泉屋博古館東京『昭和モダーン モザイクのいろどり』展
焼き上がった陶芸作品を観て、気に入らなければ叩き割る、という陶芸家のステロタイプ的な像は、板谷波山に端を発するそうですが、その波山の息子・梅樹がモザイク画を志したきっかけが、波山が叩き割った陶器の破片にあったというのは、何ともユーモアと哀しみが混じったエピソードに思えます。
梅樹自身は死ぬまで大きな父親の存在に苦しめられたようですが、残された作品から感じるモダンで爽やかな空気は、梅樹にしか出せない個性だと思えます。
こうして死後、多くの人がその作品に触れて楽しめるこの展覧会が実現したことが、波山の息子ではない、アーティスト板谷梅樹への正当な評価の端緒となるのではないでしょうか。
遺された作品は多くないそうですし、今回出展作も多くが個人蔵でした。キュレーターさんのご苦労が偲ばれます。
その甲斐あって、とても充実した展覧会となっています。モザイクアートは不規則なピースを組み合わせることで作られるので、任意に線を引いたり色を塗ったりできる絵画とは違う、不自由な製作過程なのかなあと想像しますが、出来上がった作品の不揃いのピースたちからは、不思議なリズムを感じられて、むしろ軽やかな印象。
小さなパーツを組み合わせて全体を作る手法は山下清のちぎり絵なども想起させますが、全く印象は異なります。軽やかさと爽やかさ、観ていて心がウキウキしてくるような。
父親波山の葆光彩磁の陶芸作品もあって、これはこれで初めて見ましたけど圧倒されますね。