特別で在り続けるアルバムの話(Hell-See/Syrup16g)
2008年の冬。
TOWER RECORDSでおすすめされていて、ジャケットが綺麗で値段も普通のアルバムよりは安かったから手に取った。
それがSyrup16gの「Hell-see」だった。
そういえばボーカルが鬱病だって公言しているバンドだったっけ。
大学生になって何もかも上手くいっていると思った私はその病をどこか他人事のように感じていて、少しの偏見すら持っていた。
一曲目、「イエロウ」。
うーん、確かに鬱病っぽさ前回の歌詞だ。覚えやすいけれど仄暗い。
二曲目、「不眠症」。
低音がめちゃくちゃ気持ちいい。何だこれは。
ここで虜になった。それは「吐く血」で最高潮に達した。
「(This is not just)Song for me」は冬の終わりに聴くとなんとなく希望を感じるし、「シーツ」は微睡みたくなる。
結局大学一年の終盤は、空き時間に外のベンチや使っていない教室で「Hell-see」を聴きながらぼんやり過ごし続けていた。
「ノルウェイの森」を読んで、メジャーではない音楽を聴いて、ルーズリーフに専門用語を溢れさせて、就活はまだまだ先で。
何者にでもなれるという根拠のない自信、大人を見下していた傍若無人さ。
実に私が憧れていた日々だった。