矢野拓実「君と出会って僕は父になる」
・本書は、クライアントワークとしてWEB、広告の写真・動画撮影のかたわら、作品制作を行うフリーランスの著者が、2020年に誕生した息子さんの育児や家庭での家事、日々の仕事を通じて、「子育て」について考えるフォトエッセイである。
・著者の奥様は陶芸家で、フリーランスの著者は、東京の拠点と、京都の自宅を行き来しながらカメラマンの仕事をしていた。
・しかし、子どもが生まれることがわかり、
◇お金・売上の安定の重要さ
◇落ち着くことの意識しなければならない
という理由から、いつまでも二拠点生活をすることはできないと感じ、家に帰る時間そのものを増やして、妊娠中の妻と、これから生まれてくる子どもたちの時間を作りたい、という思いから、出会うきっかけとなった鎌倉に移り住む。
・「父親になる」ということは著者の人生においてあまりにも大きな変化であった。家事も、子育ても、夫婦生活も、最後まで終わりのゴールはみえない。だからふんわりとした仮のゴールを、生き方の指標として持っておいていい、と著者は語る。
・著者自身は、
◇夫として
◇父親として
◇個人として(仕事や創作活動。自分自身の生き方)
という3つに分けてイメージした。
・「夫として」の部分では、
①夫婦で子育てというプロジェクトを運営できる夫
②妻自身の人生も豊かになるよう応援できる夫
と、妻に優しく、気持ちの面でも頼れる存在が理想であった。
・著者はこれをさらに分解し、
◇育児をしっかりやる
◇妻がなにかやりたいと思った時に、それを応援できる準備をする
◇保育園の送り迎えをできるだけする
◇料理や洗濯はできるだけやる
というような具体的な行動まで想定しておく
※「父親として」「個人として」の著者の具体的なイメージ、理想を掲げた後にするべきことについては、本書をお読みください。
・本書は、
◇著者が仕事や家事、育児を両立させるために、日々の試行錯誤についてまとめた前半
◇2020年4月に生まれた息子さんとの過ごす日々の美しさと楽しさを表現した後半(3年分)
の2部構成となっているフォトエッセイである。
子育てと仕事の両立で大変なこともあるが、後半の息子さんの成長記録を見ると、著者の充実感や幸福が伝わってくる。
著者にとって家族とは、「幸せでいてほしい存在で、幸せにしたい存在」とのこと。著者がそう答えている理由は、本書を読めばわかるかもしれません。