ボイスドラマ視聴紀行 #19
今回ご紹介するのは、「Raven Room」さん制作の『バンドをやろう!【ボイスドラマ】』です。
なお、聴取を推薦されたのは、院長 役でご出演のK K(窪田泰明)さんです。
本編は約22分と手軽に聞ける短編ボイスドラマとなっています。
本作につきまして、視聴することを強くお勧めします。YouTube掲載ということで、視聴的にもかなり手の込んだ工夫が施されていますので、気軽に動画を見る感覚で楽しんでいただけます!
Raven Roomさんは今までにも、数多くの作品を公開されております。主催者である鴉さんのボイスサンプルもあり、連作のボイスドラマもありますので、本作でご興味を持たれた方はぜひ遊びに行ってみてください!
作品を聞き終えての率直な感想?
サムネイルを見て「本作はバンドを題材にした作品だ」と感じたあなたは、ある意味で正常です。ところがコレ、実は「医療ドラマ」なんです。
いいですか、落ち着いて聞いてください。
これは「医療ドラマとバンドが同居するコメディー作品」なんです。ここだけ聞くと、まるで私たちが小学生の頃、自由帳に殴り書きした思い付きを走り書きしたの小ネタに思えなくもないでしょう……
えっ、親愛なる読者の皆さん、どうかしましたか?
今までの下り、どっかで読んだ気がする?
もしかして、これってコピペじゃねーのかって?
しょうがないじゃない!
だってこれ、「市川智彦のボイスドラマ視聴紀行 #18」で紹介した「ヒーローになろう!」の続編みたいなモンなんだから!
だから今回は「2作品の紹介記事が一挙に投稿される」という、私もビックリのアプローチをせざるを得なかったんです!
もちろん、本作は単体でも視聴は可能ですが、やや「ヒーローになろう!」を踏襲している部分が存在するので、未視聴の方向けにリンクを貼っておきます。時間に余裕がある場合は、こちらから視聴されるとより一層楽しめますよ!
実はこれ、私は2作品同時に推薦されていました。
どちらかをご紹介しようと考え、「じゃあ、新しい方をご紹介してあげた方がいいかなー」と思って聞いてみたら……なんだか妙な違和感を得たのです。
とりあえず聞き進めて「コメディーとしては優秀だなぁ~」と思ってはいたのですが、どうにも違和感が拭い去れない。だから、もう1本の「ヒーローになろう!」を聞いた訳です。で、その違和感の正体を知り、私は「コレはどうしたらええんや?!」と叫んだ結果、こういう形で紹介するしかないと判断し、先に「ヒーローになろう!」を公開し、即座に「バンドをやろう!」を投稿する形を画策した訳です。
つい先ほど、他薦を通知する文面を確認しました。やはり、このカラクリについて、いっさい触れていませんでした。
絶対に許さんぞ、地球人ども!
約1年半の時を経た制作陣の勢いは変わらず
結局は過去作のリブートというか、アップデートというか……というテキトーな表現で済ませてくれないのが、この制作陣の凄いところ。本作の方がいろんなモノに拍車がかかっている気がします。
特に終盤が印象的なのですが……ここの手の込み方が尋常ではないですので、最後までお聞き逃しのないように!
本作は、社会派の皮をかぶったコメディー作品です。ただ、妙に本格的な部分もありますので、さらに拗らせたというか、制作陣の成長が手に取るようにわかる恐怖の作品でもあります。
今回の題材は「バンド」ということもあり、実社会とリンクする部分がうまく織り込んでいます。なんというか「実際に現実でもありそう感」がとんでもなくブラッシュアップされている気がします。
またまた複数のジャンルを混ぜ合わせ、全部のバランスを取った上で秀逸なオチまでつけてくるという、本作はまさに企画立案の三ツ星シェフさながらです。
夢が叶わなかった者たちへ
音ゲーは私の専攻科目なので、少し語らせていただくと……
作中に音楽シュミレーションゲーム、略して「音ゲー」についての言及がありますが、音ゲー黎明期で今も続く作品の中には「本物の音楽ゲーム」と化しているモノがいくつか存在します。
それは「ドラムマニア」や「太鼓の達人」、過去を遡れば「キーボードマニア」などは実際の楽器を用いた本格的すぎる難解な音ゲーだったりします。
無論、絶対的に難易度が高い訳ではなく、私のようなマトモに楽器も演奏できなかった人間でも楽しめるような工夫がたくさん盛り込まれていて、初めて遊ぶ人にも配慮されたゲームに仕上がっています。
ただ、本当に難易度が究極まで上がってくると、もはや「譜面が存在するだけのリアル演奏者レベル」になるので、当時から楽器演奏が本職の方も遊んでいるという異次元のジャンルになっているのです。
音楽で食っていくんだと決めたとはいえ、実力や運に左右されて夢破れて……という人は大勢いることでしょう。
そんな人たちが、今も音楽に触れていたいという気持ちを癒すかのごとく、音ゲーという存在が寄り添ってくれている現実なのです。カラオケだってそう、電子ギターだってそう。
本作は「夢を叶えられなかった者たちに手を差し伸べる」という側面を持ち合わせたコメディー作品……って、もうコレ意味わかんねぇな?
しかしながら、その夢へともう一度導いてくれる人が現れるというのは、そういう運命だったのか、それともただの偶然か。まぁ、本作で導いてくれる人は新手のストーカー気質があるので、何とも言いようがないのですが、そこはコメディー作品なので……という形でまとまっているのが、脚本の真の恐怖であり、ある種の狂気でもあったりします。
声優さん、キミら頑張ったなぁ。
物語はとある病院の院長室にやってきた看護部長の藤崎(CV:しのぶ)が、院長(CV:KK(窪田泰明))に嘆願する場面から始まります。わずか数秒でコメディーが始まるので、吹き出さないように注意してくださ……あれっ、ここなんか書いたことがある気がするんだけど?
看護部長の藤崎から呼び出された面々は本当に災難です。
怯えた表情を浮かべる看護師の神移(CV:折原幸平)、鈴木(CV:はてな)、野間(CV:佐倉亮)は藤崎のトンデモ構想に戸惑いを隠せずにいるのですが、いつの間にかやる気になっていく流れ……というか、本作においてはこの部分のアプローチが非常に巧妙です。みんなが徐々にやる気になっていく演技を心行くまでお楽しみください!
なお、声優さんの中で約1名、大変な努力をされている方がおられます。あえて名指ししませんが、本当にお疲れ様でした。
何がどう苦労だったのかは、皆さんがその耳でお確かめください。人間、薄々は勘づいていても、本当にやられた時の衝撃は大きく響きますから。
総評「沈黙を経て、グレードアップした混ぜるな危険」
コメディー書きの皆さん、何度もご足労をかけて申し訳ない。やっぱり本作もしっかりと聞いてほしい。
本作においては音楽がテーマとなっているため、掘り下げる部分が各個人の過去になっているのですが、ここの描写がコメディーのスレスレを走るかのごとき絶妙なバランス感覚になっています。テンポや塩梅がいいので、参考になる……かもしれません。
私がハッキリとした口調で明言できない最大の理由は「コメディーは、個々のセンスに関わってくるから」です。
シリアスな劇は書こうと思ったら、反復練習などで伸びはわずかでも、いずれは上手くなります。ただ、コメディーは本当に難しい。この部分は才能に委ねられる部分でもあるので、一概に「参考になるよ」とは言い切れないのです。なので、呼びかけの言葉も「コメディー書き」と限定していますし……
あと、制作陣にコメディーの素養がありすぎるので、簡単に真似のしようがない気がします。実は私もどっちかと言えばコメディー書きなのですが、ちょっと勝てない気がしてますので。
コメディーのスケールアップ、グレードアップ!
本作も見逃せない傑作コメディーに仕上がっているので、ぜひ一度お聞きください!
クレジット(敬称略・リンクあり)
▢キャスト
藤崎:しのぶ
院長:KK(窪田泰明)
神移:折原幸平
鈴木:はてな
野間:佐倉亮
▢スタッフ
シナリオ:鴉
制作:Raven Room
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