『愛蔵普及版 浮世絵大系』から『1.師宣』『2.春信』
浮世絵が俄然面白くなってきたので、集英社の大判全集『浮世絵大系』を引っ張り出してきて眺めている。
菱川師宣の巻はまだ肉筆画の時代。有名な見返り美人が巻頭に。
切手にも採用された国民的作品だけれども、いまいち良さはわかんないなあ。絹に筆で着色した作品とのこと。絹の質感など実物を観るとまた印象も変わるのかも。東博にあるらしい。
この巻で面白かったのは鳥居清倍(きよます)という人で、なかなか豪快な絵で、太い線の勢いがすごい。
丹絵(たんえ)と呼ばれる、墨摺の版画に赤い絵の具で着色した二色構成の、半分版画、半分肉筆みたいな絵らしい。
鳥居家は歌舞伎の看板絵を描いているそうで今も現役とのこと。この大系では8代目が現役と書かれているけど今は9代目に代替わりしているよう。
春信の巻になると、いわゆる多色刷りの浮世絵の手法が確立していく。そのあたりの経緯を詳しく説明した解説が参考になる。
春信という人の絵は何とも不思議な佇まいで、静けさのなかに何かひっそりとした気配が漂っている。
和歌を題材にした絵で、品もあるのに格式張らない、絶妙な砕け方も良い。
また、中性的な人物像は、非リアルで幻想的な物語世界を彷彿とさせて、たとえば下の2図、上は耳打ちされてるのは男性だそう、似た構図の下の絵は女性同士。シスターフッドな世界を想起させて興味深い。
春信も東博が何点か所蔵しているそう。
春信の絵の人物が浮かべる、虚無的な無表情がとても印象的で、かえって何か象徴的なものを湛えているようで、何だか落ち着かなくなる。