ボイスドラマ視聴紀行 #29
今回ご紹介するのは、なるらんどさんが企画された『ワンテーマボイスドラマ紹介集』の第3弾です。
ボイスドラマ紹介企画が第20回を超えた際、本企画の新たなご紹介スタイルのパイロット版のような位置づけとして、第21回、第24回に公開したのですが……
第2弾は私のアピール不足という部分もあってか、現段階でも各制作陣や各声優陣に紹介したことを気付かれてない節があります。それでも、数値的にはビュー数がグイグイ増加しているので、あんまり気にせず第3弾をやろうかなーと考えている次第です。
従来の「ボイスドラマ視聴紀行」はひとつの作品をネットリと丁寧にご紹介しています。そこを、今回はとにかくご紹介の本数を増やし、いつもよりサッパリとした形式でご紹介したいと思います。
上記のコンセプトを行う上で、通常回と違う短めのまとまった紹介文になりますので、その点はあらかじめご了承ください。
その点は、正式ナンバリングとして制作した「第24回」をご覧いただく方が早いと思いますので、以下にリンクを貼っておきます。
なお、今回もなるらんどさんから紹介を依頼された訳ではありません。今回は一部、推薦がありましたので、その旨はお伝えしておきます。
その他の作品については、市川智彦が自らボイスドラマを検索し、そこで巡り合った作品を紹介していきます。
俺の肉球(制作:こひらみかん)
こひらみかんさんが制作された、ワンテーマボイスドラマ「肉球」を描いた作品です。推薦していただいたのは、穂月さんです。
こひらみかんさんは、ワンテーマボイスドラマ参加作品の短めで聞きやすいボイスドラマから、深いテーマ性を持った長編ボイスドラマまで豊富に配信されておられます。興味のある方は下記のリンクからぜひお聞きください。
拙筆でのご紹介は「夜の王国」という作品になります。
こちらもワンテーマボイスドラマ「あなたがボイスドラマを通して伝えたいこと」をテーマに描かれた作品なのですが、一応のレギュレーションである7分以内を大幅に超えた約21分の力作になっております。ご興味のある方は、ぜひ拙筆の紹介記事で魅力を感じ取った上で、本編をご視聴くださいませ!
こひらみかんさんの長編作品は何度か拝聴しているのですが、実は短編に触れるのは今作が初めてです。
こひらみかんさんの長編作品は、決して冗長的ではありません。必要な要素だけに絞った上で企画を構築し、結果的に「長編作品になった」だけです。しかし、本作はレギュレーションに則する形で制作する意図があったため、主人公と同居人との関係性に全力でフォーカスを当てて、それを描き切っています。
本作は、聴取でも存分に楽しめますので、気軽にお聞きいただければなと思います。ただ、やはり「肉球」というお題は、歴代の中でも屈指の難関テーマだったんだなと改めて痛感しました。ただ、こひらさんの作品でここまでのストレートな物語を聞くのは初めてだったので、そういう意味では楽しかったです!
登場人物は非常に少ないのですが、短編でありながらも物語に躍動感のある起伏が存在するので、とても楽しめる構成になっています。主人公の演技の幅がある意味で拷問(!)であり、同居人の演技もどこか人間味に溢れた受け答えをしてくれるので、とても賑やかなボイスドラマに仕上がっています。
拙筆において、シリアス作品が続いたこひらみかんさんですが、本作において「やはりコメディーも書けるんだな」というのが率直な感想です。ある程度のレベルに位置するコメディー書きは、シリアスを書いてもお上手なので、それを納得させてくれるような愉快な物語になっています。
さらに、今回は短編ですので、こひらみかんワールドに触れるには絶好の機会だと思います。入門の一作として、ぜひ一度ご聴取することを強くオススメします!
最後に、主人公について。
まぁ、実社会にいるのは、本当にこういう人ばっかりだと思います。そうじゃなきゃ、本当に息苦しくて生きてられないので……
End of the Quest(制作:色彩天宙)
色彩天宙さんが制作された、ワンテーマボイスドラマ「終わり」を描いた作品です。
色彩天宙さんは、ワンテーマボイスドラマ参加作品を中心とした、短編から長編までの作品をいくつも配信されておられます。やや短編が多めので、本当に手軽に聞けますよ!
この時のお題がお題だけに、どうしても「終わり」を強く意識した企画構成になるのはやむを得ないと思います。
私も過去の某PBWでゲーム制作に携わったことがあります。わかりやすい導入部分を作るため、その次に行う作業とは「ストーリーのエンディングを用意する」なのです。ゲームの着地点があるからこそ、その間の盛り上げが活きるというのが、一般的なゲーム制作の考え方だと思っています。
本作は意図的に「ここから描く!」という斬新な発想に始まり、エンディングまで突っ走っていく……と、視聴者に思わせておいて、実は中盤に意外な展開が用意されています。ある意味で「緩急のついた作品」と評することもできます。
それに加えて、テーマに掲げられた「終わり」という解釈を厳密に定義せず、あえて視聴者の感じたままに判断させるという構成になっていると強く感じました。この辺は皆さんに直接ご視聴いただきたいので多くは語りませんが、例えば「ラスト」であったり、「エンディング」であったりと、受け止め方はいくつか存在すると思います。
描写される世界観が「王道を往くストーリー展開」なので、視聴者が取っ付きやすくなっているのもいいアクセントになっていると思います。物語に差し込まれる要素が増えたとて、聞き手が何となく聞いていても理解できるレベルです。
だからこそ、本作に抱く感想を自由に考えられる隙間が存分に盛り込まれており、視聴者は千差万別の思いを馳せることができると思います。私は視聴ではなく聴取したのですが、この辺を高く評価した上で今回の紹介に踏み切りました。
皆さんもエンドロールを見て驚かれると思いますが、登場人物は非常に多いです。しかしそれをいっさい把握せずとも、誰もが楽しめる魅力に溢れた作品だったので、私は本作を皆さんにご紹介しました。
リニューアル(制作:軽田)
軽田さんが制作された、ワンテーマボイスドラマ「メリーゴーランド」を描いた作品です。
軽田さんは、ワンテーマボイスドラマ参加作品を中心として、オリジナル作品の制作もされており、短編から中編の作品を配信しておられます。パッと見ただけでも様々なジャンルを投稿されているので、下記のリンクからウインドウショッピングだけでもいかがでしょうか!
本作は「メリーゴーランド」ということなのですが……
短編集の紹介で絶対にひとつは彗星のごとく出現する、今回における圧倒的な勢いのあるコメディー枠です。聴取される皆さんは、私と同じく途中から「あれっ?」と違和感に気付くはずですが、そこからの面白さは随一とお伝えしておきます。
前回の総集編でご紹介させていただいた朝椋サクヤさんの「ラストラン」、巫部えるさん「for you」もそうなのですが……このお題って、よほどコメディーとして落とし込むのが容易だったのでしょうか?
本作は、前述したコメディー作品とは完全な棲み分けができています。あえて詳しく表現するなら「シュールなコント」と言うべきでしょうか?
しかし、物語全体を見る限りではオチまでしっかりと締め括られていますし、とても人間臭いドラマに仕上がっています。あと、肝心な部分を伏せたまま終えたというのも思い切りの良さというか、聴取者にその後を想像させる余地を残す格好になったので、とてもいい判断だったと思います。
皆さんが違和感を得た後も、どこか現実味を帯びた展開と謎の世界観のブレンドに戸惑いが収まらないでしょう。
主要キャラのやり取りも軽妙でありながらもどこか偏りがありますし、他の登場人物の身の上話(?)の方がどこか納得のいく感覚を得るという……この謎の境界線を反復横跳びし続ける本作は、短編コメディーの傑作のひとつに数えられるでしょう!
ちなみに物語のラストですが……
エンドロール中もストーリーは進んでいるので、絶対にお聞き逃しのないようにお願いしますね!
冬の花々はすれ違う(制作:井上響)
井上響さんが制作された、ワンテーマボイスドラマ「花」を描いた作品です。
井上響さんは本当にたくさんのボイスドラマ作品の制作を手掛けられています。ワンテーマボイスドラマの常連でもあり、短編ボイスドラマを数多く発表されていますので、ぜひ動画リストをご覧くださいませ!
拙筆でのご紹介は「影色神託 ~Shadow Oracle~」という作品になります。
こちらは物語に区切りこそ存在しますが大長編の作品となります。トータルでの再生時間は約122分となりますが、単話であれば約15~21分で区切られているので、気軽に聞き始める配慮が十二分にされている作品になります。ご興味のある方は、拙筆の紹介記事をお読みになった上で、ぜひ本編をご視聴ください!
本作のテーマである「花」を随所に散りばめた……というか、意識させられない部分が存在しないという稀有な作品です。
ただ、こういったテーマ性をさりげなく継続的に醸し出し続けるというのは、いくら短編であっても、実はとんでもなく難易度の高い作業です。
脚本を担当する方は意図せず意識している部分は強く表現しがちですし、声優さんも文脈を読んで「ああ、強めに演じる部分なのかな」と意を汲んだ演技をしてくださいます。その結果、企画立案した時よりもテーマ性が色濃く反映された作品に仕上がることもしばしば起こります。
この作品は、そのさりげなさがいつもうっすらと香ってくる……そういう意味でも「花」というテーマを最も正しく表現した傑作のひとつに数えられると思います。
また、思春期の少女の心情を的確であり、ストレートに表現できていますし、タイトルにもある描写もまた上手く描写されていると思いました。
美しい記憶を話したいという気持ちもよくわかります。
昨今、大多数に話を引き込む「すべらない話」というトークスキルというか、鉄板ネタみたいなジャンルが確立していますが、こういった話はとても仲のいい友達や親友に、ついつい何度も語ってしまう性質のモノです。
結局、相手にもそういう記憶があると、お互いに何度も同じトークを繰り返し続けちゃうんですけどね!
今回の紹介記事の中では、とても美して儚くて、どこか意地の張り合いをも感じさせるエンディングを迎えます。
我々のあの頃の感じるには充分すぎるストレートなストーリーをぜひお楽しみください!
ご案内「次回のテーマは『闇鍋』です!」
なるらんどさん主催のワンテーマボイスドラマの2024年最後のテーマは「闇鍋」と発表されており、一斉公開は「2024年12月21日(土)0時以降」となります。
あまり厳しい規定はなく、テーマに沿った7分以内のボイスドラマ形式を制作し、一斉公開日以降に発表するというのがルールになっています。
私はあえて過去に開催されたワンテーマボイスドラマの作品をご紹介させていただいておりますが、自分で探せば探すほど、なかなかの名作に出会える喜びを得ています。
そんな気持ちをお裾分けしたい気持ちと、もっと気軽にボイスドラマを聞いてもらいたいという理由で、今回は第3弾を企画して皆さんにお届けさせていただきます!
また、こういった機会を増やすことで、制作者さんや声優さんにもクローズアップできると思っているので、定期的にワンテーマボイスドラマだけでなく、聞きやすい幅の短編集の紹介記事を投稿したいと考えています。
クレジット(敬称略・リンクあり)
▢俺の肉球
〇キャスト
大谷:おーたむ
まる(猫):穂月
部下・男性:ミンク
〇スタッフ
脚本・音声/動画編集:こひら みかん
▢「End of the Quest」
〇メインキャスト
勇者アダム:たくみ
戦士マイク:神矢レイラ
僧侶オリビア:柊木アカネ*
魔法使いロイ:らっど。
妖精リボン:ゆなっち
魔王デリット:巫部える
ラース:たるとっと
プライド:ホリヘイリ
エンヴィ:はざくらさくら
グリード:渚舞希
ラスト:容子
スロース:韮山蒼太
グラトニー:色彩天宙
古の英雄:古池譲二・A
賢者:如月燎椰
聖女:水崎あいす
エルフ:相馬かなで
大妖精:甘党知代子
預言者:切株まいたけ
兵士A:水崎碧
兵士B:紺道ぴかこ
サリア:内山みゆま
幼少期アダム:弥/ひろ
〇魔王軍兵士
紫陽花
殯宮なゆゆ
かま
黒雪鈴
純な峠
白帆秋
染斐よしの
橘里奈
〇村人
Arran
汐見夏生
桃園緤
雪刀玻瑠華
〇スタッフ
制作:色彩天宙
▢俺の肉球
〇キャスト
ウマ島(うましま):あさみな
回(めぐり):東雲やみこ
シシ王(ししおう):色彩天宙
カメ谷(かめや):亜和希
コブ崎(こぶさき):是枝留
テン間(てんま):色彩天宙
〇スタッフ
動画制作者:軽田
▢冬の花々はすれ違う
〇キャスト
篠花ねりね:依
ツワブキ君:行近乃和
柊木えりか:はざくらさくら
椿先生:伊東優
〇スタッフ
シナリオ・編集:井上響
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