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谷口真由美「おっさんの掟 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」」

・本書は、法学者で、テレビやラジオのコメンテーターとして活躍する著者が、日本ラグビー協会フットボール理事として、2022年に開幕したラグビー新リーグを立ち上げるまでの奮闘記を描いた1冊。

・2019年5月のある日、日本ラグビー協会副会長で関西ラグビー協会会長の坂田好弘氏、日本ラグビー協会評議員(当時)で、高校日本代表の監督も務めた川村幸治氏から、「谷口真由美氏(以下、谷口氏)を日本ラグビーフットボール協会理事に推薦した」という連絡が届き、さまざまな事情(サバティカル(研究休暇)にする予定・関西の情報番組のレギュラー出演)などで、二の足を踏むも、清宮克幸氏(日本ハム清宮幸太郎氏の父親で、ラグビーの名将)からの後押しもあり、しぶしぶてはあるも、ラグビー協会の理事を引き受けることになる。

・理事着任後、谷口氏はラグビー協会のさまざまな問題点を目の当たりにする。
①理事に着任してすぐのしことは、大阪から東京に呼ばれ、「役職人事はこれでいいですね?」と言われるのをただ座って見ていただけで、意見や質問をするタイミングも、切り出せる雰囲気もなかった。つまり、理事会は「誰も文句なんかあるわけないやろうけど一応聞いといてやるわ」というアリバイづくりにしか谷口氏は思えなかった。
※しかも、理事会理事会出席時の交通費は協会支給だが、新幹線は普通車指定席のみで、宿泊費は1泊1万円までと決められている。
②日本ラグビー協会には、「選任時に70歳以上の場合は理事になれない」という規定があるが、その一方で「理事会の承認があれば年齢に関係なく理事になれる」という特例もある、というザル規定がある。実際に2019年4月の時、当時81歳であった森喜朗氏(当時名誉会長)や当時80歳岡村正会長は70歳を過ぎても長く会長の座にあった。
その他にも、「寄付金額ステータス問題」「某氏の問題発言」「ある部門の人員不足」「不自然な入れ替え発生」など、読んでいて「???」と思う項目が書かれている。
※詳細は本書をご覧ください。

・日本は1985年に世界の女性の憲法と言われる女性差別撤廃条約を批准、同年「男女雇用機会均等法」も成立した。それから平成30年間を経て、働く女性こそ増えたものの、「おっさん中心主義」の社会のあり方は根本的には変わっていない。
・セクハラ、マタハラ(マタニティハラスメント)など女性へのハラスメントは減少したと言えないし、「最近になってそのような概念の存在を知った」という男性も残念ながら少なくない。
・マジョリティの側が意識して、政治的、政策的なルールを作って手立てを打たなければ、女性に限らず、マイノリティはずっとマイノリティのままなのだ。
・また、社会における女性比率の底上げをルール化することはもちろん重要だが、「マジョリティとマイノリティの情報格差」を改善すべく真剣に取り組まない限り、いくら数字だけの女性雇用を推し進めても、決して本質的な問題解決にはならない。

本書では、谷口氏が日本ラグビー協会理事に着任する経緯から、谷口氏が見た日本ラグビー協会の課題(問題点)、2022年に開幕したラグビー新リーグの発足に向けた奮闘が描かれている。また、巻頭では、谷口氏と、元日本サッカー協会会長で現在同協会相談役の川淵三郎氏との対談が収録されている。

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