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ボイスドラマ視聴紀行 #10

 今回ご紹介するのは、呉丸寿樹さんが企画されたボイスドラマ『イディオットコップス - IDIOT COPS -』です。
 なお、聴取を推薦されたのは、渡辺 佐代子 役でご出演の是枝 留さんです。是枝さんの演技は、第5話以降で楽しめます。

 以下、文章表現の都合上、敬称略とさせていただく箇所が存在します。あらかじめご了承の上、本記事をお楽しみください。
 また、ボイスドラマを視聴・聴取した上で感想を書き進めるスタイルのため、あえて備考やクレジットを見ずに執筆している場合もございます。

 こちらの作品はシリーズとして継続中であり、現時点でも「3rd Season」の連載中です。ご紹介するにあたり、ストーリー展開を追うのに過不足のない地点と思われる「イディオットコップス - IDIOT COPS -(1nd Season 第14話まで)」までを聴取した感想を書きます。

 以下に掲載する再生リストであれば「1nd Seasonから3rd Seasonの最新話までぶっ通しで聞ける」ので、皆さんの好きなタイミングで聴取を区切っていただくことが可能です。
 なお、今回は個別リンクを貼ると18個になるので、目次以降にリンクはご用意できないことをご了承ください。



作品を途中まで聞いた率直な感想

 本作は「現代をモチーフにした刑事ドラマ」として描かれています。
 ただ、近年のテレビドラマにおける描写の機密さや特殊性はなく、あくまで「東都にある金宿署に所属する刑事たちの物語」として構成されたボイスドラマであり、登場人物たちの軽妙なやり取りや丁寧な状況描写などが印象的な良作です。

 私が聴取した部分において、近年の凝ったテレビドラマのような小難しい要素がほとんど存在せず、しいて言うなら「刑事たちを題材にした人間ドラマ」の趣きが非常に強いです。
 主演の2人は最初期から登場しますが、他のレギュラーメンバーも順次登場していき、回を重ねるごとに個々の人物像や様々な人間模様に深みが増していくのが自然と感じられます。

 また、事件に関わるゲストが頻繁に登場するようになっても、決して半端に取り扱うことはせず、しっかりとスポットが当たっているのは本当に評価できますし、これから皆さんに紹介したいと思える魅力的な部分に思えました。

隠れたキャスト、その名はパトカー。

人間味のある刑事ドラマを聞きやすく

 制作陣である呉丸寿樹さんの思惑としては、刑事ドラマの手法としては今や有名な「バディドラマ」の導入部分を経て、途中から「チーム金宿署の群像劇」へと、いかにスムーズに流していくかを考え抜いたのではないかと推測します。

 特に「Season1 第1~8話」まではW主演を軸にストーリー展開させながら、ひとりずつ金宿署のメンバーを追加し、それを繊細かつ丁寧に描写しています。ここまでに主演の人物像を掘り下げ、メンバー紹介を済ませておいた上で「Season1 第9話以降」はチーム金宿署の面々をいろんな組み合わせで、さらにゲストが演じる人々と絡ませた上で盛り上げていくプランだったのでしょう。

 今回の連載は「ボイスドラマ」という側面を最大限に考慮し、初めての聴取者に寄り添った丁寧な組み立てがとても際立っています。
 ただ、制作陣の発想はかなりポジティブだったのではないかと思いました。普通に考えて「ボイスドラマとして企画を組み立てる」となると、テレビや動画と比べて、いくらか不利な部分があるのは事実ですし、それが欠点と受け止めるのがある意味で自然なのです。
 しかし、呉丸寿樹さんはそれら全てを「むしろ強みに変えてやろう!」とさえ思わせるほど積極的に欠点を受け入れ、設定や脚本のブラッシュアップを進めていったのだと思います。それが故に「とても聞きやすいボイスドラマ」の下地が出来上がり、Season1中盤からの「チーム金宿署」の描写が生き生きとした形に仕上がったのだと感じました。この点は、あっぱれです!

舞台は都会だけど、たぶん田舎でも成立する。

初回はパイロット版、それ以降は声優陣もガッチリと。

 Season1最初期の第4話付近までは、いわゆるパイロット版に近いニュアンスだと思います。この約23分の尺については「とにかく物語の雰囲気に触れてもらおう」という意識が強く働いた組み立てになっています。

 W主演のナイスバディ、ジェントルマン(?)を自称するハンサムボーイ・大野 恭介(CV:呉丸 寿樹)に、知的で冷静さを兼ね備えつつも局所的にアツイ(!)クールガイ・柴山 勝利(CV:須田 一輝)が聴取者を華麗にエスコートする中、昭和のカミナリ親父を地で行く課長・宮本 宗一郎(CV:酒仙 克)が序盤を楽しく盛り上げてくれます。
 第4話にチラッと出てくる「落としのシゲさん」こと、石毛 康雄(CV:井之上 賢)もいいアクセントになっていますが、彼は第5話以降もレギュラーメンバーとして登場するので、この辺から流れが変わったことに気付けると思います。

 第5~8話は他のメンバー紹介を兼ねつつも、事件解決に奔走するドラマが本格的に動き出します。
 胃痛の絶えない課長を下支えするおっかさん・課長代理の渡辺 佐代子(CV:是枝留)、交通課への応援などもこなす才女・広沢 梢(CV:武川楓)、一癖ある先輩たちに囲まれて伸び悩む新人刑事の工藤 尊(CV:織倉俊哉)と、次々とレギュラーメンバーが出揃うのがこのタイミングになります。

 脚本段階で刑事ドラマ特有の小難しい要素や理屈をなるべく避けているので、登場人物の動きをセリフで追うのはとても簡単です。もちろん、完全に刑事ドラマの要素を排除した訳ではないので、警察官としての矜持や心痛なども丁寧に描かれています。
 また、声優さんも意識してシナリオ展開に合わせたセリフは丁寧に回していますし、脚本でも思い切ったシーンカットをしているので、本当に聞きやすいです。もし、万が一にでも聞き飛ばすシーンに出くわしたなら、それは皆さんにキャラの感情をダイレクトにお伝えしたいということなのです。

 ただ……これはシンプルさとは関係ないと思うのですが。
 やたらとチャカを使うシーンが多い気がします。この辺はどこか、昭和後期に流行ったトレンディーとアクションを兼ね備えた刑事ドラマを彷彿とさせてくれます。
 そういった作風を、ガッチリと「チーム金宿署」に所属する声優陣が読み取った上で、ガッツリと存在感を発揮しているのが魅力的な作品です!

私服警官としての服装を想像しても楽しい

総評「抜群の聞きやすさと軽妙で丁寧な描写の刑事ドラマ」

 とにかくシンプルで聞きやすい。
 刑事ドラマが題材になると、どうしても専門性の高い用語などを使わざるを得ないのですが、それを極限まで削ぎ落して「金宿署の刑事たちの人間ドラマ」にフォーカスした作風には、正直驚きさえありました。
 もしポスターを作るとするなら、金宿署の捜査課を見下ろすカメラの前に、7人の精鋭がキャスト順に並んで描かれているような絵をイメージしました!

 Seasonの組み立ても非常に秀逸で、途中まででもさすがのクオリティーですので、この後もたっぷりとお楽しみいただけると思います。
 どこかで何かの引っ掛かりを感じる人もおられるかもしれませんが、私としては「細けぇことはいいんだよ!」と言っておきます。シンプルな作品をシンプルに受け止める……こんな幸せなことはありませんよ!

 人と人が交差することがテーマともいえる本作は「お手軽に聞ける超ロングランな作品」になっていますので、ぜひ一度お聞きください!


クレジット(敬称略・リンクあり)

▢キャスト(Season1 第14話まで)

〇メインキャスト
 
大野恭介:呉丸寿樹
 柴山勝利:須田一輝
 宮本宗一郎:酒仙克
 渡辺佐代子:是枝 留
 石毛康雄:井之上賢
 広沢梢:武川楓
 工藤尊:織倉俊哉

〇サブキャスト
 緒方のぞみ:朝富やくも
 柏木 誠:モリサキタテワキ(現・サカキ モトナリ)

〇ゲスト
 容疑者(第4話):みそ汁
 吉田:五月雨 柾
 警官:みそ汁
 名前も知らない美女:イチコ(友情出演)
 石毛 由美子:西寺 みふゆ
 容疑者(第10話):馬場 輝
 女性A:百宮 ひなの
 女性B:かぁな
 不良A:あしぇら
 不良B:レスコン
 不良C:間宮耿太郎
 澤崎 彩矢:縣 ひかり
 安藤 伸介:黒川 潤
 園田 征二:五月雨 柾
 吉野 千夏:ちそら
 和田 沙織:kairi
 青柳 恵梨香:小鳩 麻友
 中根 悠太:山原 水鶏
 川島 健次:折原 幸平
 看守:みそ汁

▢スタッフ
 脚本・編集:呉丸寿樹
 メインテーマ:塩生康範

長期間連載しているのも納得の出来。オススメです!

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