【映画観覧記】ジャニーズ退所後の/本木雅弘/香取慎吾/稲垣吾郎
前回のつづきから
何故、成功したアイドルはこの件に関して貝のように口を閉ざすのであろうか?
『光GENJIへ・元フォーリーブス北公次の禁断の半生記』によれば、フォーリーブス弟分であった郷ひろみも(後にバーニングへ移籍) 例の合宿所で、ジャニー喜多川の性被害を受けている。
まだデヴュー前の15~6歳の時期だ。ジャニーズ事務所をすんなり退所できたことも不思議だ。
映画プロデューサー H.ワインスタイン(ミラマックス創設者)性的虐待事件のように、被害者はその事実を口外しないよう法的に拘束されているではないのか、
郷ひろみという商品価値を守るため話せない状況にあるのではないのか、そんなことも訝しるのだ。
話せない事情それは各々違うだろう、先の映画でも、事件は過去のものとなり幸せな家庭を築き上げてる者に、もう一度その件を掘り上げるというのは酷で、賠償金を貰い守秘義務を課せられていてはもう手も足もでない。
つまり成功した者も同じく、その件は消化し封印してしまい、外部へ漏らさないのだろう。
幼児期に受けた虐待が繰り返され負の連鎖が起きるという事例もあるので、
ジャニー喜多川のネグレクトについて検証する必要があるのではないだろうか。
前置きが長くなってしまったが今回は、そんなジャニーズ系の映画。
とはいえそんなに本数は見ておらず、いわゆる抱き合わせ同時上映で、たのきん映画は通っている。
松田聖子(小6に後援会在籍)、薬師丸ひろ子(中学にファン)の映画に被ってたものだ。
しかしそこらアイドル映画には何の思い入れもなく、ほとんど記憶にもない。
敢えてジャニーズ映画を見たいと思わないというのが正直なところ。
それが、本木雅弘(シブがき隊、モッくん)だけは違ったようだ。
88年ジャニーズ退所後の動きが、他のアイドルを逸脱させる。
映画「226」(奥山和由・制作、ショーケン主演、奥山氏いわくメリー喜多川氏からの圧力)
「ファンシイダンス」「遊びの時間は終らない」「シコふんじゃった。」とコミカル路線、
「魚からダイオキシン!!」では裕也さんと、
そして名作「GONIN(1995)」では石井隆・監督のもと堂々演じきる。(この映画についてはいつかちゃんと書きたいくらい好き)
「おくりびと(2008)」アカデミー賞外国語映画賞、
「日本のいちばん長い日(2015)」では、とうとう昭和天皇になっちゃった。
今から思えば、小泉今日子にも通ずる賢明さがあったと云わざる得ない。
しっかり芝居を続けていくという芯がはっきりしているからだ。
それから奥さんを内田也哉子に選んだとこなど、もうパーフェクトな選択。
これで裕也さんファミリー、とにかく内田裕也さんの身内になってしまえば芸能界フリーパスだ。
なぜそうなるのかは摩訶不思議であるが、ビートルズ日本公演前座に関係者特等席での観覧から、あらゆる芸能事務所の黎明期(やはりナベプロか)に顔を出しパイプも太い、
そしてロックンロールなチルドレンを率いてニューイヤーロックフェスと、謂わば芸能界フィクサーなのである。
ジャニーズ事務所など元々渡辺プロ小会社のひとつ、モッくんは晴れて束縛を受けない自由を会得シェケナベイベ〜。
そんなモッくん映画、彼が出てるならと観たりする中、こちらを推す。
『永い言い訳(2016)』
監督・脚本: 西川美和
出演: 本木雅弘、竹原ピストル、堀内敬子、深津絵里
原作が良いのでしょう。
久々にみたモッくん、最初スゲェ嫌なヤツで、途中までいっても嫌なヤツで、嫌なヤツのままだったら困るなァと思いながら最後までみた。
まるで自分自身を遠くから見てるような気分、自己中心的で見栄っ張り、他者のことなどお構いなしで自己陶酔、嫌なヤツだ。
対照的な竹原ピストルくん、よい。
それでだんだん懐柔していって、なるようになっていく様、言い訳の言い訳で出すものが尽きるまでいく。
良い映画でした。そして深津絵里はかわいい(笑)
はっきり言って90年代以降のジャニーズアイドルはよくわかっていない。
SMAPは5人?6人?? (正解は最初6人、森くん辞めて5人。言うまでもないか)
"世界に一つだけの花"っておかしいでしょ、当たり前。二つある花があるなら持ってこい。
って、養老孟司先生も仰っております。
その意味では当然である。その当然をわざわざ歌い、それがヒットするのは、当然が当然でない社会だからである。
つまり違いを主張する感覚所与が排除されている社会だからである。
とつづく。
それにしても香取慎吾クンは許せなかった。いやそれをやらせるスタッフのせいなのか。
「座頭市」から始まり「こちら葛飾区亀有公園前派出所」「忍者ハットリくん」
愚にもつかないリメイクものが腹立たしかった。
そういったらキムタクなんてのは腐り切ってる。なにしろ「ヤマト」やっちゃうんだから。
もうそういった原作を愚弄し、スター起用で幾許かの制作費回収を図ろうという安直な作品作りは止した方がいい。
日本映画をダメにしていってる要因のひとつだと思う。
しかし偶然にも見たい映画がなかったので、これを観たところ。
『凪待ち(2019)』
監督: 白石和彌
出演: 香取慎吾、恒松祐里、リリー・フランキー
これには驚いた。香取くん、ジャニーズ退所後だからなのか、だいぶの汚れ役。
「孤狼の血」の監督が送る、どこまでいっても救われない物語。
どうにか浮かび上がろうとする主人公、何をやっても絡みつく悪癖が海底へと引き戻す。
自身で招いたこと、向こうからやってくる災い、どちらも彼が漂わせている気に誘き寄せられる。
凪を待っている、というタイトルだが、一向にその気配は立ち現れず凪らない。
観ているこちらの気分を陥れていくばかり。
こんな役柄もやれるんだと、見なおしました。
下降意識はクセになり、もっと堕ちていきたくなり、やがてその堕ちていく感覚も遮断される。
そんな映画だった。
稲垣吾郎クンは嫌いじゃない。
SMAPの中では一番変わり者じゃなかろうか、あの路上駐車での立て篭もりもいとおかし。
(しかし興味ないちゅうといてよく知ってやがるぜ、知らぬうちに混入してくるジャニーズ)
同じようなオタク気質を感じてしまうのかも知れない。
『半世界(2019)』
監督・脚本: 阪本順治
出演: 稲垣吾郎、長谷川博己、池脇千鶴、渋川清彦
阪本順治監督、
初期「どついたるねん」「鉄拳」「トカレフ」それに「ビリケン」好きだな。
「闇の子供たち(2008)」は、タイでの臓器移植売買の話でかなり衝撃的でしたね。
で、まずこの映画の質感が好き、空気が澄んでる(田舎だからか)感じ。
稲垣クンの炭焼職人もいい。
けれども、一人息子に対する扱いが下手クソ。
でもわかります、僕も無関心主義(よくいえば放任主義)なのですごくよくわかる。
ホントはどう接していいのか臆してるだけなのです。
親友2人のそれぞれ立ち位置も、なんかよくわかる。長谷川博己は謎すぎるけど。
淡々と進行していくところ、この静かでゆっくりしたリズムがいい。
半世界がなにを指しているのかは最後にいってもわからないが、それでいい。
何処にいても生活は続き、半分を現実に生き、半分を常世へ飛ばす、そんなような意味合いだろうか。
じわりと効く映画です。
さて長々と書いてしまいましたが、ジャニー喜多川の性搾取問題は尾を引き
事務所解体にまで及んでいくのでしょうか?
芸能界は闇だらけ、真実を語る者もいれば、墓場まで持っていく者もいるのでしょう。
それから真実とは、見方を変えればまったく違う毛色を見せるもの。
黒澤映画「羅生門」の如くです。
それでも僕は映画を見続けていくことでしょう。