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ボイスドラマ視聴紀行 #25

 今回ご紹介するのは、ぽしいさんが企画されたボイスドラマ『【ボイスドラマ】MELOS-走る怨霊-(予告編&全編+α)』です。

 正確には、著作として「ぽしいとゆかいななかまたち」との表記が存在すること、また、YouTube上でのチャンネル名はこちら名義で表記されています。
 ただ、今回の紹介記事においては、脚本と制作などに携われたぽしいさん単独名義で呼称する場合がありますので、その点はあらかじめご了承ください。

 以下、文章表現の都合上、敬称略とさせていただく箇所が存在します。あらかじめご了承の上、本記事をお楽しみください。
 また、ボイスドラマを視聴・聴取した上で感想を書き進めるスタイルのため、あえて備考やクレジットを見ずに執筆している場合もございます。

 こちらの作品は「全3作品(序・破・急)」で構成されていますが、今回は「【ボイスドラマ】MELOS-走る怨霊-(予告編&全編)」をフルサイズで視聴した感想を書きます。
 再生リストは以下にリンクをご用意しますが、こちらは本編(全3作品)のみの構成です。各話ごとに明確な切れ目が存在しますので、一気に聞かずともじっくりと楽しめる作品になっています。
 本編はトータルで約58分各話が約17~20分となります。少しずつ分割で楽しみたい方は、各話のリンクからご聴取いただけると幸いです。



MELOS-走る怨霊-(各話個別リンク)


全作品を聞いた直後の率直な感想

 本作はエンドロールについては画面上での表示がありますが、基本的に「ボイスドラマ本編は音声のみ」で展開されますので、結果的に聴取する形になります。
 聴取の方法についても、個人的には「いきなり本編を聞いていただく方がスムーズに物語に入っていけるかな」と感じました。あと、概要欄を読む必要はありませんので、聴取に集中していただければいいと思います。

 実際、私も予告編から本編に入って、最後まで概要欄を一切チェックしていません。紹介記事の執筆当初から一貫して、私は聴取向きの作品は目を閉じてじっくり聴くスタイルです。
 聞き終わった直後、または執筆段階になった時に初めて、必要な情報を得るために閲覧するので、皆さんもそのくらい気軽に聞いていただければいいかなと思います。

 つまり、何が言いたいのか?
 それは「ボイスドラマ本編だけでストーリーが見事に完結しているので、聴取者が情報を補完する必要がない」ということです。本作は物語の切れ目や伏線回収なども秀逸なので、本当に身を委ねるだけで、あの奇妙な夜の世界を堪能することができます。

 作風としては「眠らない街の夜の世界」「かなりホラーな展開」などを勢いよく描いた独特な世界観を持っています。実は「筆者はホラーが大の苦手」なのですが、最後まで臆することなくフツーに聞けたので、その点を心配する必要はないと思います。

 なお、個別リンク内に「予告編」をご用意しました。
 こちらは本編への誘導も兼ねて丹念に制作されており、とてもティザー動画とは思えない出来に仕上がっています。ただ、こっちは視聴全振りの構成になっているので、予告編だけは視聴する形にしていただけると幸いです。
 あと、予告編はキャストとスタッフの紹介も兼ねているので、どなたが登場するのかをワクワクしながら見れるのもまた、魅力のひとつになっていますよ!

予告編は視聴、本編は聴取がオススメ!

やけに夜の世界に詳しい気がする制作陣

 私が紹介記事の冒頭で制作者と著作について、いちいち前置きすることは今までに一度もありませんでした。
 制作者が「ぽしい」さんで、著作が「ぽしいとゆかいななかまたち」というのは、表記揺れするから書いた……という単純な理由ではありません。今回は「これは書かざるを得ない」と判断する明確な理由があったからです。

 それはスタッフロールなどで何となく察せられる項目なのですが……この作品、やけに夜の世界に詳しすぎる描写が多いんです。
 無論、制作陣が企画立案の時点で必死になって取材した可能性も考えたのですが、それにしたって「こんなことまで、よー知ってはるなぁ……」という部分が散見されました。

 皆さんが本作でもっとも耳にするであろう、あの特徴的なシャンパンコールが最たるモノです。皆さんもシャンパンコールという単語なり、意味なりはご存知だとは思いますが、そこまで詳しい知識を持っていない方が多数派ではないかと推測します。
 シャンパンコールも当然、制作にぽしいさんが関わってはいますが……やはり黒幕が潜んでいました。私は途中で「協力者がいる」と知ったのですが、正直なコトを言うと、かなりホッとしました。
 仮に本作を全部ひとりで構築したのなら、もはや才能とかいう次元を超えた、いわば神の出現です。

 とはいえ、そういった協力を得ながら構築された企画を脚本に書き起こす際に見せた構成力もまた、とんでもなく優秀です。控えめに言って「天才かな?」と思います。
 本作は主要な登場人物が多く、多くの要素が存在するのですが、それらが最後にちゃんとまとめられており、的確な場面で物語の切れ目を作っているのは、脚本家としては少なくとも非凡な才能です。
 なので、全編を通して聞いて初めて、皆さんもまた深淵に隠された本作の最高に恐ろしい部分に気付けると思います。

「シャンパンコール指導」っていうパワーワード

イマドキの退廃感に溢れる世界観と人間模様

 本作の舞台が「眠らない街の夜の世界」であり、そこに「ホラー要素まである」と聞くと、皆さんは世に存在する無数のホラー作品のいずれかを想像するかもしれません。

 ただ、本作は他にも重要な要素が存在しますし、また意外にも人情的な部分も垣間見せてくれるので、もし聞き始めたのなら絶対に最後まで聞いてほしい作品のひとつです。
 もし途中で聞くのをやめると、それこそ「ホラー作品」で終わってしまいます。特にキツイのが『「第2話(破)」を聞いて「第3話(急)」を聞かない』という状態が、最高にヤバイと思います。単純に「怖いだけ」になっちゃうので、第2話から第3話までは一気に聴取することを強くオススメします。
 
本作の完成度の高さ、評価の高さは本編をトータルで聞いた上での評価です。「とにかく最後まで聞いてほしい!」というのが、私の必死の紹介です。

 登場人物はとても個性的でありながらも、非常にしっかりと丁寧に描写されています。
 ただ、第1話は導入部分である側面が強いからか、そこまで感じることはないと思います。本作は進めば進むほど、世界観の奥行きが出てくる魔性の作品なのです。

 私だってそうです。
 第2話の終盤あたりで強く感じたのは「これ、今風のオールヴィランドラマじゃねーか! 怖ぇーよ!」でしたから。
 そこから、ぽしいさんは第3話だけで全てをひっくり返すんです。物語の終着点から振り返った時の景色は、本当に全くの別物になります。この脚本の妙、独特のストーリー構成まで存分に楽しんでいただきたい最高の作品なのです!

マジで「破-02」の途中で震え上がりました……

夜の世界を経験してそうな素晴らしい声優陣

 本作の題材が題材だけに、脚本を受け取った声優陣も演技プランは悩んだのではないかなと思います。そこを思い切って、時には振り切って、時には楽しく演じている姿を想像すると、本当に目から汗が止まりません。

 主人公でホス狂のキャバ嬢・あいら(CV:ぽしい)は、客である生臭坊主の南粕鯉なんかすごい天誅てんちゅう(CV:スナイパー)とのアフターで兜鬼町かぶきちょうをブラつくところから、物語が幕を開けます。
 あいらは全編を通して登場しますが……このお坊さん、実はとんでもない場所に最高の見せ場が存在します。しかもそれが長々と続きますので、興味のある方は何度か聞き直してみるといいかもしれません。スナイパーさんの熱演(!)をじっくりと楽しんでいただければなと思います。

 あいらのとある失敗によって登場することになる青髪のホスト・メロス(CV:はてな)は徐々にホラー感を盛り上げていきます。
 そんなメロスの同業者でもあり、あいらの推しでもあるカリスマホストのセリヌンティンポゥ(CV:もりたかかし)をはじめ、同じ店に所属するフィロス(CV:長月英)ラトス(CV:酉月ともはる)もまた、夜の闇と踊る魔性の魅力を持ったメンバーです。

 その他にも、大学生のマキ(CV:藤森まい)に加え、公園で子供たちと遊んでいると思いきや、思いっきりいじられる謎の人物・ハングドマン(CV:鶴桜丞)の存在も見逃せません。このふたりの演技もまた、なかなか趣深いですね!

 他のキャストの皆さんも実力派揃いで、作品をガッチリと下支えしてくださっています。詳しくはクレジットでご紹介しますが、端的に言うなら「チーム・メロス」として熱演とコール(!)をしてくださっているので、そちらもじっくりと味わってくださいね!

秀逸な作品は、声優陣もスクラム組んでるイメージ。

総評「夜の闇と人の闇を描き切った複合ジャンルの傑作!」

 ひとつの作品にいくつかの要素を掛け合わせて構築するのは、現代における制作の基本ともいうべき発想です。
 しかし、実は皆さんが思っている以上に「人々が描く物語というモノは大昔から書かれ続け、もはや書き尽くされている」という論も存在します。それを受けて「現代においては、常に『スクラップ・アンド・ビルド』を繰り返すことが、物書きの宿命」と提唱する方もおられるくらいです。

 そこをぽしいさんは遠慮なく描くべき題材を全てツボの中にぶち込んだ上で必死に考え抜き、脚本として起こす時は展開を練りに練って、最後は協力してくれる仲間たちや声優陣に全てを託し、編集の際に珠玉のボイスドラマ作品として昇華させたのだと思います。

 私は本作に「全ての事象には理由がある」と言われた気がしました。
 普段なら何気なく見逃してしまったり、聞き逃してしまうようなナニカにも、必ず理由があるのではないか……そんな気持ちを抱かせてくれる趣深い作品にも仕上がっています。
 最高峰のボイスドラマ作品、皆さんもぜひご堪能ください!

 あ、ちなみに。
 聞き終わった後に、頭の中であの曲が消えなくなっても知りませんからね?


クレジット(敬称略・順不同・リンクあり)

▢キャスト
 
あいら:ぽしい
 メロス:はてな
 マキ:藤森まい
 南粕鯉なんかすごい天誅てんちゅうスナイパー
 セリヌンティンポゥ:もりたかかしオフィス・キリー
 フィロス:長月英
 ラトス:酉月ともはる
 ハングドマン:鶴桜丞

 ホストA:闇堕ちヒーロー霧鵺
 ホストB:サカキモトナリ
 ホストC:鶴桜丞
 ホストD:武川楓
 ホストE:長月英
 ホストF:スナイパー
 ホストG:佐倉亮

 キャッチA:はてな
 キャッチB:東雲やみこ
 キャッチC:也・陽

 トウ横ボーイA:かみしろゆう
 トウ横ボーイB:佐倉亮
 トウ横ボーイC:也・陽
 トウ横ボーイD:鶴桜丞

 トウ横ガールA:東雲やみこ
 トウ横ガールB:武川楓
 トウ横ガールC:餅田みよ
 トウ横ガールD:東雲やみこ

 警察官A:酉月ともはる
 警察官B:みけらん
 警察官C:東雲やみこ

 小学生A:ゆきはら
 小学生B:みけらん
 小学生C:餅田みよ

 タクシー運転手:長月英
 女の悪霊:みけらん
 呪物ナレーション:酉月ともはる

▢メインテーマ
狂気のシャンパンコール』
 作曲/Peta
 作詞/ぽしい

▢スタッフ
 
キャラクター協力:あおいはづき
 取材協力・シャンパンコール指導:はてな
 脚本・制作:ぽしい
 著作: ぽしいとゆかいななかまたち

ボイスドラマを聞き慣れた頃に出会えてよかった

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