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悠々自適

2024/10/9(水) AM8:43記 

私はカリスマパートタイマー。

大手電力会社で培った知識と経験,想像力を接客・販売や,社内の業務カイゼンに活かす応用力と,物事を根本的・俯瞰的に捉えられる思考力を持ち合わせている。

時給は1,000円。

売れなくても,やらなくても別に世の中に影響はないし,対価に見合わない仕事を放置して叱責を受けたところで知ったことではない。

という鋼のメンタル,図太さも備えている。

悠々自適な風来坊。

そう。私はカリスマパートタイマー。



すみません。嘘です。
時給1,000円以降は本当だけど。

でも審美眼というか観察眼というか,長年の技術職で得た洞察力と持ち前の知的好奇心で,商品を深掘りする能力は,社員さんに勝るとも劣らないと自負している。

だだそれは,私の中で時折気まぐれに見え隠れする,極々僅かな生真面目さである。

元々,半分以上は適当さで構成されているバファリン以上に不要な成分を含有している人間だ。

では,生真面目さが気まぐれに発動するのはいつか?

それは,やはり素敵なモノやコトに触れた瞬間。

琴線に触れる対象に何らかの共通点はあるかもしれないが,一貫している訳ではない。
従って,気まぐれ。

そんな気まぐれオレンジロードが発動した,とあるアクセサリーブランドがある。

『LALL』という新潟県は長岡市で,幼馴染の男性2人組が手がけるハンドクラフトブランド。

作品の殆どを鍛造で成形している。

単に品質の良い物を非効率な方法で真面目に製作しているというだけではない。

アルチザン気質と造形美が同居していて,一目で惹かれてしまう魅力がある。

Lead
A
Leisurely
Life
LALL

彼らは私とは真逆で,生真面目さが大部分を占める好青年。

ブランド名の由来は,悠々自適を英訳した際の頭文字を取って『LALL』。

まだ駆け出しのブランドで,実店舗がなく各地でPOP UPを繰り返しながら徐々に拡大しており,今年で4年目。

縁があって,人手不足の際は販売要員としてお声掛けいただいている。

今回も第四出動の要請があったため,先週土曜POP UP開催中の会場に馳せ参じた。

悠々自適さで私の右に出る者はそういない。
ブランドを背負うデザイナーである彼らをも寄せ付けない悠々自適を発揮できる私は打ってつけだ。

ラインナップは新作も増えており,蜜蝋で型を成形したり指紋を模ったり,様々な要素を具現化する別のブランド『gugen』も立ち上げ中だとか。

イベント中,改めて色々な話を2人から伺った。

何故私の気まぐれが発動したか合点がいった。

今回はそこに焦点を当て,文字に起こすことにしよう。

結論から述べる。

彼らの作品が無知から作り出されたものだったからだ。

その試行錯誤感というか,非効率感から生まれる変態性を外観から感じ取り,引き込まれたのだ。

ファッションやアパレル,ジュエリーの知識があった訳でもない。
専門学校を卒業した訳でもない。
関連する職業に就いていた経歴もない。

新型コロナの混乱で不安を覚えた彼らが,再会し何か出来ないかと始めたのがハンドクラフトアクセサリー。

設備も資金も場所もない。

実家の車庫で地金を切って曲げて繋げるところからスタート。

彫金学校に通うとか,資金を集めて在庫を確保できる鋳造で製作してSNSで販路を拡大するとか,一般的な正解っぽい選択をしなかった。

選択できなかったという方が正しいかもしれない。

正解か不正解かは分からないが,兎に角イマできるコトから始めようの精神。

熱を加えて曲げたり捻ったりして繋げる。
その過程で分からないことはネットで調べただろう。
ただそれだけ。

誰にも常識を教えて貰うことのないまま,あるかもしれない近道を探すこともないまま,要は何も知らない無知のまま突っ走ってきたのである。

しかし,その直向きさが人の胸を打つ。

その証拠に同業者が集うPOP UPで,主催者の1人である彫金学校の講師をされていた方が,彼らの作品をこう評価したそうだ。

「変態だね。」

ブレスレットやネックレスを1コマ1コマ,複数のパーツを組み合わせ手作業による鍛金で製作しているブランドは,稀らしい。

鋳造か外注するか,チェーンは汎用品を流用するのが殆ど。

コマも留め具も自ら手作りして自ら販売するという,非効率なバカを貫いていることを聞いてプロも驚きを隠せなかったようだ。

「何も知らないまま独学でやってきたことが,むしろ良かったのかもね。」

様々な手段で縦横無尽に情報を入手できる時代。
あたかも全員に当て嵌まる最適解,失敗しない方法と勘違いしてしまう模範回答のような有象無象が溢れている。

それを参考に労力を減らすこと自体に否定的ではない。

しかし遠回りすることが,ある人にとっては振り返ってみれば正解だったという場合も,多いにあると考えている私は,その彫金学校の講師の方のお言葉,非常に共感した次第である。

ブランド拡大に伴い需要が増えても,不必要に供給量を増大させることなく,変化しながらも2人だけの世界のまま,アーティスト活動を続けて欲しいと切に願う。

以上,いつかカリスマパートタイマーになって彼らに力添えできますように。

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