レトルトカレー行脚という奇行。
序文。
人は迷って出歩くと魂を落としてしまうという。
それを琉球では、マブイ(魂)を落とす、というそうだ。
落とした場所まで戻り、マブヤーを取り戻さなければならない。
そうしないとそのマブイがいない場所(身体)に何か得体の知れないモノが入ってきてしまい悪さをする。
東京にいた頃、何もするコトが見えず深夜の街を徘徊しては飲み歩く、そこにいないような時間だ。
酩酊の中、僕の身体からはマブイが抜け落ち、知らないうちに喧嘩に巻き込まれてしまったり、帰り道に転んで怪我をしてしまったり、否それは酔っ払っているからだと云われたらそれまでではあるが、きっと何度もマブイを落としては拾ったりを繰り返しているんだ。
時に、あ、これはヤバいな、と思ったりして、踵を返す。
回れ右だ、このまま進んでいくと、きっと落としてしまう、そんな自己防衛本能が働く。
これから始まるは3年ほど前の記録。
ただ毎食レトルトカレーを闇雲に食すという奇行のアーカイヴ。
レトルトカレー行脚の顛末。
去年の終わりから、最近までの軌跡です。
食べたレトルトカレーを撮り続け58食、Twitterにそれをアゲるという愚行、何節かにしてFBへと貯蔵、我ながらいったいこれは何がしたいのだろうかと暗澹たる心持ちで、やってきました。
遂に、終わります。
もうこの辺りの食料量販店に、新しい在庫が無くなってしまったからです。(安堵しています、笑)
僕の収集癖は変です。
瓶の王冠から始まって、空き瓶、空き缶類、海の岸辺に打ち上げられるビーチ・ガラス、水晶やらの鉱物、もう止めましたが招き猫や亀の置物、そんなガラクタ類、それから重要なコトはお金をかけないってこと。
煙草の箱とか、空き缶などは、なんとかそれを再利用できないかといつも模索しています。
散髪した髪の毛を取っておくという究極の貧乏性、つげ義春の影響が大きいのかも知れない。
何にしろ、アートという括りで、それをもう一度利用すれば、何か意味ありげで有難いことになるのだろうが、結局はそこまでいく前に、ただただ収集しているだけという、包み紙や買い上げ袋を取っておく主婦となんら大差ないのであった。
それを保管しておく場所、これは大問題だ。
ただでさえ手狭な住居に、酔狂で集めたそんな物たちの居場所はないのである。
だからやっぱりデジタル化、これは大事。
収集した諸々を、写真化してデジタル保管、データ管理、これで場所いらず。
いずれ3D(立体化)でデータを残せるようになれば、もう本体を所有せずともコピーでいいのである。
手に取りたくなれば、3Dプリンターで出力と。
まぁ王冠をそうやってデータ管理している様は、かなり狂うておるが。
レコードのコレクトも同じような趣ではあるが、実用性という観点からも、なかなか手放せない物のひとつ。
それでもね、膨張して収縮する宇宙のように、いつかは(しかも早い段階で)手放して、自由になろうと思ってる。
そういったコトと平行して、僕は記録を残すことにも時間を使った。
その瞬間を画像で落とし込む写真、ビデオカメラで動画を撮影、特にそれをどうするかという考えもなしに大量の記録を収集していた。
本当にこれはどうしたらいいのかわからない。
実際、そのコトに対しては懐疑的である。
夏目漱石の書簡が残っていました、というのとは度合いが違う。
市井のなんでもない一般ピープル(懐かしい言い方)の生活が、ただそこにあったというコトでしかない。
これも先ほどと同じく、二次使用できないものか、すなわちデータ化して保存、それを整理して管理する。
例えば、30数年前の下北沢駅が写っている写真がある。
それを撮ったのは、もちろん被写体を写すためではあったが、30数年の下北沢駅を記録するということに於いては、ある種、意味深い写真ともなる。
実は亡くなった父の遺品として、海外で撮ったとかいうネガフィルムを大量に引き継いでしまった。他にも、出版物や動画もある。おいおい生前にそれは自身で整理しておけよ、というのが本音である。
僕自身は、写真を数年前にすべてデータ化して、他の人が写っているものはその当人へ渡し、後は焼却した。
いつ、ポックリ逝ってしまうのやら、それは誰にもわからない。
たくさんの肥満した過去を、できるだけスリムにして、他の無関係な人にスマートに手渡したい。
いや手渡さなくてもいいけどね、ハハ。
どんな物でも、どんなに執着したって、ぜんぶ儚い。
これが行き着いたところなのだけれど、どうしたワケだか僕のところに集まってきてしまうので、それを形見分けのように出力し続けるしかないのが、近況ということになる。
前向きに、過去を提示する現在が、未来にどう影響するのだろうか、とか。
まるで考古学的な心持ちで、死骸を分類していくのです。
ああ、レトルトカレーとはまるで関係ない。
そうです、人生は壮大な暇つぶしだと思っています。
どれだけその一時を、夢中になって費やせたら、恋愛でも音楽でも快楽でも収集でも革命でも、それで生きてる甲斐があるってもんじゃないでしょうか。
#レトルトカレー行脚 記録。pt.1
01■「オリエンタル・マース・カレー」
チャツネが効いてる〜!
02■神田カレーグランプリ第2回優勝「マンダラ・ビーフ・カレー」
ホットなスパイス、お店で食べたらさぞや美味しいのだろふ。
03■「ふらの産トマトのチキン・カレー」
優しい味。富良野てのに弱い。
04■「よこすか・海軍カレー」
ビーフは甘いね。トロトロ牛肉とゴロゴロ野菜、懐かしさはある。
05■無印良品「3種の唐辛子とチキン・カレー」
一口で毛穴が開いた。辛さも強力だが味の奥行きもある。他とは比べ物にならぬ。
06■CGC「コク仕込みビーフ・カレー」
マイナー会社製。スープ的まろやかさと小麦粉感。80円のコスパ!
07■大塚「ボン・カレー 50周年ver」
通常レシピと違うのか驚くほどマイルドで美味い。温泉卵入れてスープとして食す。
08■S&B本日の贅沢「濃厚ブイヨン・ビーフ・カレー」
カレーと称するよりシチュー側。バケットとは良く合う。
09■無印良品「キーマ・カレー」
間違いなし無印。寿司ネタを弾いて酢飯カレーで食す。酢飯カレー最強!
#レトルトカレー行脚 記録。pt.2
10■「長期保存 非常災害用 ビーフカレー」
社会福祉法人・東京コロニー 製
普通に美味しい。いざという時食べたら泣いちゃうヤツ。
11■無印「グリーンカレー」
タイカレーは通常のカレーとは別モノ!ここから無印つづく。
12■無印「バターチキン」
定番。ここから無印は始まったんですね。
13■無印「シチリアレモンのクリーミーチキン」
その名の通り、レモンの酸味残る円やかスープ。辛くないけどスパイスで火照る。
14■無印「マトンドピアザ」
羊大好き。玉ねぎ甘くて美味しい。でも甘甘過ぎるきらいも。
15■無印「豚肉と玉ねぎのカレー」
トロトロ豚肉と甘たまねぎ。隠し味に醤油とみりんの和味。あれ、これってばC&Cに似てないかい?好き。
16■「ククレカレー(辛口」
奇を衒わない安定の中庸さ。可もなく不可もなく、実は難しいラインかもしらぬ。
17■ハウス「咖喱屋カレー」
さらさらスープに肉片は跡形もなし。ハヤシに近し。
#レトルトカレー行脚 記録 pt.3
18■ハウス「ホテル・カレー」
具はほとんどなくワインでのばしたというスープはもはやカレーと呼べるのか。欧風の行き着いたとこなのか!?
19■新宿中村屋「インドカレー」
昭和2年、日本のカレー文化はここから始まった、とのこと。ビーフでかい、スパイシー、ほんのり汗ばむ。美味しい!
20■大塚「ボンカレー 中辛」
安定の味。日本カレーの平均値、思えば全てのレトルトカレーに共通するものを感じる。抜きん出るコトもなく、まさに出っ歯でメガネのニッポンの味。
21■第一回神田カレーグランプリ「ボンディ・チーズカレー」
よくぞレトルトにチーズを織り込んだものだ。ボンディらしく、スパイシーなカレーに、まぁこれは好き好きだけどチーズね。成る程な出来栄え。
22■ハチ食品「赤からカレー」
名古屋名物とうたってるが大阪の会社。赤味噌っぽいがコチジャンと豆板醤を使ってる。辛そうに見えるがわりとマイルド。スープ状韓国風カレーであるか。
23■ローソン「キーマ・カレー」
コンビニ独自製品。フランチャイズな味。プールサイドの売店で売ってるような、コスパを考えればなくもない。
#レトルトカレー行脚 記録 pt.4
24■天領「飛騨 野菜だけのカレー」
肉を使ってないとな。結構濃厚、トマトピューレみたい。もしくはルーを直球で。シメジや人参も豊富に入っていて野菜を強調。カレーにヘルシーさは求めてないが、ベジには有り難いのかもね。
25■神田カレーグランプリ第3回優勝「日乃屋 和風ビーフカレー」
一口目は甘いのだけど後から辛さがやってくる不思議な感じ。一度店で食べたコトあるけど、レトルトの方が美味しいような気がするのも不思議。
26■金沢「チャンピオンカレー」
シンス1961!甘みと酸味がある。ジャケ写真のようにカツのせてソースかけるとよく合いそう。これだけだと少し淋しいよう。
27■神田カレーグランプリ第4.6回優勝「100時間カレー B&R 欧風ビーフ」
100時間てことは約4日か。ソテーのオニオンとビーフね。うむむ、甘いすよ!どうも僕はビーフ使う欧風が苦手。やたら辛ければいいてワケぢゃないけど、このカレーは好みじゃないです〜
28■「エチオピア・ビーフカレー 激辛」
参った。こんなにも辛いとは。お店での辛さ10倍相当、ですか。味云々というよりも、鳥ちやんのカレー思い出した。汗だく、耳が遠いよ。やめようね、もう辛いのは。
29■ヤマモリ・「グリーンカレー」
モンドセレクション9年連続金賞ですって。うーん、心地良い辛さ。チキンもたくさん。タイカレーは別モノですね。フェス感!
30■S&B「粗挽きビーフカレー」
挽肉多めで濃い味も悪くない。デミグラスとカレーの融合。ハンバーグをバラバラにしてそのソースを食べてる感じかな。そー言うと美味しそうぢゃないけど。笑
#レトルトカレー行脚 記録 pt.5
31■ハウス 食べログ百名店「旧ヤム邸 牛豚キーマカレー」
まずカルダモンが前に出る。和ダシにゴボウやシメジなどの顔も見える。これは合わせる飯で変わってくるのだろう。残念ながらパンではスパイスがうるさい。
32■ローソン「ビーフカレー」辛口
コンビニ産、ハウス製。小麦粉使ったいわゆるフツーのヤツなのね。たまにそれも懐かし。このレベルはどれも同じなのね。
別枠■C&C「朝カレー」
僕の青春カレー!
33■明治「男の絶品 旨辛カレー」
ガーリック臭ぷんぷん、マカ入り、唐辛子で汗浮く。てコトで、夜のカレーなんですね(笑) とうとうカレーもそこまできたのね。
34■グリコ「LEE ビーフカレー 10倍」
たいしたことない。エチオピアに比べたら。食べる前に覚悟したんだけど、たいしたことない。
35■食べログ百名店「濃厚バターチキンカレー」
千葉にある印度料理シタールより。生クリとトマトで円やか、美味しくないワケないよね。この食べログシリーズはなかなか良い。バターチキンはお子様大好きだよねー。
36■新宿中村屋「インドカレー」
こりは美味い!まさかと思ったがジャケ通りの骨付き鳥。ホロホロにほぐれます。これをレトルトで実現するとはっ!インド風の香辛料も好み也。いよっ中村屋!!
#レトルトカレー行脚 記録 pt.6
37■大塚「ボンカレー NEO」辛口
ネオです。ジャケも一新されとります。あの50周年に近い内容量。ゴロゴロ野菜、程よいスパイシーさ、安定の美味しさ!やはりこのレトルト界では指針となるべく定められた宿命なのね。
38■S&B「カレー曜日」辛口
たまには懐かしい家庭カレーが食べたくなる。ジャケ通りのゴロゴロ野菜、小麦粉感も程よくだ。カレーは家庭、ラーメンは街の味だとか寺山修司氏が言ってたが、まぁレトルトは別項だよね。隔絶か隠匿の味か。
39■ハウス「ジャワカレー」辛口
三大レトルト、ボンククレジャワ!随分ぶりに食す。ライトで爽快な辛口。キャンプでサラッと作った感があります。チキンブイヨンがそうさせるのかな。
40■ハウス食べログ百名店「芳醇チキンカレー」
新宿・魯珈 のカレー。スパイスが強い。強すぎて苦味もでる。バランス的にどうだろう?何度も食べたいとは思えないなァ。
41■「飛騨牛 黒カレー」
こないだ高速SAで奮発して買った平成最後レトルト!お値段張りましたが、味は普通でした。ブランド牛てことだけであるね。
42■グリコ「LEE. トムヤム風チキンカレー」
マッサマンカレーの味がする。レトルト感は否めないがこれはこれでなくはない。程よい辛さと酸味。タイカレーですな。
#レトルトカレー行脚 記録 pt.7
43▪︎オリエンタル「マースカレー」辛口
オリエンタルは名古屋発祥。東洋商会から兄は珈琲、弟はカレーへと進む。歴史を見てたらこれNHK朝ドラみたいな展開なのねん。オリエンタル坊や、ハヤシもあるでよ〜てCMも名古屋だからよくわかる。なんとグァバもこの会社でござったか!
44■明治「銀座カリー」辛口
なかなかイケる。トロっとしたタマネギも、ビーフも程よく、辛さもハイカラよ。侮れない洋食カリーだ!
45■S&B「スリランカ風キーマカレー」中辛
ひよこ豆が嬉しい。ココナッツミルクのお陰かな、とても優しい味で美味しい。こりがスリランカなんか!
46■グリコ「LEE マーラービーフ」辛さ10倍
辛いですね10倍だから。リーぽいマッタリした感。具はビーフが少しのみ。中華山椒と言われる花椒が痺れさせるそう。これ火鍋に入ってるヤツかなァ。
47■ヤマモリ「パネーン」
濃厚スープに鳥肉たくさんココナッツミルクにハープといかにもタイカレー!この会社から7種も発売されてるがなかなか全種類見かけないなァ。どれもタイカレーに特化してるてのもいいね。
48■富良野市場「スープカレー」
新機軸スープカレー。玉ねぎ、骨付き鳥となかなかどうして本格派。富良野に弱い僕も満足。北海道はデッカいどー!
#レトルトカレー行脚 記録 pt.8
49■ヤマモリ「プーパッポンカリー」
本格タイ料理レトルトのヤマモリ。蟹と卵の海鮮カリー。日本のカレーとはチョイ違う、まさにタイカレーなのねん。
50■大塚「料亭のまかないカレー」
銀座ろくさん亭、料理の鉄人・道場六三郎のお店カレー。和だし、鍋の残った具材のような味わい、小ざっぱりしていて美味しい。後ひかない感じが、お酒飲んだ後の雑炊に近いかも。
51■ファミマお母さん食堂「欧風ビーフカレー」
ビーフがゴロリ。まぁ美味い。ビフェで食べてる風かな、味も。レトルトでいえば300円台は高額なのでそれなりのプレミアム感はある。でもこれくらいの味なら他でもいいかもしれないね。肉は別として。
52■S&B「フォン・ド・ボー ディナーカレー」中辛
リブロースが醸し出すコク、欧風はあまり好みではないが、ビーフシチューみたく美味しい。S&B最高峰だそうです。エスビーはホント色んなの出してるな。
53■富良野市場「ゴロッとポークカレー」
富良野だけにゴローさんと掛けてるんやろか?じゃがも豚バラもこれ見よがしに入ってま。こないだのスープカレーは良かったけど、これはちょいと酸味があり、なんかいただけない感じ。
54■S&B「120時間熟成デミグラスの牛ほぐし肉カレー」
ネーミング長っ。確かに濃厚、ほぐされた肉もしっかり入ってます。最初はいいけど、長引くと甘ったるさが堪える。デミだもんなァ。
#レトルトカレー行脚 記録 pt.9
55■MCC「100時間かけたカレー」辛口
神戸発。これはビーフシチューに近いので、パン食にはとても合う。もっさり感な欧風。100時間か、約4日かけたんスね。あ、熟成で70時間て書いてある!
56■「直火焙煎ルウ 野菜カレー」
ゲンキー産。いたって普通。18種のスパイス感は見当たらない。安さに比例したレベル。ハヤシの方はまだマシだったけどなー。
57■ハウス「ジャワカレー スパイシーブレンド」大辛
それ程辛くもない。ジャワらしい爽やかさがスパイスで曇るから普通の辛口がいいな。ガラムマサラが前に出過ぎなんだね。
58■大塚「ボンカレー・ゴールド」辛口
レトルトカレーの根底をなす味。LAST EXIT!
結び。
えい終わりだ終わり!
いまふと思ったけど、僕は終えたいがために始めるんだな、と。
始めたら終わらないとならないじゃん。
もう始める時から終わるコトを予感して、うずうずしちゃうんだよね。
幻想だけど。それは。
実際は終わりません。いやむしろ始まってもいません。
そいつをキメちゃうのは、読点句点で区切った積もりになってる悪い癖。
まーそんなコトどーでもいいや。
もうレトルトカレーは食べません。(いやウソ食べると思う)
おしまい。