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ボイスドラマ視聴紀行 #09

 今回ご紹介するのは、箱舟壱座さんが企画されたボイスドラマ『ラジオドラマ『グレート・オッド・ワン』』です。

 以下、文章表現の都合上、敬称略とさせていただく箇所が存在します。あらかじめご了承の上、本記事をお楽しみください。
 また、ボイスドラマを視聴・聴取した上で感想を書き進めるスタイルのため、あえて備考やクレジットを見ずに執筆している場合もございます。

 こちらの作品は「全5作品」で構成されていますが、今回は「ラジオドラマ『グレート・オッド・ワン』(全5作品)」をフルサイズで視聴した感想を書きます。
 再生リストは以下にリンクをご用意しますが、ここからの再生だと切れ目に気付かずに一気に全部聞けてしまうくらい出来のいい作品です。全編トータルで約53分各話が約9~11分となります。少しずつ分割で楽しみたい方は、各話のリンクからご聴取いただけると幸いです。



グレート・オッド・ワン(各話個別リンク)


全作品を聞いた直後の率直な感想

 本作はオープニングとエンドロールについては画面上での表示がありますが、基本的に「ラジオドラマ本編は音声のみ」で展開されますので、結果的に聴取する形になります。

 聴取については、いきなり「Scene1」からスタートさせてOKです。一切の前情報なしでたっぷりと楽しめます。
 皆さんが聴取することで自由に感じたまま世界観を広げていくもよし、各話ごとに概要欄を見て噛み締めながら進むもよし……そういった配慮が随所に散りばめられた珠玉のシリーズ作品となっています。

 また、一話完結型のオムニバスストーリーを聞き進めていくと、「グレート・オッド・ワン」の世界観……今度はとても自然に奥行きが出てくるのが魅力的です。
 仄暗いダークSFをバックボーンにしながらも、ラストまで途切れることのない圧倒的な没入感に加え、シニカルさも漂わせるコメディが絶え間なく押し寄せてくる。とにかくメリハリのつけ方が絶妙な作品です。

そのスイッチを押したら最後(ニッコリ)

退廃感が満載の世界に花咲くコメディの宝庫

 制作者のNoah Revさんが描く本作は「退廃的な世界観」ではあるものの、そんな雰囲気は一瞬にして塗り替えられてしまいます。
 そこに登場する者たちはどこか逞しくもあり、どこか間の抜けている……という愛すべき個性を与えられ、誰もがこの作中に生きているという実感を聴取者に与えてくれます。

 特に、Scene1のコメディシーンなのですが、いろんな意味でキワドイ!
 いわゆる「アンダースロー」というか、「シーモネーター」というか……当然、そういうセンシティブ対策(?)はされているので、皆さんは安心してご聴取ください。

 そんな大暴れのコメディにおいても、我々の頭の片隅に残った事柄に関しては、後で丁寧に回収されていきます。そんな聴取者の気持ちよさをも考慮した仕掛けは緻密に計算されています。
 各話で描かれるシーンは舞台もキャラもガラッと変わるのですが、シリーズを通した設定が徐々に明らかになっていく脚本構成は、もはや「さすが!」の一言に尽きます。

 これは私の持論ですが「コメディが書ける人は、基本的にシリアスも書ける」というものがありまして、Noah Revさんの才能の高さは素晴らしいなと感銘を受けた次第でございます。

アンダースロー(暗喩)

癖の強い奇怪なモノを演じる魅力的な声優陣

 各話に魅力があるので、どういう形式でご紹介したらいいのか悩んだのですが……
 ここは「私の感想をお伝えする場」でもあるので、今回は割り切ってお伝えしたいかなと思います。

 Scene1に登場するカップルのエチゼン(CV:韮山蒼太)とカミクラ(CV:小湊ミチル)が演じる男女間の縮図(!)が壮絶すぎて、いろんな意味で私も感想を話せないので、とりあえず聞いてください。
 ホントお二人の熱演だと思います……思うんですが、編集した結果がアレなんで。この収録現場を直に見たかったなーと思います。
 正直、コーモト(CV:おーたむ)のツッコミがなかったら、マジでガチにセンシティブなだけなんでね!

 Scene2に登場するお笑いコンビ「ヨムロック」のトオノ(CV:焔屋稀丹)とコイズミ(CV:大森ショージ)の掛け合いも秀逸です。シナリオの流れで中盤からやや変化があるのですが、この辺もキャラを保ちつつの演技は必聴です。
 あ、必聴といえば、構成作家(CV:Noah rev)の笑い声や、コマーシャルを担当しているCMの声1(CV:黒真鳴入)とCMの声2(CV:望月なつ)も演技もお聞き逃しなく!

 Scene3はとにかく明るいクロヤマ(CV:mochimiyu)に、今作唯一の良心(!)のアカガミ(CV:Mira)、そしてとんでもない多面性を持ったトゲっち(CV:穂月)が大騒ぎするハチャメチャストーリー。
 ガールズトーク満開の本編かと思いきや、結構な爆弾発言というか、別の意味で描写にアブないシーンがあるのもエッセンスになっているかなと思います。

 Scene4は、主にケンザキ(CV:てん)通称・ユニたん(CV:田中)が主軸となって活躍します。どこか微笑ましくもマジメなシーンもあり、そのギャップが堪らなく楽しいです。
 そこに絡まるように、助手のソデイ(CV:武川楓)オトボケのマサダ(CV:相羽みあ)が組み合わさって、これまた一味違うテイストを楽しませてくれますよ!

 Scene5は物語の肝を担う大事なシーンを、小説家のシイバ(CV:ミンク)少年のサラブ(CV:茶祖)が純粋な理念や気持ちで紡ぎ上げていく……わきゃないのが、ここまで聞いた人の率直な感想でしょう。
 途中で登場するラグドル(CV:らっど。)エリマネ(CV:折原幸平)にかかれば、あっという間にグレート・オッド・ワンに染まってしまいます。

 ここまで手放しに高く評価しているのには、理由があります。
 声優陣は今作に秘められた最大の特徴を声だけで演技する必要があるのにも関わらず、とにかくクオリティーをアゲアゲで応えてくれたという点に尽きます。
 キャスティングする方もする方なら、応える方も応える方……そんな結束力も感じさせてくれる声優さんのパワーもぜひお楽しみください!

賑やかな車内でしたね!

総評「何となく聞けるゆる~い雰囲気の陰に潜む緻密な計算」

 どんなクリエイターでも初手というか、書き始めや第一声というのは非常に気を遣う部分なのですが、もうそんなのお構いなしにScene1からかっ飛ばすスタイルは、制作側の独特なセンスとしか言いようがありません。
 私もスゲー笑いましたけど、いくらアンダースローが好きでも「コレ、アウトちゃうんか!」と言いながら聞いてましたからね!

 そういった大騒ぎの隙間を縫うかのように存在する緻密な設定にも脱帽しました。時として巧みに隠し、時としてはアッサリと暴き、また時として新しいのを隠す……
 今、私が語ったモノは、別に誰でも、なーんにも意識しなくなってわかります。無意識に気付けるように、しっかりと組み立てられているのです。それは堅牢な石造りの神殿かのように。

 だから、皆さんは聞いてみるだけでいいんです。
 先にも書きましたが、この作品はテンポが良すぎるので、表記した時間を感じさせない楽しさを秘めています。その魅力に押されないよう、タイムスケジュールは万全に行ってくださいね!

 もし時間のある方は、もう一度最初から聞くと……また違った風景が頭の中に広がるかもしれませんね。暗くて絶望的だけど、やけに明るいパラダイスの新しいナニカを見つけられるのかもしれません。


クレジット(敬称略・リンクあり)

▢キャスト

〇Scene1
 
コーモト:おーたむ
 エチゼン:韮山蒼太
 カミクラ:小湊ミチル
 ボス  :中村宏平

〇Scene2
 
トオノ:焔屋稀丹
 コイズミ:大森ショージ
 CMの声1:黒真鳴入
 CMの声2:望月なつ
 構成作家 :Noah Rev(箱舟壱座)

〇Scene3
 
アカガミ:Mira
 トゲっち:穂月
 クロヤマ:mochimiyu
 カーナビ音声:田中
 ラジオの声1:焔屋稀丹
 ラジオの声2:大森ショージ

〇Scene4
 
ケンザキ:てん
 ユニたん:田中
 ソデイ:武川楓
 マサダ:相羽みあ

〇Scene5
 
シイバ:ミンク
 サラブ:茶祖
 ラグドル:らっど。
 エリマネ:折原幸平

▢スタッフ
 
脚本/演出:Noah Rev(箱舟壱座)
 音声編集:Noah Rev(箱舟壱座)
 映像制作:Noah Rev(箱舟壱座)
 テーマ曲制作:ロンゲスト

制作陣も凄けりゃ、声優陣も凄いのよ。

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