スタートアップ的手法で大成功しているブリュワリー:Humble Sea Brewing Co.
山の中の裏庭から始まったブリュワリー
Santa Cruz にあるブリュワリー Humble Sea Brewing Co. は創業者Nickの義祖母のSanta Cruz Mountainsにある家の裏庭からはじまった。Homebrewを繰り返し、2014年に創業したブリュワリーはHop Cultureの2020年度のベスト12 ブリュワリーに選ばれる程にまで成長。
更にはなんとこのCOVID-19の営業が難しい状況にありながら、3つのタップルーム兼レストランを新たにオープン予定だという。
苦戦しているブリュワリーやレストランがある中、ここまで好調なのは何故か?そのヒントは彼らが2021年のKooks Clubに向けてリリースしたこのビデオから何となくわかることができる。
Kooks に向けたメッセージ
Kooks Club はHumble Sea の会員制ボトルクラブのことで、現在メンバーは100人程度。2020年に開始し一瞬にして初回の会員数に達してしまう程の人気だ。
2020年のKooks Clubに関してはこちらの記事で。
[クラフトビール] 2020年に入っていたボトルクラブ: まとめ
そのKooks Club に関して 1:40 あたりから Creative Director のFrank氏が以下の様に説明している。
Kooks are trend setters. They are leaders in the beer industry. They know their beer, they know their sh*t. So what they like, I want to cater to and figure out and make beers that impresses the kooks. The rest of the industry, the rest of beer drinkers will eventually follow the kooks. They are the leaders.
They can tell us what they want in terms of the hats or the backpacks or coolers or named badges, what ever the hell you want we'll make it because you're the kooks.
Kooks (Humble Sea の特別会員)はビール業界のトレンドを決めていく重要なリーダー達なので、彼らが飲みたいと思っているものに習い、彼らを満足させたい。ビール業界や他のビール好きな人達もいずれKooksの好きなトレンドに習うと思う。Kooksはビール業界のリーダーだから。
Kooksが欲しいと言ったものは何でも作る。それがバックパックだろうと、缶クーラーだろうと、名前入りのバッチであろうと何でも言って欲しい。あなた達はKooksなのだから。
このユーザーからのフィードバックを最重要とし、それに沿った商品の作り方こそまさにシリコンバレー・スタートアップ企業が商品をつくる方法であり、成功の秘訣なのだと思う。ここまで自分たちの製品(ビール)を好きな人たちがKooksであることに誇りを持ち、絶えず製品を良くするためのフィードバックループを築こうとする方針が本当にすごい。
もう一つの例として、2020年に行われた Kooks Club 初のボトルリリースイベントがある。Kooksをブリュワリーに招き、Frank氏、Drew氏自らがブリュワリーを紹介してまわった。
更には、一般は入ることができないバレルエイジ施設Space Campの中に案内してくれるという贅沢な内容。
その後はブリュワリーのメンバーとの懇親会。ここではブリュワーと直接話ができ、Humble Seaのどのビールが好きか、今後飲んでみたいビールは?等の話が行われていた。
自分たちのファンを大事にし、ファンに接し直接意見を聞く。ファンを満足させることに注力したからこそ成功できたのだと思う。
新しいビールを毎週リリース
更にここはビールをリリースするペースもすごい。Instagramを確認するとわかるが、IPAを中心とした新しいビールを毎週 4 種類、時には 5 種類程リリースしている。Kooksはそれらを先行購入することができるのだが、TIPAは人気がありすぎて一般の流通量も少ない。常に新しいものを提供し続けることでファンを飽きさせない仕組みを確立している。
ラベルも特徴的で、Santa Cruzの緩さとサーファー文化を混ぜ合わせたデザイン。
白い缶に透明のラベルというのもなかなか他のブリュワリーでは見ることがなく、棚に並んでいるときにも目立つデザインになっている。
そして、缶をオンラインで購入したときに必ず箱に入っているのが上の写真にも写っているブリュワリーのステッカーと 'ありがとう' の意味を込めたAir Hugs カード。ここまで気を使っているのは流石だ。
一方で、自分達の為のビールも
その一方で、ビールが好きだからブリュワーになった以上自分達の好きなビールをつくりたい!そんな思いがこもっているのが Humble Sea のラガー。最近は Humble Sea Brewhouse 名義でリリースしているが、とにかくこだわりがすごい。IPAで儲けたお金(IPA Money)でラガー用の水平発酵タンクを購入し、なんと手間のかかるダブルデコクション製法を用いて自分たちの満足のできる最高の方法でラガーをつくっている。The Real DDH (Double Decocted Helles) の缶には以下の様な記述も発見できる。
If you didn't know by now, now you know -- we're huge lager nerds. So much so that we fully modified the brewhouse to perform traditional decoction mashing, an old world brewing technique that most modern brewers don't take the time to do. Many German Brewers (and Humble Sea!) that it develops a richer depth of malt complexity and subtle nuances only achieved by decocting.
もしかしたら気づいていたかもしれないけど、我々は大のラガー好き、ラガーナードなんだ。あまりにも好きすぎて、デコクションができるように施設を改良してしまったぐらい。デコクションは最近のブリュワリーはやらないけど、我々はより深みのあるモルトの複雑さを引き出すことができると思っている。
そして、それらを味わうことができるのが、Feel Güd や Helle Güd、Taste Güd 等のGüdシリーズ。一番最新である Brews Güd には以下の説明がある。
This is a series of beers made-by-and-made-for-brewers. All 10 members of our brewing team designed a recipe with zero constraints. We have no intention to acknowledge trends, popular styles, or what others want to drink. This one is for us. (But yeah, we guess you can drink it too)
これはブリュワーによるブリュワーの為のビールのシリーズだ。ブリュワリーのメンバー10人が制限の無いやりたいレシピでつくった。トレンドやどんなスタイルのビールが人気があるか、他の人が何を飲みたいかは関係ない。これは我々のためのビールなのだから(そして、まあ、あなた達も飲んでもいいけどね)
ここまでのビール好きが手間暇かけて作った自分達が飲みたいビールは本当に美味しく、毎回必ず数本購入している。Kooks Clubのイベントで一番初めに注がれたビールも Feel Güd (Munich Dunkel) だったので、自信作なのだろう。
今や飛ぶ鳥落とす勢いのHumble Sea Brewing Co。実際に訪れてみるとブリュワリーそのものはとてもこじんまりとしていて、Santa Cruzの太陽の下でゆったりとした時間を過ごしながらビールを飲むことができる。(季節によっては海風で寒いこともあるので上着は忘れずに!)
関連記事:
サンタ・クルーズの太陽での下で飲みたいHazy:Humble Sea Brewing Co. – 二周年記念
サンタ・クルズのビール旅 定番訪問:Humble Sea Brewing Co. / Sante Adairius Rustic Ales
米国サンタ・クルーズのビール旅 (1) - Humble Sea Brewing Co.
IBU Beer の Instagramはこちら: @ibubeer
IBU Beer の ブログはこちら: いつでもビールは旨い! - サンフランシスコでクラフトビール旅
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?