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第一生命情報システム株式会社 古川秀俊氏に伺うWAS・MQ・Db2の魅力

今年、IBM MQとDb2は30周年。WAS(WebSphere Application Server)は25周年を迎えます。アニバーサリー・イヤーとして3製品に関わりのある方々へのインタビューを1年を通じて定期的に行っています。第3回目となる今回は、3製品をご利用いただいている第一生命情報システム株式会社 古川秀俊氏にインタビューを行いました。各製品の思い出や今後の期待などを伺いました。

古川秀俊(写真左)
2001年に第一生命情報システムに入社
入社時はクライアント系のアプリケーション基盤のSEとして勤務。
2004年にWeb系のアプリケーション基盤に異動となる。
この異動を契機に、WAS/MQ/Db2の製品に携わり、数々の開発案件や運用・保守を経験している。
2018年に現在のインフラ開発第三グループ長に就任し、引き続きマネジメントの立場としてWAS/MQ/Db2に関連した案件に携わっている。
岩品友徳(写真右)
2002年 IBMシステムズ・エンジニアリング株式会社(ISE)に入社、WebSphereの技術者としてキャリアを開始。大手銀行などのプロジェクトを経験。2012 年日本IBMに入社。WebSphereおよびコンテナ製品のテクニカル・セールスとして活動。近年は可観測性製品やAIOps製品を担当し、金融・保険のお客様システムの運用高度化をご支援している。

1. 今年MQとDb2が30周年、WASが25周年を迎えます。御社ビジネスを支えるITシステムにおいて、これら3製品をそれぞれどのようにご利用いただいていますか?

古川氏)
第一生命のオンライン・システムのフロントエンド基盤として、WAS・MQ・Db2を採用したWebベースの基盤システムを開発・保守・運用しています。
WAS/Db2のWebベースのアプリケーション基盤でありながら、IBMホストに対するアプリケーション・ハブ機能を持った基盤であることが特徴です。IBMホストへの電文変換を行いつつ、MQを利用してIBMホスト・アプリケーションとのトランザクション連携を行っています。
第一生命では約1,000万人のご契約者さまの情報をIBMホストで管理しています。

岩品氏)
第一生命様のビジネスにとって、最もコアとなるシステムでWAS・MQ・Db2をご利用いただいているということですね。

古川氏)
第一生命の内勤職が利用する事務系オンラインや、営業職が利用する営業系オンライン、ご契約者様が利用する顧客系オンラインの共通基盤となります。
事務系オンラインや営業系オンラインは、利用者が数万人、画面数が数千画面あり、WAS/MQのアプリケーション・サーバーは数十台あります。
画面数、トランザクション要件から見て分かるとおり、まさに第一生命の保険業務の中枢を担っています。

(対談中の古川氏)

2. 古川様はどの製品にいつ頃初めて関わりを持たれましたか?当時のロールや製品との関わり、その時の印象などをお聞かせください。

古川氏)
入社4年目の2004年に異動があり、前述のWebアプリケーション基盤の基盤担当者として携わりました。
当時は、WAS v5、MQ v5、Db2 v8という環境でした。最初はSE兼テスト環境保守等の役割を担っていましたが、初めて携わる製品ばかりでしたので、プロジェクトに携わっていたIBMの方から製品について教わってばかりでした。最初の印象は、WASは機能やパラメーターが多すぎて覚えられない、という印象でした。

岩品氏)
私も丁度この頃にWASを勉強し始めていましたので非常に気持ちがわかります。WASの管理コンソールでパラメーターを参照できるので、最初それぞれがどんなパラメーターなのか分からず、後になってどんな役割なのか気付くことも多々ありました。

 古川氏)
2004年にWAS管理者、2005年にDb2エンジニアのIBM資格を取得することで、徐々にスキルやナレッジを習得していきました。
2008年にWAS v6・MQ v6へのバージョンアップ、2011年にDb2 v9へのバージョンアップ、2012年にWAS v7・MQ v7へのバージョンアップ、2018年にDb2 v11へのバージョンアップ、2019年にWAS v9・MQ v9へのバージョンアップ等のプロジェクトにPMなどの役割で携わってきました。
また、 WASやDb2をベースにした製品である、ODM(*1)の基盤開発を2019年、BPM(*2)の基盤開発を2020年に稼働させるプロジェクトも携わってきました。
 
一時的に、別の製品を利用するプロジェクトに携わる時期もありましたが、振り返るとWASは他社のアプリケーション・サーバーと比べてもパフォーマンスに優れているなと印象を受けました。また、Db2は他社のデータベースと比べるとSQL規格にしっかりと準拠していることから、DBサーバーとしての役割がはっきりしていて、運用管理しやすく、安定的であるという印象を受けました。

岩品氏)
資格の取得やWAS・MQ・Db2の更改プロジェクトなどを通じてスキルやナレッジを習得されてきたご経験から、3製品の中でどれがスキル習得するのに難しいと感じましたか?
 
古川氏)
WASがパラメーターや機能の多さで一番難しく感じました。MQも最初はメッセージを届ける仕組みが分かりにくかった印象がありますが、MQ Explorer(*3)を使うようになってコマンドで何を実行しているのか分かるようになりました。Db2は安定稼働が特に大事な事もあって難しかったというよりも常に慎重に取り扱ってきた印象があります。

岩品氏)
参考として、これからスキルを身に付けようとしている方に向けて、どのように習得していくと良いかアドバイスをいただくことはできますか?

古川氏)
WASはパラメーターが非常に沢山あるので、最初から全部を一様に学ぶのは難しいと思います。最初は例えばスレッドやコネクション・プールなどのリソース管理周りから始めて、アプリケーションがどのように動いているか分かるところから入ると習得しやすいと思います。製品機能のところから入ると難しく感じるかもしれないです。

岩品氏)
システムのコアとなるリソース周りからはじめて、セキュリティーなどの製品の個別機能についてはその後に習得すると良いということですね。当時は、設計の段階でスレッドやタイムアウトなど、沢山のパラメーターを時間をかけて適切に設計する必要がありました。また、パラメーターは、エクセルシートで管理してもどんどん増えていきましたね。
古川様のような製品フィードバックを受けて、WebSphere次世代ランタイムであるWebSphere Libertyはパラメータは全てデフォルト値を持って、必要なパラメーターだけを書きかえる仕様になっていますね。最初の構築スピードやパラメーター管理の容易さが以前とは大きく変わっていますので、ぜひLibertyの活用も今後ご検討いただきたいです。

*1 ODM:IBM Operational Decision Managerの略。ルールに基づくビジネス上の意思決定の分析、自動化、管理を支援します。
*2 BPM:IBM Business Process Managerの略。包括的なビジネス・プロセス・マネジメント・プラットフォームを提供します。
*3 MQ Explorer: IBM MQ オブジェクトを管理およびモニターできるグラフィカル・ユーザー・インターフェース。

3. これまで様々なご経験をされている中で、WAS/Db2/MQ関連のプロジェクトで特に印象に残っているエピソードがあればお聞かせください。

古川氏)
2012年のWAS v7・MQ v7へのバージョンアップ・プロジェクトにおいては、サーバー(OS/ハードウェア)更改・WAS/MQのバージョンアップと同時に、サーバー数の適正化という対応を行ったことが印象に残っています。
営業職が利用する営業系オンラインについては、当時はWASのアプリケーションサーバーが50台以上ありました。これを、ガベージ・コレクション(以下GC)(*4)のチューニングや、スレッド・プールやコネクション・プールのチューニングを行い、サーバー台数を4分の1以下の台数にに適正化することができました。チューニング前の現状分析ではGC時間割合が10%を超過しており、特にGCのチューニングが急務でした。プロジェクトをご支援いただいたIBMの方からアドバイスをいただきながら、Mark&Sweepから世代別へのGCポリシー変更、サーバー数削減と同時並行処理数増加に合わせたヒープ・サイズ設計、アプリケーション部門と協奏した徹底的なキャパシティ・パフォーマンステスト、などを行い、GC時間割合は2%以下に抑えることでCPU使用率を抑制し、目標を上回るサーバー数の削減につなげることができました。
ご支援いただいたIBMの皆さんには感謝の思いを忘れることができません。

岩品氏)
当時アプリケーション・サーバーのスレッドのチューニングや、GCを短くしてパフォーマンスを向上させるというのは、まさに基盤エンジニアの腕の見せ所で、ワクワクする過程でもあり、一番きついところでもあると思います。古川様におっしゃっていただいたやりがいの部分、私も色々なプロジェクトでチューニングを経験してきたので共感できます。

(対談中の岩品氏)

古川氏)
裏でどういうパラメーターをチューニングして動いているか分かっているだけでシステムに対しての理解が違ってくると思います。何かトラブルがあった時に何を見ればいいか、どのパラメーターが怪しいかある程度見当をつけられるようになるので、プロジェクトの成功体験が自分の成長に繋がったと思っています。

岩品氏)
一方でWAS・MQ・Db2を長い間ご利用いただいている中で、ネガティブなエピソードもあったかと思います。なにかあればお聞かせください。

古川氏)
マイナス面の印象では、設計時の想定と比べて、測定結果のキャパシティ・パフォーマンスに乖離があったという思い出です。
WAS・MQ・Db2を採用したWebベースの基盤システムが稼働したばかりの頃は、EdgeComponent(*5)の負荷分散サーバーや、Db2のDBサーバーのパフォーマンスが、想定と測定結果に乖離があり何度もキャパシティ測定と評価を繰り返していたことが印象に残っています。私自身の経験としてはキャパシティ・パフォーマンスの重要性を実体験として学ぶこととなりました。その後の自分が担当するプロジェクトで活かせていると感じております。

*4 ガベージコレクション:プログラムが占有していたメモリ領域のうち不要になったものを自動的に解放する機能。GCポリシーにはgencon、balancedなどがある。
*5 EdgeComponent:ロード・バランシングやキャッシングなどの機能を提供するコンポーネント。

4. WAS/Db2/MQを実際に長くご利用いただいている中で、それぞれの魅力やメリットに感じる部分はどこにあるかお聞かせください。また、IBMの製品開発に対する取り組みやサポートについて感想をお聞かせください。

古川氏)
WASやDb2をベースにした新しい製品ラインナップもリリースされており、ODMやBPMを導入するプロジェクトでは、これまで培った経験やスキルを活かすことができました。慣れ親しんだスキルで幅広い領域に活用できる製品を提供いただけるのがありがたいと思います。
新しい製品に活用されるだけでなく、当社第一生命で20年近く稼働し続けているシステムにおいて、WAS・MQ・Db2のバージョンアップによる更改を繰り返しておりますが、機能を維持しながら、パフォーマンスも常に向上し続けているため、既存のアプリケーションを今も変わらず使い続けることができています。
ODMやBPMのような新しい領域に幅を広げつつ、既存の機能も変わらず維持・向上いただけることに、魅力を感じています。
また、WAS・MQ・Db2のプロフェッショナルなエンジニアの方が多く、長い期間高いレベルでサポートいただけることに感謝しております。

岩品氏)
ありがとうございます。IBM製品の多くがWASやDb2をベースにしていましたので、私もスキルを活かす機会が非常に多くありました。
 
いまとなってはDevOpsのような考え方は当たり前になりましたが、私は以前、第一生命様のシステムが素早いアプリケーション・リリースの仕組みを早い時期から確立していることに驚いたことを覚えています。アプリケーションをビルドすれば、開発から本番環境までアプリケーションのリリースが自動化されていることが強く印象に残っています。

古川氏)
事務系、営業系、顧客系の共通基盤であることや、アプリケーションの規模も大きいので関連するアプリケーションや人も非常に多いです。アプリケーションをデプロイするということが日常的に何回も発生しますので、早い時期から自動化していく必要がありました。運用設計は最初から関係者が多いことを意識して、自動化も含めて作り込んできました。そのため、日々の通常運用では定例的な運用はほとんどないこともメリットとして挙げられます。

5. 今後のWAS/Db2/MQ、IBMへの期待をお聞かせください。

古川氏)
新しい領域に製品ラインナップを広げつつ、既存の機能も変わらず維持・向上いただけることを、これからも期待したいと思っております。
長く製品を使い続けると、エンジニアの育成が難しくなってくるという現状もありますので、WAS/Db2などをベースにしたPaaSのような、マネージドサービスの提供などがあるとありがたいと思います。既存システムの資産を活用しつつ、パラメータ設計等の製品スキルを低減化にもつなげたいと考えております。また、今後コンテナやマイクロサービス化を図る際に、WASやMQの既存アプリケーションからのリファクタリング方法や設計方針に関するソリューションを提示いただけると助かります。
オープンソースや他のベンダー製品も含めて適切なソリューションを提示いただけるところもいいところだと考えていますので引き続きお願いしたいと思います。

岩品氏)
古いものをきっちりサポートしつつ、次世代技術への対応もご支援できるのが、IBM製品のいいところかなとも考えます。私が担当している運用高度化製品も、IBM製品だけでなく、他社の様々なテクノロジーへの対応も進めてきておりますので、色々な場面でご一緒できると考えております。
今後も様々なチャレンジでご支援させて頂きたいと考えておりますので引き続きよろしくお願いします。

(最後に古川様と第一生命様を担当してきたIBMメンバーで記念写真)

インタビュー・執筆:アニバーサリー広報チーム(Data, AI and Automation 事業部)
撮影:鈴木智也(Data, AI and Automation 事業部)

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