『散文詩 夜の歌』フランシス・ジャム
岩波文庫、三好達治の訳。
ジャムは1868年生まれのフランスの詩人。岩波文庫に何冊か翻訳詩集が入っているが、これはタイトルにある通り詩的な散文のスタイルで、詩というよりは掌編というべき雰囲気。ちなみにタイトルに散文詩とつけたのは三好の判断とのこと。
ジャムといえば純朴な自然を背景に清新な心情を歌うイメージだが、今作は少し趣を異にして、幻想味の強い味わいの作品が集まっている。
夜をテーマにした連作散文で、夜ならではの、妖しさや闇、夢、といったモチーフが導入されて、幻想小説的な読感。
何か筋らしいものがあるわけでもなく、夜に浮かぶ一瞬のイメージを、ジャムの詩的な文章で掬い取った作品、薄い一冊だけれど非常にコクのある逸品。
旧字体の漢字なので慣れてないと読みにくいかもしれないけれど、その字面も雰囲気を盛り上げる。
ところで作中に
という文章があり、どうも何かからの引用のような具合なのだけれど、聖書にこんな文章があるのかしら?