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看護師5年目、採血室に勤務して始末書になった話

5年目の時に、脳外科にいましたが、採血室の人手が足りないと言う事で、駆り出された話。

看護師がブワーッと、横並びで、採血用意ができ次第、ボタンを押すと、カップに入ったスピッツ(上記写真の血液検査用の入れ物)が流れて来て

それに書いてある番号の人を呼ぶと、

これから入院する人や外来の人が採血にやってくる。

90%の人が独歩で、来るし、入院中の細く細くなった…看護師泣かせの血管の人は、いなくて、ホッとしました。

でも、たまに、これは、苦手な血管だなと感じたら、絶対に助けてくれる「採血室の神」みたいな天使看護師がいて

そこに遠慮がちにスピッツごとカップを持っていくと、微笑んで受け取って下さいます。

ノルマはなく、スピードは求められませんでしたし、病棟のマルチタスク状況と、横入りなあれこれを思えばマイペースにできて、楽勝〜なんて思っていました。

ところが

事件を起こしてしまいます。

これから精神科入院する方の入院前検査のスピッツが流れて来ました。

そのスピッツの数、なんと11本と多め。

番号を呼び、来てくれたのは、

痩せこけて、青白く、もう消えてしまいそうなくらい存在が薄く、表情が無い青年。

腕出して下さいと言うと、自分のパツパツの健康的な腕とは対称的な白いガリガリの腕が出されました。

しかし、血管は立派で安心しました。

私「採血で気分が悪くなったことはありませんか?」

青年「ないです」

と答えたけど、もう既に気分悪そうでした。

私「数を確認しますね、11本です」と言うと

青年「え!そんなに…」ギョッとしていました。

しばらく楽にしててくださいね、と、採血を始めました。

さすが血管は若くて太い、勢いよく、スピッツに血液が入って来ました。

そのまま2本、3本と、順調に繋げて行きました。

8本目くらいの時に
青年「ちょっと気分が、悪いです。」

と言い出して、

私「でも、あと、3本なんです!無理ですか?」

青年「ちょっと…わからないですね。」

本当に配慮が足りませんでした。

私「残り1本ですしね!」と、最後のスピッツに手をかけた瞬間

青年が後ろにバターン!とひっくり返ってしまいました。

え?

針は抜けましたが、駆血帯したままで、咄嗟に駆け寄って駆血帯を外して、止血しました。

場内騒然とは、この事です。

外来のスタッフが一斉に駆け寄って、全員で軽い軽い青年を抱えて、ストレッチャーに乗せて

救急室へ急ぎました。

勿論、責任者の私も真っ青で追っかけて。

頭打ってないか、確認して、バイタル取って、どうもなかったので、小さな部屋に移動になりましたが、

この一瞬の出来事に、まずい事してしまった!

と思い、上からは「責任持って、体調が戻るまで見ておく様に。」と言われて、個室に細くて小さな青年と2人で過ごしていました。

青年は意識は戻りましたが、立てない、という事で、暫く横になってもらって、

帰れる状態になるまで、半日くらい付いていました。勿論始末書も書いて、どうするべきだったのかレポート提出になりました。

以来、採血室からの依頼は無くなりました。

でも、このくらいで済んで、まだ時代的に甘かった様な気もします。

反対に…病棟の人数が足りなくて外来の人が助けに来る事もありました。

その時は外来の人はかなり所在なげ〜に嫌がってて、話しやすいのか、私の所ばかり来てて

あるおばさんが
「てゆーか、ここの病院、ほんま人手不足やからさー私なんて入職時の健康診断で血圧200とか180くらいあってね、

これは就職できないわ!って諦めてたのに、後日、合格通知が来て、びっくりしたのよ!ほんで、この血圧では三交代無理です、病棟嫌ですって言ったら、外来になってね〜
そんな感じよ〜」

と言っていました。

そのおばさん看護師
「てゆうか、あなた、成長したね。」と言われて

今まで気づかなかったけど、私が1年目の時から、ごくたまにだけど、手伝いに来てた時、めちゃくちゃ大変そうだったの見てた様で、

恥ずかしかったです。

自分は全く余裕なくて、周り見てなかったけど。誰がどこで見てるかわからない、ナースあるある

こっちが知らなくても、向こうは知ってる事件でした。


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