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誰もいない赤信号を待つ

(2021年2月1日 「カサンドラ・デイズ」投稿)

元夫は未診断なのですが、ASDらしいなと思うエピソードはいくつかあります。


同棲して間もないある休みの日のこと。

その日は早朝、夫の誘いで散歩に出ることになりました。

まだ畑が多く残る田舎で、車も人も少なく、早朝ということもあって町全体が寝静まったままのような、シーンとした静かな朝でした。

横に並んで歩いていて、短い横断歩道に近づきました。数秒で渡れるくらいの幅です。
信号は赤でしたが、車が来ないのをちらっと確認して、私はそのまま歩こうと足を踏み出しました。

すると、元夫がぱっと手を出して私を制止しました。

「赤でしょ。」

と言うのです。


私は “ええ??” と思いました。

車は姿が見えないどころか、音すらしません。

断言できます。車が来る可能性は、【ゼロ】です。


もちろん信号無視がいけないのはわかります。交通量の多い交差点ではたとえ車が来なくても私は赤信号でちゃんと待ちます。

けれど、人っ子ひとりいない早朝に、ただ勝手に点いたり消えたりしている信号に従う意味はあるのでしょうか…?

夫の顔を見ると、「絶対行くな」という強めの態度で立ち止まってる。

全てが眠っているような世界で、ただ目の前の赤信号を待って突っ立ってるだけの彼と私。


心の底から不思議 でした。



それでも、そのときの私は元夫に従って信号を待ちました。

『この人は…ちょっとまじめすぎるんだろう。ルールを無視するよりはいいじゃないか。夫となる人の言うことだ。ちゃんと聞こう。どうしても譲れない価値観が出てきたら、時間をかけてすり合わせていこう』

そう思っていました。

『時間をかけてすり合わせていこう』
こういう考え方が実はカサンドラになってしまう要因のひとつだったのですが、このときは知る由もありませんでした。


ASDの特性としてもあるように、元夫は『臨機応変』が苦手のようでした。

人っ子一人いない赤信号を待つ不思議さ


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