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ギョルゲ・ササルマン『方形の円 偽説・都市生成論』(住谷春也訳)

36もの短い断章から浮かびあがる、架空都市、幻想建築、そして虚像国家の創造と崩壊。カルヴィーノ『見えない都市』に先駆けて発表され、一読したアーシュラ・K・ル=グインが自ら翻訳を熱望した、ルーマニアの鬼才の知られざる傑作がついに文庫化。

表紙に野又穫の絵があしらわれていて、この作品世界にピッタリ。昨年野又穫を知り新宿の展覧会に行ったのを懐かしく思い出しつつ。

著者本人、英訳の労を取ったル・グィン、日本語版訳者、解説者それぞれのこの作品についての解説が巻末にまとめられていて、カルヴィーノ『見えない都市』との類似性、ボルヘスからの影響、が繰り返し指摘される。

『見えない都市』とはほぼ同時期に執筆されたようで、当然2作の間に影響関係はない。恐ろしい偶然。

読み進めながら、幻想的でありつつハードSF風でもある文体になかなか馴染めず、風刺や批評が織り込まれているのだろうなあと思いつつそれを掴み取ることができていないもどかしさもあり、やはり僕はSFや幻想小説には向いてないのだなあと実感。

つまらなくはないけれど、どこか隔靴掻痒な読後感。またいつか読み直したら印象変わるかな。

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