さユりさん
酸欠少女という枕詞が彼女の特徴を見事に表現していた、息苦しくて喘いで生きている少女。
彼女の歌はそんな苦しい思いが口をついて出たようで、聴いているほうも思わず息を止めてしまう。
デビュー曲であり彼女の名刺代わりな曲でもある『ミカヅキ』は、もともと弾き語りを聴いていたけれど、メジャーレーベルから出たバンドアレンジのほうが好みだった。
ハードコアバンドをやっている江口亮によるノイズを多用したアレンジメントは、さユりの負のパワーをさらに反転させて外に向けて放出させるようで。
1stアルバムは繰り返し聴いたけれどその後の活動はフォローしてなかったので、ご結婚されていたことも知らなかった。
結婚でハッピーエンディングになるのは童話くらいのもので、結婚したからと言って寂しさが消えたりしないとこと分かってるけど、それでも少しでもさユりの悲しみが癒され満たされた時間があったのなら、救われる。
安西冬衛の韃靼海峡を越えていく蝶のように、儚くとも、辿り着くことなどなくても、美しい満月を目指して舞い上がることでしか生きていけないさユりの蝶を想う。
死後の世界なんてこれっぽっちも信じていないけれど、それでも、彼女の魂が安らぎを得ますようにと祈る。