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菊池寛実記念智美術館『走泥社再考』展

本展は、前衛陶芸家集団として戦後日本の陶芸を牽引した走泥社(そうでいしゃ)の活動を検証する展覧会です。
いわゆる器ではなく、立体造形として芸術性を追求した陶芸作品を創り出し、その視点を日本の陶芸に根付かせたことは走泥社の功績といえるでしょう。当時、それは「オブジェ焼」と呼ばれました。

前後期で大きく展示内容が変わる構成、前期を見逃したので後期のみ鑑賞した感想となります。

サブタイトルにある「前衛陶芸が生まれた時代」のとおり、日本における前衛陶芸活動を切り拓いた走泥社について、その存在感に圧倒される展示内容となっています。

そもそも前衛陶芸とは何かということを考えると、様々な側面がありどこにフォーカスするかで大きく認識も評価も変わりそうですが、とにかくそれまでの陶芸を批判し否定し乗り越えようとする意志、を差し当たっての前衛と定義しても大きな問題はないでしょう。

個人的には以下の二点について、考えさせられました。

一つは、民藝的な「用の美」を否定し、オブジェとしての陶芸を追い求めた点。皿や花瓶や壷といった、何らかの用途のために作られる陶芸ではなく、ただそれ自身として存在するオブジェを陶芸で作る。その斬新さには現代アートへと連なっていく革新性があるのではないか。

もう一つは、作品をコントロールしようとする作者の意図が強く、焼き締めてみて初めて作品が出来上がる(最後は火の神に委ねる)という焼き物の超作家性的な部分を否定しているように感じるところ。

スタッフさんに確認しましたが展示作は全て焼き物だそうですが、彫刻的な佇まいのものが多く、焼き物であることの意味は何処にあるのだろう?とも感じました。

まあそういった理屈はともかくとして、とにかく見たこともないような陶芸作品のオンパレードという面だけでも、楽しめます。決して“美しい”作品たちではないですが、美しさとは何か、ということを問いかけてくる迫力すらあるように思えます。

シュルレアリスムや現代アート好きな人には特におすすめ…ですが、9月1日(この記事を書いている今日)で会期終了となってしまいました。

台風の影響で予定が変更になったせいでギリギリ飛び込めた怪我の功名的な鑑賞でしたが、運が良かった。

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