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TPO
2024/10/2(水) PM4:13 記
9月最終日の月曜日。
棚卸しのため,他店舗へ平日出勤。
改めて『TPO』の重要性に気付かされた日だった。
因みにアパレル業界に身を置く方々にとって,『TPO』は馴染み深い言葉だ。
日本でアイビールックを広めた第一人者,石津謙介 氏が産み出した言葉であり,洋服屋で知らない方がいたら,モグリかもしれない。
TPOは、「Time(時間)」、「Place(場所)」、「Occasion(場合)」の頭文字を取った略語で、状況に応じて適切な服装や言動をすることを意味する。
具体的には、以下のようなことが挙げられる。
* 時間帯:昼間と夜間では、適切な服装や言動が異なる。
* 場所:フォーマルな場とカジュアルな場では、適切な服装や言動が異なる。
* 場合:結婚式や葬式などの特別な行事では、それにふさわしい服装や言動をする必要がある。
TPOという概念は、1960年代に日本のファッションデザイナー石津謙介によって提唱された。
当時、日本は高度経済成長期を迎え、人々の生活は豊かになっていた。
それに伴い、ファッションも多様化し、フォーマルとカジュアルの二種類に分けられるという考え方が一般的になっていた。
しかし、石津謙介は、時間、場所、場合によって服装を変えるべきだと主張した。
彼の主張は、当時の日本のファッション界に大きな影響を与え、TPOは日本のファッション文化に欠かせない概念となった。
業務内容は接客よりも体を動かすことが多いと推測されたので,比較的動き易い格好で準備した。
気温も微妙。
夏から秋にかけて季節感のミックスを多少意識した装いで構築。
自分なりにライフスタイルに即したスタイリングを心懸けた。
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Breton shirt:SAINT JAMES
Shorts:Cellar Door
Shoes:F.LLI Giacometti
そんな出勤時の私の装いを見て妻が一言。
「シャツの襟,片方だけ出てるよ。」
「本当だ。ありがとう。」
と素直に返して重ね着したブルトンシャツに襟をしまうか,或いは両方とも剣先を出すかすれば良いだけの話だ。
でも何となく,弁明してしまった。
実はこの間の抜けたような失敗とも捉えられる片方出しは,ある種の着こなしなのである。
きっちりし過ぎていない方が乙とされる考えが,ファッションにはある。
生活していれば必然的に発生する事象を,わざとらしく無くスタイリングに落とし込むとも言えるだろうか。
例えば,シャツの腕捲りはカフスの境界で綺麗に折って捲るより,雑にたくしあげる方が生活感や親近感が出ますよね。
ネクタイの小剣をズラしたり,レイヤードしたニットやスウェットから覗くインナーのTシャツの面積を不均一にしたりなども同様かもしれない。
兎に角,わざとだった訳だ。
素敵に見えるか否かは置いておいて。
「すみません。敢えてやっています。」
妻にはこう返した。
そのまま,特に軋轢を生むこともなく出勤。
一応,アパ店(彼女曰くアパレル店員の略)として,それなりの説得性を感じていただけたのだろう。
そして,バスに揺られ勤務店舗に到着。
簡単な朝礼を終えて,スタッフ同士でスタイリングを確認。すると,
「襟が片方出てますよ。」
お店でも言われるとは。
これはもう私のギルティです笑
素人と玄人,両者に指摘されたのだから。
私がTPOに適した装いが出来ていないということだ。
ファッションは他人にどう見られているかを無視してはいけないと私は考えている。
この事実から目を背けて,やれ自由だ!やれ自己満足だ!と宣ったところで,それは楽しみ方の一つに過ぎないし,周りの目を気にしない人は成長しない。
極端ではあるが地球上に自分1人しか存在しないなら格好つけないのだから。
ということで,私がどれだけ敢えてやっていると主張したところで,変だと受け取られてしまえば,TPOを弁えていないという結論に至るのだ。
誤解されないよう明記しておくと,この着こなしそのものが間違っているとか,全てのシーンで受け入れられないという話ではない。
私のような浅はかで未熟な人間が実践するには早すぎたということである。
“あの人がやっているのだから何かしら意味がある”
初めてお会いする方にですら,そう思わせるようなオーラを纏えるまで控えるべきなのだ。
しかし,それは実践して失敗しなければ得られない気づきであることも確か。
それを繰り返して少し背伸びした装いだけど,違和感がないという着地点を探っていくのが自分らしく洋服を着る楽しみの一つではないでしょうか。
因みに,私が目指す背伸びしたいスタイルはこんな感じです。
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以上,今後も足がつらない程度に背伸びしていけますように。
追伸.
仕事でも同じことが言えると思いますが,あの人がやることには何か意味があるはず,そう思わせるような勤勉さ,或いは他人を見てそう感じ取る思慮深さも必要だと再認識した日なのでした。