謎を解いていたらいつの間にか箱を買っていた人の話
今回は、謎解きの沼にどハマっているわたなべさんに「そこまで聞いてない!」というところまで、語っていただきたいと思います。
― まず、普段の業務はなにをしていますか?
印刷物に文字や画像をレイアウトしていく組版業務がメインです。たまにWEBサイトのデザインや図版制作も行っています。
印刷物はミリメートル、WEBはピクセルと使う単位が違います。なので2つの単位の間を反復横跳びして行ったりきたりする日々を送っています。ソフトの設定を変え忘れたまま作業していて「あっ 変えとらんやん!」となることもしばしば……笑
― 謎解き沼と言っていましたが、そもそも謎解きってなんですか?
端的に表すと「ひらめきや注意力・論理的思考、色んな試行錯誤によって解いていく暗号やパズルなどの総称」です。高度で特別な知識が必要な「クイズ」とは、一部組み合わさったものもあるものの、ほとんどの場合別のジャンルとして扱うことが多いです。
その中でも僕がハマってしまったのは【体験型の謎解きゲーム】です。「部屋に閉じ込められてしまう」「爆弾が爆発してしまう」といった危機的状況にプレイヤーが追い込まれ、そこから脱出する……という体裁で進められることが多く、世界観へ深く没入しやすいのが特徴です。
公演の形も様々で、広い会場で複数人でチームを組み解いていく「ホール型」、部屋に本当に閉じ込められて物理的に脱出する「ルーム型」、街や施設を巡りながら解いていく「周遊型」……などいろんなタイプがあります。
ー どうしてその沼にハマったのですか?
最初のきっかけは東京メトロでやっていた周遊謎「地下謎への招待状 2016」(2014年から開催されていてこれが3作目、通称「地下謎」)でした。母方の実家が神奈川にあり、年末年始に帰省した際に面白そうと思って、参加することにしました。これが沼への第一歩になるとも知らずに……。
そこからほぼ年イチペースで地下謎の「2017」「2018」や、同様に名古屋の地下鉄でも開催されていた「地下迷宮に眠る謎」(2018年/名古屋市営地下鉄の周遊謎)にも参加していきました。
そんな風に「謎を解きたい!」というよりかは「地下鉄でなんかおもろいイベントあるからやりに行こう」ぐらいの感覚でずっと過ごしていたのですが、2019年6月に潮目の変わる出来事が起きました。
それは「当時入っていた吹奏楽団のメンバーにルーム型の公演へ誘われて初めてやりに行ったこと」です。スタートした瞬間から全員の動きが俊敏すぎて呆気にとられましたが、地下鉄の時とも違った「ひらめきで解いていく快感」が楽しかったのをよく覚えています。
そこから一時期は毎週何かしらの謎解き公演に行っているくらいにすごい勢いで沼にハマり、今では延べ100公演以上の公演に参加してしまった立派な「謎クラ」(謎解き好きの人)になりました。
ー 謎解きってなんだか難しいイメージがあるんですが、簡単に解けたり成功できたりするものなのでしょうか?
謎一つ一つを取れば簡単なものから難しいものまで様々あります。全てがそうというわけではないものの、謎解き公演で成功まで辿り着くのは比較的難しいです。大半の公演は成功率が2割前後、難しいものだと5%を切るものもあります。
もちろんスタッフの方などからヒントをもらえるので初めての人でも楽しめます。ですが、最後の謎(いわゆる「大謎」と呼ばれるもの)は僕でもなかなか解けないですね……。
実はさっき出てきた、初めて行ったルーム型の公演は成功していたんです。あのときの成功体験が今日まで繋がっているのかもしれないですね。
これまでの参加公演はほぼ全て記録を取ってあるので、今回のお話を機会に全部見返してみました。成功率を見てみると、一時は落ち込んだものの現時点ではほぼ5割くらいといったところでしょうか。
ー なんと100公演以上も参加されているなんて……沼ですね。
最近なにか印象に残った公演はありますか?
直近だと「トラブルだらけのライブハウスからの脱出」です。
ストーリーはこんな感じです。
これを先日やってきたんですが、ま〜〜面白くて。ドタバタ・わちゃわちゃ感も最後に流れるロックバンド「ネクライトーキー」のライブ(映像)の盛り上がりも良かったですね!
やっていた会場がちょうど1週間前に夏フェスをやっていた幕張メッセだったこともあり、いろんなことをひっくるめてなんだかサ◯ソニを感じました。
またライブで流れたネクライトーキーの書き下ろし曲(下に貼っているMVのもの)も公演の雰囲気とマッチしていて最高でした。公演で流れなかった曲も含め、サブスクでネクライトーキーの曲を聴き漁ってしばらく余韻に浸っていました。
この公演はまだ詳細未定ながら全国でもやるようなので、もし機会があればやってみてほしいです。
ー 最近のもの以外でも印象的な公演はありますか?
2023年の夏に幕張メッセで行われた『終わらない夏祭りからの脱出』も印象的ですね。広い会場の中に「射的」「型抜き」「金魚すくい」「殺人事件」といったお祭りの屋台が並んでいたのも良かったのですが、衝撃的だったのは最後のチェックポイント。
この公演はネタバレが解禁されているので話せるのですが、1万人は収容できる広さのイベントホールを最後のチェックポイントでただ通るためだけに使っていたんです。以前の大規模な公演でもそうでしたが、大謎の規模がおかしいことがちょいちょいあるんですよね……笑
またこの公演をきっかけに色んな人と知り合うことになったという意味でも思い出深い公演です。
もうひとつ挙げるとすると、2020年から開催されている『びっくり謎工場からの脱出』でしょうか。どうあがいてもネタバレになってしまいかねないので細かいことは話せないのですが、ただただシンプルに机に置かれた箱から出てくる謎を解いていく公演です。それでも終始驚きの連続でした!
その公演の中で小さい箱が出てくるんですが「このくらい小さくて鍵をかけられる箱を車の中に入れておきたいんだよな〜」と思っていたところ、ファンクラブ会員向けに公演で使う箱が一式売り出されることになり。3万円とちょっと高かったんですが思わず買っちゃいました。
今ではその小さい箱はもちろん車の中に、大きな箱はこれまでの公演でもらったものをしまったり演奏会でスタッフをやった時は備品入れとして使ったり、その他の箱もそれぞれ活躍してもらっています。
ー きちんと使われているとはいえ、そんな高額な箱を買っている人なんてさすがに初めて見ました……。
友人からは「そういう小さい箱なんてホームセンターとか百均とかにもあるんじゃないの」と言われましたが、小さい箱はあっても鍵がかけられそうなものは探してもなかなか見つけられなかったんです。
それにあったらあったで面白くてネタになるし有効活用できそうだなという不純な動機で買いました。現にこうやってネタにできてますからね?笑
ちなみにこの公演は先日まで東京・原宿で再演されるなど時折またやっているので、もしご興味があれば参加してびっくりしてみてください。
ー 謎解きをしていてよかったなと思うことはありますか?
謎解きで、特に重要なのは「情報共有」と「役割分担」とよく言われます。誰かの持っている情報を使えば他の誰かの謎が解けるかもしれない、誰かが謎を解いている間に別の人が別の謎を解いておけば時間短縮になるかもしれない。これは謎を仕事/作業に置き換えても同じことが言えますね。例えば「この箱真後ろに置いておきますね」と声に出して伝えるだけでも立派な情報共有です。
それ以外にも探索力や注意力など、謎解きで鍛えられた考え方は仕事ないし日常生活に活きてくるんだな〜とよく感じています。
― わたなべさんが細かいところによく気づくのは、謎解きによって培われた能力だったと言うわけですね。なんだか納得しました。最後に今後やってみたいことなどあれば教えてください。
途中の成功率のところで触れましたが、いつ・どこで・どの公演に参加し・成功したかという記録がほぼ残っています。ここまでしっかり記録を取っているのは話を聞く限りあまりないらしく、せっかく弊社も大学IRなどの統計分析業務に力を入れているので、勉強も兼ねて分析できたらいいな〜と思っています。
そしてここまで読まれた謎クラの方は薄々勘づいたかと思いますが、僕の謎解きの大半が某1社に偏っています。よく「地方の現実」「地方格差」とも言われることもありますが、それでも地の利を活かして明治村の謎解きにも手をつけたりしています。あとは2024年の2月になって下北沢の某所へ行ったり……してみたら、デザインがどストライクすぎて思わずデザイナーを探し出してX(旧Twitter)でフォローしました。
こんな感じで機会があれば他の会社の謎解きもどんどんやってみたいですね。ぜひ誘ってください(逆に誘うかもしれませんけど)。
でも弊社の仕事柄、もしかしたら謎を解く側ではなく解かせる側(「キット」と呼ばれる謎解きで使うものを作る側)にいつの間にかいたりして……笑
って今さら言いますけどこんな長々話して大丈夫でした?笑
― 大丈夫です笑
次回の社員さんはどのような沼にハマっているのか楽しみですね。
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