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R-1グランプリのブランディングに思うこと

お笑い大好き、広告代理店勤務のプランナーのいぶきと申します。

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R-1グランプリの東京リベンジャーズコラボに対してモヤることがあり、

また、そもそも「お笑いイベントのブランディング」に興味があったので、
ちょっとまとめようと思います。

以下、内容としては基本的には、批評的な内容です。

本来の仕事であれば
「施策案(アイデア)」までをセットでお出しするのですが、
「では、どんな施策をするべきか」に関しては、
思うところありますが、あえて書かないようにします。

もしも関西テレビのR-1グランプリ制作スタッフの方やその知り合いの人が
読者にいらっしゃいましたら、繋がせていただけるとすごく嬉しいです。
お笑い好きの、あくまでコミュニケーションを生業としている人間の
戯言ですが書いてみました。


前提:ターゲットの整理

R-1を取り巻く視聴者を
論理的に分解するなら以下の7層に分けられる。

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(ちなみに僕は「7」に位置しています。)

テレビ番組という特性上、「視聴率アップ」を目指すにあたっての論点:

■認知率
まず、問題となるのが認知率がどうなのか
2002年から実施されている大会であり、
R-1はそこそこの認知率が期待できる。
つまり、クリティカルな問題ではないと推察。戦略上、解決しなければいけない課題は、「認知率アップ」ではないと判断。

■視聴率アップのための戦略ターゲット

では、視聴率アップのためにどこを狙うべきか?
大きくは方向性2つだと考えられる。

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黄色の部分:まだ見たことがない人をいかに取り込むか
緑色の部分:すでに見たことあるが辞めてしまった人をどう取り込むか

である。

ただ、ここで注意なのは、
「3」の存在はほとんどいないということ。

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お笑いは好きだけど、R-1は一度も見たことがない、
という特性を持った人が日本にどれだけいるだろうか?

いたとしても、
例えば「最近お笑いが好きになった人」などに絞られるのではないか?
つまりはこの層は「お笑いロイヤリティ歴が浅いから、見ていないだけど、いずれ見る」と期待できるため、この層に向けての施策も優先順位としては低い。

整理すると、ターゲットとなるのは2・4・5の層。

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ここに関しては調査をしなければボリューム算出ができないため、

あくまで推察となるが、ボリュームとしては2>4>5だと考えられる。

市場の大きさで見ると、「視聴率アップを目指す」という目的に対して、
2・4・5の順番で打ち手を検討することが有効に思われる。

それぞれの層は、R−1視聴へのハードルが異なる

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そして、それぞれの打ち手としては

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が考えられます。

そして、今回のR-1グランプリ×東京リベンジャーズコラボは、
「2」に位置する施策だったのではないでしょうか?

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つまり、

「離脱している人(ターゲット4・5)へは
 大会・番組の質が良くなれば見るはず。
 そちらに対してはしっかり運営の方で準備をしている。
 であれば、まだR-1を見たことがない人にとって、
 【東京リベンジャーズコラボやっているらしいよ】がキッカケで視聴してもらう

という戦略かなと思いました。
こういう風に、整理していくと「悪手」とは思えない施策案かと思います。

ただ、まだ、大会本番が放送されていない中でコラボの是非を語るのは難しいですが、東京リベンジャーズコラボをしたことに対して、
TwitterとYouTubeのコメント欄を見ましたが、割とネガティブな声が集まっていました。
おそらくは、5層7層のお笑いロイヤリティ高めの人の声だと推察します。

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では、東京リベンジャーズコラボは

「本当に良い手」なのか「悪手」なのか。僕なりに考えていることを書きたいと思います。

ここから論点は
論点1:R-1というブランドの本質的な課題
論点2:ターゲット設定と優先順位はどうするべきか
論点3:東京リベンジャーズコラボは有効だったのか

について整理したいと思います。

論点1:R-1というブランドの本質的な課題


今までターゲットの話ばかりをしてきましたが、「7」層に所属している自分から見る、
R-1というブランドの功績と負の部分を抑えたいと思います。

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ここでR-1グランプリの昨年の話を振り返ります。

功績:
■R-1芸歴制限を作ったことによって、「おいでやすこが」という物語性のあるユニットコンビが生まれた
 (その後、ユニットコンビはキングオブコントでも出場できるようになり話題を生む)
■審査員の刷新で、現役世代による様々な角度から評価される審査員フォーメーションに
 (R-1の審査員刷新が、キングオブコントなど他大会の審査員刷新にもつながっていることも考えられる)
■芸歴10年以内制限によってネタのクオリティが下がる、ということはなく、ニュースターの発掘につながる
■クリーピーナッツの「バレる」というコンセプトマッチしたタイアップ楽曲が生まれたこと
負の部分:
■今まで芸歴制限のない中、急なルール変更によって出場資格芸歴10年以内
■番組の進行が上手く行かなかったのか、
 ・煽りVと関西テレビ別ドラマの番宣などに時間を割くが、
  審査員のコメントが全く放送されない
 ・出場者の敗者コメントが放送されない
 ・出場者のコントのオチ台詞前に暗転される
■「バレる」タイアップ楽曲を、芸人登場曲など「全て」に使ってしまったことによる飽き(これは個人的な感想ですが)


こうやって書き出してみると、功績が多々存在しているにもかかわらず、
本番の「進行管理が上手く機能しなかった」「当日の演出の不自然さ」によって、印象が悪くなっていることが考えられます。

事実、放送当時は、視聴していたお笑いロイヤリティ高層が
Twitterで多くネガティブなコメントを残し、
審査員長を務めていた陣内智則や司会を務めていた霜降り明星も自身のYouTubeやラジオで苦笑したコメント(批判ではなく、あくまで苦笑程度)を出していました。

つまり、2022年のR-1に期待されることは、
「時間内にしっかりとしたクオリティの大会に仕上げる」ことです。

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その中で、2月、決勝に上がるファイナリストが選出されました。

選出されたメンバーに対しては昨年に続きの実力者もいれば、新しい顔もいる。素晴らしい選出だと思います。

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ただ、問題は「人数」です。

「時間内にしっかりとしたクオリティの大会に仕上げる」
という番組の課題に対して、
解決策として
「ネタ披露をするファイナリストの枠を減らす」
ように見えた。のです。

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ここで重要なのは、「ように見えた」ことです。

事実は番組関係者ではないので分かりません。
ただ「人数が減った」その情報が、1お笑いファンにどう映ったか、について記載をしています。

ファイナリストが7人に減ったことに対して
いくつか批判的なコメントをSNSで目にしました。
ただ、公式から人数が減った意図に関するアナウンスがあったのか、
人数が減るという事前アナウンスがあったのか、
僕が公式R-1 Twitterを見る限り発見できませんでした。

R-1の課題を掴むために、キーワードとなる概念は「責任」だと思います。

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予選から何ヶ月もかけて芸人さんに優劣をつけ、
「芸人さんの人生を左右する大会」だとR-1自身が発信する「責任」です。

たびたび、お笑いの大会では「人生」という言葉が出てきます。
芸人さんにとっては、大会出場は「世に出るためのチャンス」であり、
人生を変えるポテンシャルが存在します。

そして、それを大会側も煽ります。
ティザー動画でもそんな言葉が印象的に現れます。
(昨年優勝者のゆりやんが「お祭りじゃない」「芸人が人生を懸けた大会」と表現)

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(M-1とR-1は顕著にその傾向にあります。ちなみにキングオブコントは2021年のリブランディングの際にその傾向をあえて外しているように感じました。これはこれで長くなるので割愛します)

つまりは、お笑いの大会は芸人さんの人生をかけている場所
少なくもと、大会側はその側面を強調します。

しかし、それなのに、
R-1の運営側には、「なぜそのような判断を下したのか」の説明がなく、
しかもその判断を「いきなり言い渡してくる」という印象があります。

つまり、運営側が芸人さんたちの「人生が変わる!」と銘打っておきながら、その「責任」を果たすためにアクションが見られないのです。
この責任を感じさせないコミュニケーションこそ、本質的な課題であると考察しています。

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それは、2021年以降のR-1グランプリで如実に存在する問題です。

2020年12月、予選大会が始まる直前に
「突然の芸歴制限ルール」を設け、物議を醸しました。
おいでやす小田、ルシファー吉岡、ヒューマン中村など、
「今までR-1を支えてきた功労者」に対して、
ほとんど説明もなく梯子を外すR-1グランプリの「ように見えた」こと。

そして、本番当日も審査員たちにコメントを振ることがないため、
敗退者たちのその得点に対して「説明」がなく、
その割に、関西テレビ制作番組ドラマの番宣を入れ込むことによって
結局は、芸人さんのネタや人生ではなく、
関西テレビのビジネス的成功を求めている「ように見えた」こと。

R-1というブランドは、
ブランドとして新しい試みをする際に、
それまでそのブランドを支えていた構成員(主には出場者や審査員)と、
そのブランドを長く愛しているファンに対して
「しっかりとした説明なし」に意思決定されている「ように見えた」のです。

R-1から誠実な説明責任・発信不足しているからこそ、
芸人を大切にしていない「ように見えた」問題が存在しているのです。

2022年、
R-1が抱えている課題を解決するためにやらなければいけなかったことは、
この「責任感不足」を払拭させるような
「説明」だったのではないかと思います。

もちろん、ただ「Twitterで逐一文章を発表しろ」という意味ではなく、
その「説明」をいかにチャーミングに発信していけるか、
そこにこそコミュニケーションアイデアが必要です。


論点2:ターゲット設定と優先順位はどうするべきか


視聴率アップを目的とした時に、ターゲットは2・4・5と整理しました。

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では、どのターゲットから狙っていくべきなのでしょうか?

ボリュームで比較すると、
2>4>5と推定しております。では、単純に2を狙えば良いのか?

(※注意:ここからは、より一層、偏愛が故の偏りのある文章です)

もしも、僕がR-1の関係者(広告宣伝担当者であれば)
まず優先すべきは、7層5層だと提言します。必ずします。

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そしてその上で、短期的な成果を求められている番組に対して、

大変恐縮な提言となりますが、

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こんな「2年計画」を提案します。

なぜか。というと、2021年のR-1グランプリは運営側のミスが大きく、
現在、R-1は、
お笑いロイヤリティ高層の信頼を「損なっている」という状態
です。自分のタイムラインの声を拾って考える、仮説ですが。

確かに、
お笑いロイヤリティ高層は市場ボリュームとして多くはありません。
だから「短期的に視聴率アップを狙うマーケティング」をすれば、取るに足らない存在かとおもいます。ただ、R-1グランプリは「お笑い」の大会です。

お笑いロイヤリティ高い人が見ない/ネガティブなコメントが溢れるお笑いの大会を、お笑いロイヤリティ低い人は見たいと思うでしょうか?

・ファッション好きの友達が「ダサい」と言っている服のブランドを買うか
・美容好きの友達が「効果がない」と言っている化粧品のブランドを買うか
・映画好きの友達が「面白くない」と言っている映画を見にいくか

という話に近いと思います。


ロイヤリティ高層が認めないコンテンツは、結果的に、定着しないのです。
また、それは結果的に出場している芸人さんにとっても
「R-1は出場しても人生が変わるようなものではないから出場しない」という状態もなり得ます。

例えば、キングオブコントが「一人でも出場OK」にルール変更

なんてニュースが出てくると、一気にそちらに注力する芸人さんが増えるのではないかと推察しています。現在のR-1ではそれくらい危機的な状態だと把握しております。
(もちろん、大会同士の不文律でやらないことにしているのかもしれませんが、そうなればいよいよR-1の存在意義がなくなります)

だからこそ、R-1リブランディングに際して

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という計画で僕なら進めます


※組織的なしがらみを完全無視で書いております。
「そんなこと言ったって、まずは視聴率なんだよ!!なんも分かってない部外者がうるせぇんだよ」というツッコミはあると思いますが、一旦理想論としてまとめておきます。もちろん、視聴率を狙うな、と言っているわけではなく。ただ、短期的には、それよりも優先すべきKPIがあるのではないかと考えています。そこを整理できて初めて「視聴率を狙う」「M-1にも並ぶお化けコンテンツを狙う」という話になるのではないでしょうか。


論点3:東京リベンジャーズコラボは有効だったのか

今まで、「そもそもまずターゲットはお笑いロイヤリティ高層であり、そこに向けての説明コミュニケーションに重点を置くべき」としてきましたが、その上で、最後に、純粋に「東京リベンジャーズコラボ」についても論じたいと思います。

一般にコンテンツコラボは2通りの考えがあると思います。

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今回は、「リブランディング目的コラボ」であることを推察しています。

しかし、なんでもかんでも話題のコンテンツとコラボをすればいいわけではありません。

一般的に、コンテンツコラボにおいて重要なのは、
・話題性
・文脈のマッチ度

この2軸を抑える必要があり、
体感で言うと「文脈のマッチ度>話題性」が重要です。

文脈がマッチしているコンテンツの中で、
話題性のあるものがあれば選択するという整理であるべき。

でないと、
文脈がマッチしていない話題のコンテンツとコラボをすることになり、
「乗っかっている」という風に見えるからです。これは避けるべきです。

と、では、「R-1」と「東京リベンジャーズ」はどうだったのか。

番組プロデューサーはインタビューで

R-1に挑戦する方たちの多くが、みんな“未来を変える”ために、孤高の舞台で笑いを獲りにいきます。そんなR-1の挑戦者の姿は、タケミチと重なる部分があり、思い切ってコラボレーションのお願いをしたところ、快諾していただきました


とのことでした。「未来を変える」という部分が、何度もタイムリープを繰り返してチャレンジする東京リベンジャーズと文脈的な整合性があるという主張だと読み取れます。

ただ、R-1と東京リベンジャーズのファンでもある僕にとって、「文脈が違う」と感じました。(これは個人的な感想なので異論はもちろんあると思います)

まず、「未来を変えるためにチャレンジしている」という意味で言えば、どんなコンテンツもそうです。ワンピースも、仲間で海賊王になるという”未来”を目指してチャレンジしています。鬼滅の刃も、呪術も、キングダムも…ほとんどすべての物語が「明日に向けて努力を続けている者たち」の物語なのではないでしょうか?

つまり、「そこをピックアップしても、東京リベンジャーズ固有の個性と主張するのはズレているのではないか?」と感じるのです。

例えば、M-1と漫画「べしゃり暮らし」はポスターでコラボしていました。このコラボにどれだけの話題性があるかは分かりませんが、
「文脈」と意味で言うと最高です。「べしゃり暮らし」以外のコンテンツでは成立しないほどの文脈との接着があります。

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ここまで神がかり的なコラボは難しいにしても、
結局、R-1と東京リベンジャーズの文脈的な接着は「弱い」と考えています。

また、個人的に……
「東京リベンジャーズは、仲間との絆の物語」です。
「孤高」とは程遠いと思います。

仲間との絆を守るために、
主人公は何度もタイムリープし、命をかける物語なわけです。
そもそも、タケミチは「一人だと弱い」存在です。


それでも諦めない強靭な精神力と、仲間の助けがあって難を切り抜ける。
だから、タケミチ一人がトロフィーを持っている
このキービジュアルがそもそも、
「東京リベンジャーズを本当に見ているのか?」とツッコミたくなる
のだと思います。

このコラボは、文脈の接着が薄く、効果的に機能しないのではないかと推察しています。

まとめ

と、つらつら、アイデアも書かずに、批評めいたことを書きました。

まとめると、以下の3つです。

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こんな批評めいたことをたくさん書いてしましました。

その上で、次「何をするべきなのか」「何を発信するべきなのか」は
何かしらの会議に呼んで頂いただければ話したいです!

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