ボイスドラマ視聴紀行 #14
今回ご紹介するのは、stalemateさんが企画したボイスドラマ『IN SILENCE』です。
なお、聴取を推薦されたのは、児玉龍一 役でご出演の呉丸寿樹さんです。呉丸さんの演技は、第1話からたっぷりと楽しめます。
以下のリンクは、直接ボイスドラマを視聴するためのリンクとなりますので、あらかじめご了承ください。
こちらの作品は「全4話+α」で構成されていますが、今回は「IN SILENCE(全編)」を視聴した感想を書きます。
本作「IN SILENCE」掲載のホームページは、キャラクター紹介やクレジットなどがまとめられた充実の内容となっています。
聴取前にチェックするよりも、途中まで聞き進めた後で閲覧するのがいいと感じましたので、閲覧の際の目安にしてください。
全作品を聞いた直後の率直な感想
まず、皆さんにお勧めしたい聴取方法があります。
ぜひ、主題歌「Smile」から聞いてください。
そして、エピローグを聞き終わったら、もう一度……この曲を聞いてください。
主題歌「Smile」は、とても爽やかな曲調の中を「人間賛歌」のようなメロディーが駆け抜けていきます。きっとこの曲が、皆さんを「本格的なボイスドラマが始まる!」という期待を高めてくれるでしょう。
そして、最後は余韻に浸らせてくれる……皆さんを笑顔にするような響きがすることでしょう。絶対に損はさせません。ぜひ、この順番でお楽しみください!
本作は主題歌からエピローグまで、全編で「約126分」の大長編ですが、各話は短く区切られていますので、気軽に聴取を始めることができます。単体であれば「約5~10分(最終回のみ約17分)」となっているので、皆さんのペースで本作を楽しめます。
本作はなんと「法曹界を題材にしたヒューマンドラマ」です。ボイスドラマの中では、とても珍しい部類に入ると思います。テレビドラマにおける現代劇ではよく扱われる題材ですが……逆に、聴取のみで展開される物語は本当に「圧巻」の一言に尽きます!
レギュラーメンバーの加賀谷法律事務所の面々をはじめ、ゲストキャラに至るまで、細部に渡る丁寧な描写が聞き応え充分の作品に仕上がっていますので、一気に聞いてしまう方もおられるかもしれませんね。
制作陣のこだわりは違和感のないストーリー構成
先述したように、昨今のテレビドラマなどで法曹界の知識が培われている聴取者が多いであろうことを考慮し、本編は徹底的にスリムな構成にしていると感じました。
一般的にも「パラリーガル」などの単語はかなりメジャーになりましたので、刑法の紹介などで補足が必要な場合にのみ適宜説明が入る形ですが、聴取時はまったく意識せずにすんなり聞けました。この辺は、制作陣の意図がガッチリとハマりましたね!
私は「スリムな構成」と言いましたが、それはあくまで「法曹界における描写において」です。
残りの部分は主題歌でも描かれている「人間賛歌」というべき、数多くの登場人物が丁寧かつ濃密に表現されています。一話完結型のストーリー展開であっても、ここまで生き生きと描写しているのは、まさに制作陣の心遣いと言っても過言ではないと思います。
また、シリーズを通してメインとなる題材も決して置き去りにはせず、全編を引き締まった構成に仕上げている部分も特筆すべき点のひとつです。
また、各話における加賀谷法律事務所のメンバーたちのキャラの掘り下げや、ストーリー展開での相関関係の移り変わりも、キラリと光る見所のひとつとなっています。
さらに制作時期から察するに、冒頭から「情報社会への警鐘」を挿し込むなど、ちょっと時代の先を行った構成もまた作品に含蓄を与えているなと感じました。
本編の編集における思い切りのよさ
違和感のなさを徹底したのは脚本だけでなく、編集でも同じことが言えます。個人的には、とても思い切った演出が多かったと思います。
それは「あえて効果音やBGMを入れずに、テンポよくドラマを走らせる」という手法です。これもおそらく、聴取者の知識を利用して考えた作戦だったのでしょう。
つまり、制作陣は「テレビドラマなどの知識の土台があるのなら、頭の中に映像的なイメージを想像することも容易ではないか?」と考えたのです。だからこそ、あえてシーンチェンジなどで効果音を多用せず、聴取者の想像力に補わせたのです。
私もボイスドラマの編集に携わったことが幾度となくありますが、この手法が完全に計算であるなら、もはや「これは褒めるしかない……」と思いました。
実は聴取中、何度か気にはしてたんです。
「あ、ここでシーンチェンジだったのに、特に編集では何もしなかったんだな……」
ここまでの私の感想の中には、とんでもなく重要な事実が潜んでいます。
まず「何度も気になった」という点、そして「だったのに」などの表現はすべて過去形である点……
そう、私はすべてのシーンにおいて、一度はすんなりとシナリオ進行を素直に飲み込んでいるのです。このスムーズさが本作における最強の武器になっている証拠に他ならないのです。
加賀谷法律事務所を取り巻く人間ドラマ
主人公の新人弁護士・井上カンナ(CV:悠月美鈴)は、ややお堅いメンバーで構成された加賀谷法律事務所の中ではコメディリリーフを担うこともあり、メインストーリーを喜怒哀楽たっぷりの魅力的な演技を披露してくれます。
初々しさがありながらも、確固たるポリシーを持ち、人としての弱さも見せる一面もあり……悠月美鈴さん、大変でしたね。素晴らしい演技をありがとうございます!
カンナと組むことの多い毒舌パラリーガル(!)の櫻井誠人(CV:鏡玲一)は、序盤こそは文字通りの怪演で聴取者を不安にさせるかもしれないという役どころを思い切って演じてくれています。
同じパラリーガルで先輩にあたる南史緒(CV:イチコ)は、個性が強い事務所内の調整役としても活躍する柔らかい雰囲気がとても魅力的です!
そして弁護士としては先輩であり、事務所のリーダーでもある常勝の弁護士・児玉龍一(CV:呉丸寿樹)はプレイボーイな一面も垣間見せる一方で、彼もまたカンナのように二転三転する状況において様々な顔を見せてくれますので、ぜひご注目ください!
加賀谷法律事務所の所長を務めるのは、加賀谷倫子(CV:是枝 留)です。現場に出張るなどのシーンはありませんが、要所を引き締める頼れる所長を見事に演じ切っておられてます。
他のキャストもまた、ガッチリと脇を固めてくれます。
変わり者を自称する男性・岡田一臣(CV:井之上賢)は強いインパクトを与えるキャラですし、カンナの母である井上彩也子(CV:染斐よしの)もまた娘の背中を暖かく押す優しいお母さんを演じています。
誰もがレギュラーメンバーに負けない演技を披露してくれるあたり、声優陣はきっと「チーム IN SILENCE」なんだなと強く感じました。
総評「この法曹界の人間ドラマ、必聴の仕上がり」
本作は、我々に要所要所で様々なメッセージを投げかけてきます。
私はそれを、逐一書き出すつもりは毛頭ありません。皆さん、これは実際に聞かなければ感じ得ないモノですので、ぜひ聴取して確認してください。シリーズを通しての変化も見所のひとつですので、その辺も丸ごと楽しんでくださいね!
ただ、これだけは私の感想です。
それは「人を動かすのは、人である」ということ。
制作陣が用意した、声優陣が熱演したテーマはどうあれ、私の抱いた感想はコレです。あまり多くは語りません。
でも、「皆さんがどんな感想を抱くかな?」とは考えていて。
もしシリーズ全編を聞いた後、あなたが抱いた率直な感想を、ぜひ私にコッソリ教えてもらえませんか?
最後に。
ホームページのブログ、ほんの少しだけ見ました。
私の感想は……5年もの時を経て、孤独な企画者さんへの褒め言葉になったでしょうか?
クレジット(敬称略・リンクあり)
▢メインキャスト
井上カンナ:悠月美鈴
櫻井誠人:鏡玲一
児玉龍一:呉丸寿樹
南史緒:イチコ
加賀谷倫子:是枝留
岡田一臣:井之上賢
▢キャスト(第1話)
井上彩也子(カンナの母):染斐よしの
井上幸彦(カンナの父):モリサキタテワキ(現・サカキ モトナリ)
松川悦子:霜月彗
斎藤由美:愛姫うき
春田めぐみ:夕宮奏風
事務局長:浅沼諒空
吉田和美(住民):環玲美
住民A:海月姫ゆうか
職員:織倉俊哉
警察:みそ汁
▢キャスト(第2話)
今村彩音:愛姫うき
今村彩羽:夕宮奏風
医師:モリサキタテワキ(現・サカキ モトナリ)
看護師長:染斐よしの
刑事:織倉俊哉
助産師:環玲美
検察:みそ汁
裁判長:黒沢廣
撮影者:霜月彗
▢キャスト(第3話)
杉浦日南子:海月姫ゆうか
海老原和則:福良野亀一
友人A:織倉俊哉
友人B・検察官:みそ汁
女子A:夕宮奏風
女子B:霜月彗
教頭・裁判長:黒沢廣
刑務官:浅沼諒空
女子高生A:愛姫うき
女子高生B:染斐よしの
▢キャスト(第4話)
井上彩也子(カンナの母):染斐よしの
井上幸彦(カンナの父):モリサキタテワキ(現・サカキ モトナリ)
吉田和美・キャスター:環玲美
榎本巧(謎の男):織倉俊哉
裁判長:福良野亀一
検察:浅沼諒空
インフルエンサー:黒沢廣
刑事:みそ汁
▢主題歌「Smile」
Vocal:新社会人
作詞・作曲・編曲:Atelier LadyBird(川崎泰弘・吉村彰一)
▢スタッフ
制作:stalemate
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