
黒沢清『復讐 運命の訪問者』
幼い頃に肉親を殺され、ひとり生き残った刑事が、ある事件を通して犯人グループと出会い、復讐を遂げるハード・バイオレンス。
監督は「勝手にしやがれ!! 英雄計画」の黒沢清。脚本は「女優霊」の高橋洋。撮影を「MUSASHI 外伝 ヤングムサシの秘密に迫る」の柴主高秀が担当している。主演は「修羅がゆく4 東京大戦争」の哀川翔。
ハード・バイオレンスという形容は、あんまりしっくり来ない。ヤクザが出てきて銃撃戦やるんだけど、よくあるヤクザ映画とは似ても似つかない。だって黒沢清だもの。
この復讐二部作と『蛇・蜘蛛』は最初は四部作として構想されたらしい。しかし諸般の事情で二部作ずつとなり、内容もリフレインされるように復讐譚とその後日譚という組み合わせになった。
杖をつく女性というモチーフは『蜘蛛の瞳』のコメットさんに受け継がれていったようで、この二部作のリフレインぶりが強調される。
どちらも、一作目は高橋洋の脚本である程度筋の通った筋もあり、二作目は黒沢清の脚本でどこかアバンガルドでシュールな内容となっている。
『蛇・蜘蛛』を観てしまっているので、復讐シリーズのほうが少し分が悪い。むしろ復讐シリーズでの反省を踏まえて『蛇・蜘蛛』でリベンジを果たしたと捉えるべきか。
とは言え黒沢清節はこの作品でも奔放に横溢し、他の誰にも撮れないような独特の世界になっている。
主人公の刑事の相棒として小日向文世、復讐対象の悪役に六平直政と、黒沢組ではあまり見かけない顔ぶれ。とは言え六平はアングラ劇団あがりの実力派で、今作でも十分に存在感を発揮していてさすがの貫禄。
ラストの銃撃戦は、真っ正面から撃ち合ってるのに弾が当たらない、撃たれても死なない、など、ツッコミどころ満載で楽しい。
映画はおかしなことをさも本当らしく描写する、という黒沢清の世界観ゆえのシーンか。