今年のクラフトビール 10 パイント - 2021年
今年もあまり記事を更新できなかったのだけど、一年を締めくくるこの記事は今年のビール体験を振り返る意味でも重要なので書くことに。
昨年に引き続き、パンデミックの中の旅行は難しくカリフォルニア州以外のビールを飲む機会があまりなかったので、サンフランシスコ在住の視点での個人的に印象に残った2021 年の10 パイント。
West Ashley Cuvée (Apricot Saison 4yrs Blend) / Sante Adairius Rustic Ales
Santa Cruz (サンタクルズ) にあるSante Adairius Rustic Ales (SARA; サンテ アダイリウス リュスティック エールズ)には今年は例年以上に何度も訪れたし、様々な種類のビールを飲んだ。そんな中でもやはり印象に残っているのはWest Ashleyの2018-2021年のブレンド West Ashley Cuvée だろう。通常のWest Ashleyも新鮮なアプリコットが爆発するものすごくフルーティーなセゾンなのだけど、こちらは更にその上に干し杏とジャムの甘みが加わり、ブレンド故の味の層をはっきりと感じることが出来る、まさに杏の成長を辿ることが出来る一本。カリフォルニア州は米国内最大のアプリコット産地ということもあり、素晴らしいアプリコットのセゾンが多いのも納得。
これ以外にも A Thousand Summer (デンマークのチェリーワイン製造用に使われていた巨大樽でネクタリンと共にエイジされたセゾン), 9周年の Nine (前述のチェリーワイン用の樽でエイジされたライセゾン), Effects of Change (地元 Venus Spirits のジンの樽でミカンとともにエイジされたセゾン), Anaïs (ベルジャン ファームハウスエール), Queen of the Season (フレンチオークのフィーダーでエイジされたセゾン) など美味しかったのを上げればキリがなく、実はIPAもRustic Pilsnerも(特にフレッシュなドラフトは)他では味わえない美味しさなのだが、特別感も含めこの West Ashley Cuvée を選択。12月28日時点の情報では、なんとオークランドのビアバー The Trappist だった場所がSanteのタップルームになるとのこと!これは楽しみ。
Sante Adairius についてもっと知りたい方は以下で。
8th Anniversary Beer 2021 (Golden Sour Beer Aged in Jamaican Rum Barrels w/ Pineapple) / The Rare Barrel
Oakland (オークランド) にある The Rare Barrel (ザ レア バレル) の8周年記念イベントは今年参加したイベントの中でも最も規模の大きかったものの一つ。ビアフェス程ではないが、ステーションが3カ所設置され、TRB及びHello Friendのイベント用のビールやヴィンテージのビール、Crown & Hops, Hella Coastal, Urban Roots 等アフリカンアメリカンオーナーのブリュワリーのビール、Beachwood, Threes, Side Project等仲の良いブリュワリーのビール
など合計で30種類以上のビールを飲むことができた。その中でも特に印象に残っていたのがこの8周年記念の名前を冠する 8th Anniversary Beer 2021 。ゴールデンサワーを本場ジャマイカのラム樽にパイナップルと共にエイジしたビールで、甘さとタートさのバランスが素晴らしく、ラムとフルーツのアロマで飲むほどに美味しくなる一杯だった。これは是非機会があったらまた飲みたい。
The Rare Barrel は今年から Ambassador of Sour のメンバーに入ったので他にも美味しかったのはあるのだけど、これが一番だったかと思う。
Shark Side of the Moon (Decocted Black German Pilsner) / Humble Sea
Santa Cruz (サンタクルズ) にあるHumble Sea (ハンブルシー)はこの数年で急成長を遂げたブリュワリーの一つ。先日日本にも公式に入って来たみたいだけど、このパンデミックの中で2店舗も拡張したことが示す様に、今まさに飛ぶ鳥を落とすほどの勢い。Pacificaのタップルームがオープンしたのでサンフランシスコから行きやすくなった。
Humble Sea の会員制クラブ Kooks Club のメンバーでもあるので、For the Kooks (アネホのメスカル樽でエイジされたスタウト) や World of Whalecraft TIPA や Harry Fogger and the Foglets of Fire TIPA も悩んだけど、やはり原点に戻り Lager Nerds な人達がつくるデコクションを用いたBlack German Pilsner は本当に美味しかったので、こちら Shark Side of the Moon を選択。
ラベルも個人的にはすごく気に入っており、音楽とビールの融合をうまく表現している気がした。似た例としてはオークランドのレコードストア 1-2-3-4 Go! Records と Ale Industries のコラボビール Fortieth Street Pale Ale があり、これも良かったが、Humble Seaの方が個人的には好みだったのでこちらを選択。他にも去年の HenHouse と地元のレコード店 The Last Record Store とのコラボIPA等もあった。
Entangled Worlds (Black Barley Wine) / Cellarmaker Brewing
サンフランシスコのビールシーンを語るにあたり、Cellarmaker (セラーメーカー) を抜きで語ることはできない。それくらい今のサンフランシスコの中で素晴らしい地位を築いたブリュワリー。ここは今年も美味しいPale Ale (Dobis!) やIPAをリリースしていたのだけど、個人的に印象に残っているのはこちら8周年記念の一環としてリリースしたバーレーワイン Entangled World。フィッツジェラルド バーボン樽とウェラー バーボン樽でエイジし、ヘイゼルナッツとバニラビーンズを加え味を調えられている。シロップ等の副原料を使用せず、使った素材そのままの味が強く全面に出ているスタウト。これは本当に美味しかった。あと2つボトルを持っているのでそれらはセラーして味の変化を楽しもうと思っている。
The King and the Frog (Liege Ale) / Mad Fritz
ナパバレーにあるブリュワリー Mad Fritz (マッドフリッツ) のビールの歴史を再現するシリーズより The King and the Frogs。オランダで15世紀につくられていた Kuyt ビールに続きこれはベルギーで10世紀頃に作られていたLiege Ale。わざわざアイダホ州より取り寄せたスペルト小麦をNile氏自らフロアモルティングして作成。ドライな口当たりながらもビスケット等モルトの甘さがあり美味しかった。
Drab (Porter) / Wondrous Brewing
Oakland (オークランド) にあるWondrous (ワンダラス) は2021年にEmeryville (エメリーヴィル) にタップルームを開店したブリュワリー。ブリュワーのWynn氏はSante Adairiusで働いたこともあり、ここのビールは本格的で本当に美味しい。Hop Culture の 2021年の新しいブリュワリーベスト12に選ばれたりもしているので、その実力は誰もが認めるところ。また、Sante Adairius のSanta Cruz Portal タップルームにはここのビールが繋がっていることが多い。
缶はなかなか流通していないのでほとんどタップルームでしか飲むことが出来ず、まだあまり種類は飲めていないけど、このDrabのバランスは秀逸だった。前述のHop Cultureに11月に飲んだビール ベスト12に選ばれるのも納得。HellesやWC IPAも美味しかったけど、個人的にはこれが一番印象にのこった。
他にもSlice Beerとのコラボ Wonder Bud IPA も記憶に新しい。ここの記事はまだ書けていないけど、タップルームの様子はこちら。デザイン誌Wallpaperにも載るぐらいクールな空間。
Late to the Party (Hazy IPA) / Hello Friends
Hello Friend Beer (ハロー フレンド ビア) は今年の5月半ばにソフトローンチしたブリュワリーで、自らを'A Sour Beer Co.' とサワービールに特化したブリュワリーであることを主張している The Rare Barrel によるノン サワービールを扱うサイドプロジェクト。これまでに数種類のIPAを飲んでいるが、どれも良くできていて美味しく、中でもオープン直後ぐらいの時期に訪れた時に飲んだLate to the Party IPA (Galaxy, Citra, El Dorado を使用したHazy IPA) が抜群に好みの味だった。完熟フルーツ、オレンジ、パイナップル。まさに王道。この他にも Willie Willie (ネルソンホップでDDH された Pale Ale) や Something Completely Different (Citra と Mosaic を使用した Hazy IPA ) も美味しかった!サワー専門にブリュワリーがつくったIPAだけに名前が秀逸。
The Rare Barrel と タップルームを共用しているので、ドラフトはそこで飲むことができる。
Floating Amongst the Stars (Mixed Fermentation IPA Aged in Oak Barrels) / The Rare Barrel x Moonraker
こちらはカリフォルニアの州都サクラメントからやや北にあるAuburn(オーバーン)という町にあるブリュワリー Moonraker Brewing と The Rare Barrel とのコラボ Mix Fermentation IPA。このビールはThe Rare Barrel 及び Moonraker それぞれのブリュワリーでつくられた Mix Fermentation ビールのブレンドで、The Rare Barrel側は22か月オーク樽でエイジしたビールを使用。結果としてあまり他では飲むことのできないグレープフルーツっぽさやタートさ、そしてホップのフルーティーなアロマを味わうことができる複雑なビールが出来上がった。
飲んだ瞬間にもう何本か購入しておけば良かったと後悔したビールの一つ。両ブリュワリーのコラボは2回目とのことなので、一回目のコラボビールもいずれ飲んでみたいが流石に手に入らないかな。
Moonrakerのタップルームの様子はこちら。
Autumn 2021(Bere Helles Style Lager Beer) / Hanabi Lager
ナパのカルト的なワイナリー Screaming Eagle。一本数十万で売れることで有名なワイナリーのワインメーカー Nick Gislason がワイナリーのスタッフ用につくっていたラガーが元となりできたのが Hanabi Lager。タップルームは無く、ビールを飲むには一部のビアバーやビアストアを除くと 実質 Hanabi Lager のウェブサイトから直接購入するしか方法がない、こちらもまさにカルトなビール。今年から購入することができ、2021 Spring, Summer, Autumn, Winter と4種類を味わうことができたが、どのラガーもモルトの特徴が良く出ていて香り高く風味が良い。
Hanabi Lager も前述のMad Fritz同様にモルトにこだわり、古代種に行きついた。近代のモルトは品種改良がされており、昔のものとは全く異なる味であり、故に昔ながらのビールをつくるべくたどりついたのがベア バーレイ。アメリカ内でこの古代種を育てている農家を探す冒険はこちらのポッドキャストで聞くことができるが、そのベアバーレイでつくられたのが この2021 Autumn。
Mad Fritzもそうだけど、ワイン・メーカーがつくるビールはこだわるポイントが普通のブリュワリーとは違うので毎回楽しみだ。
First Press (Blend of Barrel Aged Stout Brewed with Honey) / Private Press
ボトルシェア会にて幸運にも飲むことが出来た Private Press (プライベートプレス) の1周年記念スタウト First Press。他のブリュワリーの濃厚スタウトとは一線を画す複雑さと風味で一口飲んで驚いた記憶がある。Willet、Basil Hayden、1792、Elijah Craig等有名どころのバーボン樽と複数のアップルブランデー樽を使用しハチミツを使ってつくられたハニースタウト。
Private Press は会員制のブリュワリーで、その会員数もわずか600人限定。そしてもちろん入会待ちの人が数百人既にいるブリュワリーだ。人気の秘密の一つはここのヘッドブリュワーBrad Clark氏が以前にJackie O’s Breweryでバレルプログラムの責任者だったという経緯もあるのかもしれない。
そんなレアなビールをシェアしてくれた友人に感謝!
番外編
HS4 シリーズ / Humble Sea
一本というよりは、総合的に感動したシリーズで、Humble Sea 4周年記念のHS4 シリーズ。パッケージやパンフレット等兎に角拘りの作り。内容も素晴らしく Highland Park とのコラボであるデコクションをしたPilsnerやEquilibriumとのコラボ DIPA、Other Halfとのコラボ Imperial Stoutなど。
詳細は以下を参照。
Figaro 2011 / Cascade Brewing
こちらは今年の元旦に飲んだ Cascade Brewing の Figaro 2011。オーク樽で白イチジクと共にエイジされたサワー。イチジクの甘みとシャルドネの酸味が絶妙で長期熟成された梅酒にも近い。CityBeerStoreコラボで、渡米した年につくられたビール故に思い入れがある。
Whalebird Kombucha
家にいることが多い年だったこともあり、平日にビールの代わりにKombuchaを飲むことが多かったけど、その中でも気に入ったのがこれ、Whalebirdのkombucha。特にLavender Lemonadeは飲みやすく甘すぎず何本も買ってしまった。かわいいクジラのデザインのラベルもポイント。
2022年に注目しているブリュワリー
上記にあげたブリュワリー以外では(他の州のブリュワリーは訪れるのが大変なので)カリフォルニアに限定すると来年は以下のブリュワリーに注目している。
Fox Ale Fermentation Project
サンノゼでここのところ名前を聞くようになったブリュワリー兼発酵食品店。店舗及びタップルームは来年サンノゼに開店予定だけど、既に複数のブリュワリーとコラボし、梅と紫蘇を使ったセゾン、人参やマッシュルームを使ったセゾン、コンブチャ等を作っている。先日訪れたCanimoで、柿を使ったゴールデンスタウトを飲んだが、ほんのりとした柿の風味があり美味しかった。
Promised Land Brewing Co.
こちらは今年2度ほど訪れることが出来た Gilroy にあるブリュワリー。Slurp Juice TIPAが今年のCity Beer StoreのTriple IPA ブラインドテイスティングが優勝したのが記憶に残っているが、他のビールも美味しかった。
まとめ
今年は昨年に比べブリュワリーに訪れる機会も増え、家だけではなくその場で注いでもらったドラフトを飲むことが出来たのが何よりも嬉しかった。更に、パンデミックで様々な状況が変化し、パンデミック前とは異なり各ブリュワリーの個性というか戦略というか、ビール以外の状況も見えた年だった気がする。良くも悪くもパンデミック後の新しい世界にチャンスを見いだせたブリュワリーは益々大きくなり、適応できなかったブリュワリーはあまり良い結果を出せなかったのでは無いかと思う。
昨年の10パイントは、家で飲むことが多かった為に飽きの来ないラガーやピルスナーが多かったが、今年はブリュワリーに行けるようになり、そこからの発見からくるビールが多かった気がする。ブリュワリーでしか飲めない、あるいは買えない特別な一杯。
来年はSante AdairiusやCellarmakerがオークランドにタップルームを出し、WondrousやHella Coastalなど新規のブリュワリーも加わわるので、イーストベイも盛り上がりそう。
さて来年はどんな素晴らしいビールが飲めるのだろうか!?
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