で、唯一の、なにより大切な存在となる。
・恋愛関係へと発展するまでは、あれこれ目移りさはこともあるだろうが、あの人がいいかと思えば、やっぱりこちらがいい、というぐあいに。それでもやがてあなたはひとりの人に注意を向けるようになる。エミリー・ディキンソンがこのプライベートな世界のことを、「あなたの王国」とよんでいる。
・この現象は、人間には一度に複数の相手に恋愛感情を抱く能力がないという点と関係している。著者が日本(東京大学)、ニュージャージー州(ラトガーズ大学)をはじめとする各大学に通う男女に恋の情熱が世界共通であることを確認する恋愛アンケートを実施し、そのなかで79%の男性と87%の女性が、恋人と会えなくてもほかの人とはデートしないと答えている。
・愛に取り憑かれた人は、ほとんど愛する人のことしか目に入らないもの。その集中力たるやすさまじく、仕事、家族、友人をふくめた周囲のありとあらゆるものに迷惑をかけてしまうことも多い。スペインの哲学者オルテガ・イ・ガセットは、この現象を「ふつうの男の身にも起きる異常な集中状態」とよんだ。この高い集中度こそが、恋愛の中心的な特徴である。
・男も女も恋に夢中になると、相手に関連するありとあらゆる出来事や歌ら手紙、そして細々としたことにも意識を集中させるようになる。著者が実施したアンケートでも、回答者の男性73%と女性85%が、たとえささいなことでも、愛する人がいったことやしたことはよくおぼえていると答えている。そして83%の男性と90%の女性が、恋人を思い浮かべながら、そうした大切なひとときを頭のなかで再生させている。
・失恋した人には、からだを動かすことがとくにおすすめ。イスにうなだれ、電話のわきに陣取り、窓から外を眺めているとすれば、去った恋人に、痛む心の炎に、燃料をくべてしまっているようなもの。運動すればその炎が消費される。どんなことでもからだを動かすと、気分が高まってくるもの。ジョギングやサイクリングなどの精力的な肉体的活動は、脳内の側坐核のドーパミン分泌量を引き上げることで知られている。結果、多幸感がわき起こってくる。
・また運動はらセロトニン、そして沈静物質であるエンドルフィンの一部を高めてくれる。それに、記憶をつかさどりら新しい神経細胞を保護、製造する海馬内のBDNF(脳誘導神経向性因子)を増やすはたらきもある。じっさい精神分析医のなかには、運動(有酸素ら無酸素を問わず)が心理療法や抗うつ剤と同じくらいうつ症状の治療に効果的だと信じる者もいる。
・本書では「恋に落ちたらどうなるか」「動物たちの恋愛」「恋する脳をスキャンする」「愛が織りなす網の目模様」「なぜ「あの人」を好きになるのか」「人はなぜ恋をするのか」「失恋とはなにか」「ロマンスを長つづきさせる」「それでも人は恋に落ちる」という章で構成されており、「好きな人を考えると胸がいっぱいになる理由」「嫉妬が愛を育てる」「動物にもひと目惚れはあるのか?」「地球上は略奪愛であふれている」「恋する動物たちの脳で起きていること」「恋する脳は輝いていた!」「性欲と恋愛感情はべつのもの」「愛は「情熱」「親密さ」「意気込み」で構成される」「近くにいる人に恋に落ちやすい」「女は男を値踏みする」「人間は恋をするために進化した動物である」「失恋の痛手を癒す技術」ロマンスを長つづきさせる秘訣」など、科学的データをもとに恋や愛が私たち人類と生物にとって必要な理由や、恋愛を長つづきさせるコツ、消極的な相手をその気にさせる方法について紹介した内容となっている。
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