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ウルトラクイズ世代の現在地

 ニューヨークに行きたかった市川智彦です。

 あ、「今から飛行機で旅行したい!」って意味じゃないですよ?
 要するに「アメリカ横断ウルトラクイズに参加したかった」という世代なんです。当時の青いガキの私には、どうせクイズなんてチンプンカンプン。ラッキーが重なったとしても、成田空港のじゃんけんで負けるのがオチだったでしょう。

罰ゲームも凄かったんですよ?

 しかし、この時代のテレビ番組は空前のクイズブーム。
 一般人の参加者をせっせと募集して、毎週の放送をこなすというのが基本的なスタイルでした。長寿番組「アタック25」みたいなのが、ごまんと揃ってた時代があったんですよ!



日本人的思考を考慮した視聴者参加型クイズ

 視聴者参加型クイズ番組は、当時の日本人っぽい発想から「参加者との対立を生まない構成」がほとんどです。他の参加者はいるけども、個の力、チームの力で優勝を目指す企画が目立ちました。

 しかし、どの番組もクイズだけで競ったら個人差が出まくるので、絶対に「運の絡むゲーム要素」を混ぜ込んでいます。それによって、「クイズ強者でも簡単に負けてしまう」という判官びいき的な、誰にでもチャンスはある仕掛けが存在したのです。

 「アタック25」だって「パネルの取り合いがスコア」なので、クイズの正解はタイミング次第ではあっさり勝てちゃいます。まぁ、全ては展開次第なんですけども……
 あと「回答者が4人いる」というのも、ある種の麻雀的な運要素を含んでいます。ライバルではない人に正解されて、仮にパネルを埋められても、ノーダメージの可能性があるからです。
 なお、首位戦線に関係ない人が正解を求めるメリットとして「パネル1枚につき、賞金が貰える」ことが最たる部分だと思います。よくできてるんですよ、このルール。

1パネル1万円じゃない時代があったんです。知ってる?

 うろ覚えですが、「世界一周双六ゲーム」はクイズ正解でサイコロを振り、ゴールを目指すという番組構成でした。
 途中のマスによっては「振り出しに戻る」がいくつか存在し、ゴール手前では「ジャスト宣言」という「出目をピッタリ出してゴールする」というギャンブル的な要素もあって、なかなかに盛り上がる構成だったと思います。
 あと、ゴールした全員に商品が与えられるという、順番を競わない稀有なクイズ番組でした。

終盤でスタートに戻されると心が折れます……

 今でもおなじみの「タイムショック」は硬派なクイズ構成ですが、1分間に12問、しかも出題から回答まで5秒しかないという瞬発力と冷静さを求められました。「時間とプレッシャーでクイズ強者をねじ伏せる」という構図です。
 制作側もその辺は熟知してて、タイムショックでしか成立し得ない、あまりにも有名で究極の問題である「今、何問目?」を混ぜ込むことで参加者を慌てさせました。
 もちろん、これは早々に「参加者が問題数を指折り数える」という対策を考案されてしまいますが、逆にそれに気を取られてミスる、また肝心の「今、何問目?」が出ないケースもあるなど、スタッフはうまくやってたと思います。
 なお、リメイク版「タイムショック21」や「ザ・タイムショック」では、さらに改良されて「ところで、最初の問題の答えは?」などのトンデモ問題に進化していましたが……

BGMはタイムショック21のが好き

膨大な数の視聴者が参加したウルトラクイズの魅力

 視聴者参加型クイズの最多人数でいうと、先に挙げた「アメリカ横断ウルトラクイズ」でほぼ確定だと思います。
 こうなると、今のクイズ王みたいな強い人がゴロゴロ出てくるので、ほぼ全てが「運要素を絡めたゲーム方式のクイズ」が目白押しになるわけです。これを番組的には「知力、体力、時の運」と呼び、真の意図を薄ぼんやりとさせていたわけです。まぁ、ウルトラクイズといえば「ニューヨークに行きたいかー! 罰ゲームは怖くないかー!」の方が、圧倒的に人気のあるフレーズになりましたが。

 なお、先述した「知力、体力、時の運」は、むしろ「全国高校生クイズ選手権大会」に色濃く反映されました。こちらは「高校生3人1組のチーム構成で挑む番組」だったので、3項目ともうまくマッチしたと思います。

 どちらの番組でも、司会進行は福留功さん
 共に旅する参加者と仲良くして、それをクイズの前フリでいじったり、脱落した人にやさしく声をかけたりと……まぁ、福留さんは一般人相手でも対立を煽るというか、相手を鼓舞するかのような攻めた発言はかなり多かった印象です。

 この2番組は、厳しさあり、同情あり、喜びありの「クイズゲーム・ドキュメンタリー」的な雰囲気を醸し出していました。
 今は世界で大人気の「SASUKE Ninja Warrior」「名もなきアスリートたちの祭典」と呼ぶように、その時々に参加者が様々な人間ドラマを生んだのがウルトラクイズ、そして高校生クイズなのです。 

最近は3人1組にしてないケースも多いですね!

芸能人限定で構成されたクイズ番組の意図

 回答者同士で揉める構図にする時は、一般人を入れずに芸能人を使った番組構成にしてたので、その辺はよくできてたなーと思います。

 大橋巨泉さん考案の「世界まるごとハウマッチ」では、自ら司会を務めた巨泉さんが攻めに攻めまくって、出演者に印象的なあだ名をつけまくってた記憶があります。

 番組内容はシンプル。
 世界中で売られている商品の値段を当てるだけ。
 しかし、たったこれだけの要素でも、ビックリするほどパネラーの人間性が色濃く出たのです。

 チャック・ウィルソンさんはやたらと金額を低く見積もる傾向にあったため「ケチャック(ケチなチャック)」、ケント・ギルバートさんも安めの値踏みが多く「ケント・ネギルバート(=値切る)」と揶揄されました。
 また、片岡鶴太郎さんは「300本の商品を当てる問題」の計算方法を、あまりにも単純に「1本1ルーブルとして、300ルーブル!」という公式を用いました。後日、同じ計算をしたパネラーに対して、巨泉さんが「鶴太郎方式」と評する形で、その思考回路を描写する際にもネーミングセンスが発揮されました。

巨泉さんのオープニングトークが印象的

 土居まさるさんの軽妙なトークが楽しめた「クイズ!ヒントでピント」も芸能人だけで展開されたクイズ番組です。
 男性チームと女性チームという2チームが争う構図ですが、獲得点数が60点以上で象印賞、80点以上でパーフェクト賞が貰えました。展開的にほぼワンサイドゲームになるので、両チームが象印賞を貰ったことってないんじゃないかなと思います。
 ただ、出題難易度はかなり高め。画像を使った問題も存在し、ガキだった私には難しすぎましたね……

土居まさるの「おっかさん!」などの名台詞が魅力!

その後のクイズ番組の変遷

 その後はクイズ番組が下火になる中、海外から「クイズ$ミリオネア」「ウィーケストリンク★一人勝ちの法則」などを輸入して、日本版が登場しましたが……

 基本的に海外のクイズ番組は「賞金額が日本では設定できないほど莫大だった」こと、また「他者を蹴落としてでも勝つ」性質の構成で、当時の日本人の感覚にそぐわなかったというのが結論かなと思います。
 後に海外発の「人狼ゲーム」が大ヒットしたおかげで、そういった風潮はやや薄まりましたので、特に「ウィーケストリンク」は、今から放送したらウケると思ってます。あれは時期が早すぎた……

司会者は絶対に笑わず、皮肉ばっか言うスタイル!

 日本発祥としては「クイズ!ヘキサゴン(初代)」はクイズ番組でありながらも「自分がクイズに正解する」のではなく、「他人がクイズに正解しているかどうか?」を読むという心理戦へと進化しました。
 問題の中には「誰にでも答えられそうな、あまりに簡単な問題」も混ざっていて、その際は「全員正解しているだろう」と予測する「セーブ」という要素もゲームの幅を広げました。本当に面白かったです。
 これは深夜版のスタイルを貫いてほしかったなぁ……

クイズの出来よりも、心理戦が超重要なゲーム!

 そして、現在も放送中の「Qさま!」「プレッシャースタディ(10人1組のスタイル)」が秀逸だったと思います。
 クイズの回答をリレーしていく形式なのですが、あれは参加したらマジで胃が痛くなると思います。見てる方も面白かったんですけどねぇ。戻してくんねぇかなぁ、あのスタイル。

アンカーが8番わからないのに、残ったのが8番とかあるある。

今、クイズはゲーセンやパソコンでできる!

 じゃ、私はゲーセンで「クイズマジックアカデミー」やってくるから!

ちょっと関西弁だけど、いいよね?!

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