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まま、うち就活やめるわ。

これは就活をやめてダンサーになった私の本当のおはなし。


福島の高校を卒業した私は、ただ田舎を出たいっていう理由と、

英語が一番勉強っぽくなくて好きだけど、もうある程度できるから、

違う言語にすれば勉強している感覚を感じないまま、

楽しく4年間を終えられるだろう。

マルチリンガルってかっこいいじゃん。

そんな安易な考えでドイツ語学科のある大学に進学した。

大学3年で留学し帰国すると、周りはすっかり就活モードになっていた。

ダンサーでやっていくと決めていた彼氏だけは、

『俺は就活しない。ダンサーって決めた。』って言い張るから、

「それでもさ、社会勉強にはなるかもよ?」

って自分をなだめるかのように、言葉をかけていた。

それでも頑固な彼は、説明会にも何にも一度も行かなかった。笑


ES?グループ面接?何それ?って思いながらも、

就職するのは当たり前。と思って興味の出そうな会社をいくつか見に行った。

就活生向けのグループディスカッション練習会なんてのも行ってみた。

それは楽しかった。笑

大した数は見に行っていないけど、その中ですごくビビってくる会社が

一社だけあった。書類、一次、と順調に通り、二次面接に出かけた。

就活中でもダンスのレッスンには行きたかったから、スーツを着て

レッスン着、レッスンシューズ、普段着、普段用の靴っていう3コーデを

カバンに詰め込んで、会社近くのコインロッカーに預けていた。

スーツでダンススタジオに行かなかったのは、ダンサーを目指している

友達に自分が就活しているのを知られたくない変なプライドがあったから。

二次面接は、もう正確には覚えてないけど、部長だか課長だか

えらいおじさん達と面接だった。個人的にすごく仲良くなれた気がした笑

仲良くって何って感じだけど、気になってる話はちゃんと聞いたし、

話もすごく盛り上がった。


それでも、その会社の結果は不合格だった。

悔しくて電話した。笑

何がダメだったんですか?って。

教えてもらえなかったけど、面接して理由も分からず落とされるなんて

あんまりだと思った。それが就活の『普通』なのに。

自分の人間性を全否定された気分になった。


その面接の前に参加していたグループディスカッション練習会を

企画していた人材会社に相談をしてみた。

ちなみに、そのグループディスカッション練習会ではMVPをもらって

図書カードをもらったの。

相談役の人に名前を伝えると、あ!あなた覚えてる!

面白いES書く子じゃないの!って言ってもらえた。

ちょっと照れた。

じゃあ、なんで落ちたんですかね?

その人は、『あなた、面接でダンスの話した?』

と聞いてきた。

その人が言うのには、私がダンスを大好きなことをそのおじさん達が

見抜いたのよ、と。

『日本は特に、その会社に利益を出してくれて、骨を埋めて尽くして

くれるような人が欲しいのよ。だから、ダンス愛が伝わったら、

だめなのよ。それは受かるまで隠さなきゃ。』

ああ、そうか。妙に納得した。

留学していたドイツでは、みんなが休暇のために働いていて、

自分が一番、仕事は手段の人が多かったけど。

日本は違うわ。

この話を聞いてから、私は会社で働くことについて考え直すようになった。

やりたいことを応援してくれる、かつ、自分が好きな会社を

探すなんて無理だ。そんなしてたら、ダンスする時間なんてない。

それに、「会社のためにダンスはもう辞めます」なんて嘘は

言えなかった。


そして私は就活をやめた。

実家に電話で報告をした。

『まま、うち就活やめるわ。』

最初は困惑していた。

『いっちゃん、大学も行って、留学もして、3カ国語話せるんだから

どっかしら就職できるんじゃない?もうちょっとやってみたら?

内定もらってから、ダンサーにしてもいいのよ?』

それでも私には、あの重たいカバンをコインロッカーに預けるのも、

痛いヒールを履くのも、好きでもない黒いスーツを着るのももう嫌だった。

『まま、思い出してみて、昔からみんなと同じなんてうちには無理だったじゃん。

好きなことやってみることにしたよ。』

そう言ったら、日に日に受け止めてくれるようになった。

今では、海外でダンスを通じて知り合った友達を実家に連れていくと

かわいい息子って言って可愛がるし、

ダンスの傍らで文を書いたり、ZINEを出版したりすると

『あの時いっちゃんを落とした出版社、ぎゃふんと言わせちゃいなさーい』

って魔女のような言葉をかけてくる。


あの時ダンスの話を幸せそうにしてた私を落としてくれた

おじさん達のおかげで今ダンサーとして生きてるのは幸せだし

あの時のおじさん達が採用してくれてても、

バリバリ会社で働いて稼いで、趣味でダンスして、

いい人生を歩めていたかもしれない。


何が正解かはわからないし、

今の就活はどうなっているのかわからないけど、

個人の幸せがあって、会社の幸せが成り立つ。

そんな会社に出会える人がいっぱいいるといいな。


自分が何が好きかをわかっている人って、何においても

強いと思うんだけどなぁ。


久々に思い出して書きたくなった私の就活話でした。

p.s.

あの時、結局一度も就活をしなかった彼は、結局ダンサーになり、

趣味でやっていたカメラも立派な仕事になり、

一番近くで、好きなもので生きるお手本を見せてくれてます。



#はたらくってなんだろう

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