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DB2エキスパート座談会 ~ ClubDB2の舞台裏とDb2展望 ~

今年、IBM MQ と Db2 は 30 周年。WAS(WebSphere Application Server)は 25 周年を迎えます。アニバーサリー・イヤーとして 3 製品に関わりのある方々へのインタビューを 1 年を通じて定期的に行っています。今回は、Db2のプリセールスエンジニアのご経験がある3氏にDb2の思い出や今後の期待などを伺いました。

下佐粉 昭 (@simosako) (写真右)
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
シニアソリューションアーキテクト (アナリティクス)
AWS ではデータレイク、データウェアハウス、BI 等アナリティクス領域専門のエンジニアとして活動。分析システムを AWS 上で稼働させるための技術支援を行いつつ、オンラインセミナーやイベントを通じて、新しい考え方や技術を広くを伝える活動をしている。最近は「週刊 AWS」で、AWS の最新情報を伝える活動も行っている。プライベートは完全なインドア派でスポーツ観戦・観劇・絵画や映画の鑑賞と体を動かさないことに時間を費やしているが、そろそろ運動する習慣を作らないとヤバいのではと焦る日々。

野間 愛一郎 (写真左)
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
シニアソリューションアーキテクト主に製造業のお客様を担当するソリューションアーキテクトとして活動。専門分野はアナリティクスやデータベース領域であるが、お客様の多種多様な要件に合わせて生成系AIから動画ストリーミングまで幅広くAWS上にソリューションを構成するための技術支援を行っている。個人的な最近の流行は下町商店街を食べ歩きする事とヨガとアブローラー(半年間続いている)

岡口 純子
日本アイ・ビー・エムに入社後、流通・サービス業界のお客様担当 SE。
インフラチーム、アーキテクトとして SI プロジェクトにてデリバリー実施。2000 年からDB のテクニカルセールスとして様々な業種のお客様に対して数々の提案、ベンチマークを実施。ボランティアの DB 勉強会 ClubDB2 を初期メンバーとして立上げ、主催。現在はData and AI 領域でのテクニカルセールス、アーキテクトとして提案活動、販促、技術支援を担当。

1. IBMでのDb2との関わりと経歴をお聞かせください。

(丹羽さん)まずはIBMでのDb2との関わりと経歴について、下佐粉さんから教えていただいてもよろしいでしょうか。

(下佐粉さん)私は2001年2月に日本IBMに中途で入社しました。最初の配属先はソフトウェア事業 DB2 UDB(ユニバーサルデータベース)の部門で、DB2のpre-sales エンジニアとして仕事をはじめました。私自身はOracleの経験は若干あったもののDB2の経験はゼロだったので、急いでキャッチアップするのが最初の仕事でした。当時はDB2 UDB v7が出たばかりというタイミングで、資料もまだv5ベースのものが多かった頃でした。DB2 UDB + AIX + HACMP が鉄板構成で、お客様と仕事をしていく中で徐々に慣れていきました。DB2のknowledgeが溜まってきた時には、インターネット上にあまりDB2の情報がないのと、自分の備忘録のために、ブログを書こうと思ってアンオフィシャルなDB2 Blogを書き始めました。その後DB2の部門を離れてソフトウェア・アーキテクト職などに異動することになりますが、そこでも案件でDB2と関わることが割と多くありました。2015年の2月から現職のAWSに転職しました。

(下佐粉氏)

(丹羽さん)ありがとうございます。元々IBMに入社される際には、Db2に興味があったのですか。

(下佐粉さん)Db2に興味があったというよりは、当時オープン化の流れがあって、IBMのLinuxに対しての投資は結構ニュースになるぐらいで、私もオープン系やLinuxの仕事がしたいと思って入社しました。

(岡口さん)今だと技術的な情報を知りたいと思ってブラウザーで検索するとQiitaがよく上にくると思いますけど、当時アンオフィシャルなDB2 Blogは、オフィシャルなDb2のサイトより上位に来ていましたよね。(笑)

(下佐粉さん)そうですね。ほぼオフィシャルでしたね。

(岡口さん)ほぼほぼオフィシャルなBlogでしたよね。アンオフィシャルなBlogが検索上位を席巻していました。(笑)

(野間さん)アンオフィシャルにこだわらないと好きなことが書けないからね。

(下佐粉さん)Db2のアンロードの方法とか検索すると大抵私の書いたブログが上に出てくるみたいな感じですね。アンオフィシャルにしておくとIBMの立場ではなく喋れるので、周辺の技術も含めたりできるんですよね。Db2ではないDBのことを書けたりするのもアンオフィシャルにこだわった理由でもありました。

(丹羽さん)ありがとうございます。最近では、下佐粉さんのようなフラットな視線での情報発信活動をオフィシャルな活動として取り組み始めていて、多くの社員は、Qiitaで情報発信をしています。
それでは続けて野間さんよろしいですか。

(野間さん)私は2002年7月に日本IBMに入社しました。当時はWEBアプリを作っていたので、WebSphere関連の採用で応募しましたが、データベースをやってみませんかという話をもらって、下佐粉さんと同じソフトウエア事業DB2の部門に配属されました。DB2のプリセールスエンジニアとして色々と初めてだらけの状態でスタートしました。製品ベンダーの立場でデータベースを深掘りして様々なお客様を担当しました。途中担当する製品の幅は広がっていきましたが、ずっとDB2に関わってきました。IBM Cloudが立ち上がってきた頃にはDb2 Warehouse on CloudやIBM CloudantなどIBM Cloud上のDBサービスも担当しました。その後、2019年6月から現職のAWSに転職しました。

(野間氏)

(丹羽さん)ありがとうございます。具体的にどのような製品に担当が広がっていきましたか?

(野間さん)そうですね、OmniFind ※1 やNoSQL製品などを担当しました。あとはデータベースに関わっていると、CognosやSPSSの話も出てくるので分析系や、レプリケーションやフェデレーションなど知識の幅が広がりました。

(下佐粉さん)少し余談になりますが、当時IBMグローバル全体でソフトウェア・ビジネスに大きく舵を切り始めた時期でした。ソフトウェア事業への投資が毎年進んでいて、Cognos ※2 やDataStage ※3 などの新しいソフトウェアが増えて、我々が担当する製品が増えていく時期でもありました。

(野間さん)昔は検証センターのような施設が渋谷マークシティにありました。IBM製だけでなく他社のサーバーも配置して、ソフトウェアの検証をお客様やパートナー様とできる環境がありました。今ならクラウドで検証するものを実機で置いて、勉強会やコミュニティの場所としてもこの施設をかなり使っていましたね。

(丹羽さん)ありがとうございます。

※1 OmniFind:IBMが開発した企業向けの全文検索およびテキストマイニングソフトウェア。
※2 Cognos:企業にある様々な情報からビジネスの状況や課題を可視化・分析できるBI(ビジネス・インテリジェンス)ツール。
※3 DataStage:ETLツール

2. ClubDB2 立ち上げメンバーとして

(岡口さん)ClubDB2は、2006年から約10年間、月に2回金曜日の夜にボランティアによる勉強会を開催してきました。ClubDB2の立ち上げメンバーがこの3人になりますが、立ち上げのそれぞれの想いとこだわりについてお聞かせください。資料を掘り起こしてみたら合計210回開催していました。色々な内容を取り扱っていて、Db2以外にテープや他のツールの話もたくさんしましたね。

(下佐粉さん)月2回のペースでよくやってきましたよね。他のデータベースもやっていましたね。

(左より 丹羽氏、岡口氏、下佐粉氏、野間氏)

(岡口さん)他のデータベースを使っている人たちとディスカッションしたり、Watsonとかその時の流行りのテクノロジーの講師を呼んでの勉強会もしていましたね。10年間続いたClubDB2のそもそもの発起人は野間さんでしたが、どのような考えで始めようと思ったのでしょうか?

(野間さん)これは自分自身がDB2を担当するようになって、勉強や情報交換する場がないとか、ユーザー様と会話する場がないと感じて、コミュニティみたいなものがあったほうがいいと思って、立ち上げようと思いました。公式にコミュニティ活動をしようとすると、IBMユーザー会のように事務局を作る必要があって、ただ単純に技術者が集まって勉強する場を持ちたかっただけなので、自分たちでやるよみたいな感じで始めました。

(下佐粉さん)それでClubDB2になったんですよね。まさか10年やると思っていませんでしたね。

(岡口さん)そうそう(笑)夜やろうとしていたから、最初ClubDB2 ナイトサークルが正式名でしたね。私の場合はDB2のプリセールスで、障害などが起きてそのプロジェクトの中に入ることがありましたが、現場にはIBM社員はPMではいますけど、DBの技術者はほとんどがパートナー様でした。社内にはDB2の技術情報が当時からありましたけど、パートナー様、現場の人たちまでなかなか最新情報が提供されていませんでした。現場の人たちに細かい技術情報が伝わらないと障害のもとにもなるので、情報を伝えたいけどオフィシャルなWEBサイトに自由に情報を載せることもできませんでした。

(下佐粉さん)ネガティブな情報とかは掲載しづらいですよね。

(岡口さん)ネガティブな情報はオフィシャルなWEBサイトには中々出せないので、注意事項を直接伝えたいと思っていました。現場の人たちは平日だと色々忙しいだろうから、金曜日の夜にこだわって現場の人が参加できる時間に開催しようと思っていました。

(下佐粉さん)そうですね、岡口さんはプロジェクトの火消しの人を助けたいみたいな思いがすごく強かったように思います。

(岡口さん)下佐粉さんはどうですか?

(下佐粉さん)そうですね。みんな少しずつ視点は違いますけど、共通しているのは情報を外に出したいことだったと思います。IBMの中にたくさん技術情報があるけど、外部に出ていないので、それをどうにかしてノウハウを出すというのは共通した悩みでしたね。
当時は技術情報がまとまっているISE(IBM Japan Systems Engineering Co.,Ltd.)のTHE技術というデータベースがあって、これさえ見れば大体全部分かりました。このおかげで自分がどれだけ成長できたかみたいなことはありますけど、これも社内に閉じた情報でした。
私は初心者向けの情報がIBMに足りていないと思って、多くの人にDB2の良い技術を知ってもらって、ビギナーに一段上がってもらう、技術を広く裾野まで普及したいという思いがあったので、最初の頃は特に、初心者向けの講座を担当することが多かったと思います。

(岡口さん)そうですね。でも実は一番人気の講座でしたね。

(野間さん)あとこのコミュニティに誘う時に、仕事としてという感じだと続かないので、同じ思いでノリが一緒な人が集まった感じですね。

(岡口さん)そこは結構ボランティアにこだわりましたよね。

(野間さん)会社のオフィシャルなイベントにしないことで動きやすかったこともありますね。

(下佐粉さん)会社の仕事にしていたら、月2回は絶対できなかったと思います。あえて「オフィシャルな仕事」にしないのが結果的にですが良かったと思います。DB2以外の人もくるエンジニアコミュニティにはならなかったと思いますから。

(岡口さん)ここまでが立ち上げの思いを聞いてきましたが、10年もやっていると色々な面白いネタがあったと思います。何か印象的なエピソードはありますか。

(下佐粉さん)ユーザーの方に発表してもらう回があって、失敗談は聞いている方も話している方もものすごく盛り上がります。その中でたくさんありますけど、やはり「管理GUIからのDBドロップ」の話が最も記憶に残っています。ある会社でDB2を使っていて、上司が先に帰られてその後、急にDBが止まったという障害情報が回ってきました。みると、DBは停止していて、さらにデータもログもなくなっていました。どうやら上司が管理GUIからログオフする代わりにドロップを押してしまってデータベースをドロップしていたという事故が判明した話です。

(丹羽さん)そんな簡単にできるんですか?

(岡口さん)簡単にできてしまいましたね。

(下佐粉さん)その時のGUIと翻訳が良くないこともあって、UNCATALOGとDROPが除去と削除みたいな感じで区別がつきにくかったんですよね。上司は接続設定を削除して帰ったと言っていたみたいですけど、データ消えてますみたいな感じで、その時点で会場はもう大爆笑でした。その後どうしたかというと、残っていたアプリログから社員が何とかデータを入れ直して必死に一晩で復旧したようでした。

(岡口さん)そうですね、DBをドロップするとログも消えてしまいますからね。バックアップがあっても戻せないんですよね。アプリ側で取ったログからもう一回INSERT UPDATEを掛けたそうです。

(下佐粉さん)アプリログ残していて良かったですね〜みたいな話になりましたね。野間さんはどうですか?

(下佐粉氏と野間氏)

(野間さん)私はこの勉強会に最初はDB2扱っている人だけが参加していましたけど、データベースの勉強や、他のネタが面白いからと言ってもらえて、DB2触ったことない人や、MySQLやOracleしか触ったことがない人など色んな人が参加してくれたこと、あと色々な経験を持っている参加者間でコミュニケーションを取るのもいいねと言っていただいたりして良かったなと思っています。
例えばDb2の新機能の検証をして発表して頂いたり、全然DB2使ったことないけど、使ってみてどうだったかを発表してもらったのはすごく面白かったなと思いますね。

(岡口さん)続ける上でもオープンソースの人達が参加してくれたから、コミュニティの続け方とか、作り方とか、懇親会までがコミュニティだよ、など色々運営の仕方のアドバイスもいただきましたね。

(下佐粉さん)繋がりができましたよね。

(野間さん)横繋がりができたことはこの会をやっていて良かったなと思う一つですね。

(岡口さん)全くDB2を知らない人やオープンソース・コミュニティなどによく参加している人が勉強会に来てくださって、こういう風にライトニング・トークするんだよとか教えていただきました。ライトニング・トークの時間を知らせる為のドラ代わりにトライアングルを貸して頂いたりとか、色々ありましたね。

(野間さん)PostgreSQLやっている人がDB2のBLU Accelerationの検証をしてくれたこともありましたね。

(岡口さん)DB2の新機能とPostgreSQLとのベンチマークをクリスマスの発表会でお願いして、試用版のDB2で環境を準備いただいて本当に検証を個人でやってもらいました。

(下佐粉さん)ありがたかったですね。

(岡口さん)でも、ベンチマークはさすがにかなり過酷だったみたいで…無茶振りしました(笑)

(野間さん)それで多分人も集まってまあまあ盛り上がって、図々しくもベンチマークをお願いしますとか、頼めるようになってくるとこっちも度胸がついてきて、ブログや本を書かれている有名な方に一回勉強会で喋ってもらえませんかと突撃でメールして承諾いただいたこともありましたね。

(岡口さん)ネットで有名だけど全く知らない接点がない人に講師をお願いしていましたよね。

(野間さん)ClubDB2で飲み会があるんですけど、一緒に行きませんかとか、結構強引に誘って色々な企画をやっていた感じです。

(下佐粉さん)すごい野間さんの突撃力(笑)

(野間さん)Db2の勉強会の枠を越えてデータベース・コミュニティみたいな感じになっていったのは面白かったと思います。

(丹羽さん)当時オンラインで勉強会を開催することはなかったですよね?

(下佐粉さん)基本的にオンラインはありませんでしたが、大雪でみんなが来られなくなった日があって、当時はYouTubeではなくてUSTREAMで配信したことがありました。

(岡口さん)人気の回の時に大雪警報が出て、金曜日の夜に渋谷に来てもらうのは過酷すぎるので急遽USTREAM配信することにしました。それでも渋谷の会場まで来ていただいた方もかなりいて、さらに懇親会までしましたね。勉強会自体のキャンセルも検討したのですが、外部講師の方に前日にホテルを予約したので懇親会まで参加出来ますと言っていただいて、そこまで言われたらこれはキャンセルしないで私たちもやりますみたいな感じでしたね。

(野間さん)全然DBの話じゃないですけど、懇親会までが勉強会みたいな感じで、勉強会の途中で参加人数募って、その後予約するのが運営側としては大変でしたね(笑)

(岡口さん)他のコミュニティの運営を見ると、大体申込み時に懇親会まで出るかどうかチェックするようでしたが、それだと初参加の方の敷居が高く、その場の雰囲気で参加したいと思う人が出られないのは勿体無いなと思い、渋谷の街は懐が深いので、その場で参加を決めてもらおうと思っていました。4人から30人くらいまで参加人数が毎回違って、スタッフ側は大変ですけど、その場で出席をとると、みんなが手を挙げ始めてどんどん増えてきましたよね(笑)

(野間さん)2週間ごとに違うテーマを考えることや集客はもちろんですが、会場の確保もすごく大変でした。ベンチャー企業などの会場をお借りしたりしていた頃もありました。

(下佐粉さん)流浪の民みたいに毎回場所が変わっていましたよね。本当に善意で、無料で貸していただきましたね。

(岡口さん)講師と、中身と、会場と、懇親会も全部セットで企画するのをやっていましたね。ベンチャー系や人材派遣系の会社の会場をお借りしたり、参加者の方がうちの会社の会議室を貸せますよと言ってくれる時もありました。会場を探しながら色々なところを借りていましたね。

(野間さん)あ、そうだ。ClubDB2だけに渋谷の本当のクラブを借りて勉強会をやったこともありましたね。

(岡口さん)そうそう、本当のクラブでね。あの煌めいた…

(下佐粉さん)ミラーボール!そこでDB2のライトニングトークやりましたね。

(岡口さん)そうそう、監査ログやワークロード管理について話すとかね。クリスマスパーティーをそこでしましたね。

(野間さん)そういうのもなんか面白かったですね。

3. 今でもDb2には関わっていますか?

(岡口さん)AWSに転職されてからも下佐粉さんにはClubDB2で講師をしていただいたことがありますね。今もDb2に関わることはありますか。

(下佐粉さん)私は今データ分析周りを専門としているので、AWSでDb2を使いたいというお客様がいた時は、どのようにDb2をAWS上で動かすかのご支援や、オンプレミスからAWSへの移行案件などで、Db2に関わることがあります。Db2はUniversal Databaseが名前に含まれていたこともありますが、基本的にどこのインフラでも動きます。IBMソフトウェア稼働のCertified Cloud としてAWSがリストされていて、多くのIBMソフトウェアをAWSで動かすことが可能になっています。Db2はいろいろなプラットフォームで動作するので、クラウド時代に環境の選択肢が多くていいですよね。野間さんはどうですか?

(野間さん)私は今製造のお客様中心に担当していますが、製造業ではDb2を使っているお客様が多いです。オンプレミスからAWSへの移行案件や今お使いのDb2との連携でDb2の話しが出てきます。昔自分が関わったDb2のシステムがあると大事に移行したいと思ってしまいますね(他の案件も大事に仕事しています(笑))

(一同)(笑)

(丹羽さん)ClubDB2で関わった人で実際にお客様やパートナー様でお会いしたことはありますか?

(野間さん)AWSの目黒オフィスにスタートアップを支援する施設があって、そこでAWSアカウントをお持ちの方の相談にのっている際に、「ClubDB2に行ったことがあります。」と何回か声をかけられたことはあります(笑)

(下佐粉さん)AWSでDb2のプロジェクトに入ると、かなりの確率でプロジェクトメンバーの方から「以前ClubDB2に参加しました」と言われますね。

(岡口さん)そうですね。私もお客様先に行ってパートナー様が参加していましたって言われることが多いです。

(丹羽氏と岡口氏)

4. Db2も進化し続けていますが、感想や今後の期待など をお聞かせください。

(岡口さん)PaaSで動いているDb2 Warehouse on Cloudの第三世代が出てきたのですが、なんとAWSが先に第三世代に変わっています。第三世代の一番大きい変更点というか新機能が、表スペースのオブジェクト・ストレージ・サポートです。今までデータの保管場所はブロック・ストレージに保管していましたが、オブジェクト・ストレージ上のファイルは外部表として扱っていました。今回、DBのユーザー・データそのものがオブジェクトストレージ上に格納されるというのが一番大きな変更点です。従って、今まで大量データをブロック・ストレージに格納してコストが高くなってしまうところを、低コストのオブジェクト・ストレージに格納することでコストの最適化が図れるようにしたことが一つ目の大きい点です。
二つ目が今年新しくwatsonx.dataというブランドを立ち上げたのですが、これはレイクハウス・ソリューションとして、Icebergというオープンなテーブルフォーマットをサポートします。エンジンはオープンソースのPrestoで、オブジェクト・ストレージ上にあるParquetのファイルに対してSQLで検索ができるようになるソリューションで、これと連携をしてDb2からダイレクトにwatsonx.dataが持っているレイクハウス上のParquetファイル、Icebergテーブルに対してダイレクトに検索もできますし、テーブルも作れます。従って、Db2のデータをオブジェクト・ストレージ上のデータレイクにコピー・移動するのもSQLで簡単に出来ます。よく使う直近のデータはDb2のローカルに持ち、アーカイブしたオブジェクト・ストレージ上にある過去データとJOINするというのも簡単に一つのSQLできるようになります。データの置き場所をコストと性能に応じて選択することで、システム全体のコスト最適化やデータ移動コストを減らすことが出来ます。オブジェクトストレージの性能的な課題はNVMeのキャッシュを最大限に利用することで今まで以上に性能向上するケースもあり、全く新しい構成になっています。この第3世代のDb2 Warehouse on CloudがIBM Cloudよりも先にAWSに出てきました(笑)。更に、東京でもサービス開始していていますので、日本のお客様でもすぐにご利用いただけます。こんな感じで最近のDb2も進化しています。

(下佐粉さん)今岡口さんの説明でDb2 Warehouse on Cloudとwatsonx.Dataの連携の意味がわかりました。今の私の専門はデータレイクになりますが、今のデータレイクのトレンドは言っていただいた通り、オブジェクト・ストレージにデータを蓄積して色々なところからアクセスする構成で、クラウドに分析環境を作ることがトレンドになっています。そこにDb2が対応してきているのは興味深いですね。トレンドのデータレイク上のオープン・テーブル・フォーマットであるIcebergをサポートしていることもDb2らしいと思います。レガシーでも動くけどクラウドの最新技術にも全方位的に対応しているのがDb2らしい進化だと思います。

(岡口さん)Db2は昔から結構トレンドにいち早く対応してきていますよね。XML DBもそうでしたし。

(野間さん)DB2 バージョン8のチューニングを自動化するオートノミック機能も結構先に出していましたね。非構造化データや半構造化データ、JSONやHTAP ※4 、クラウドへの対応も早かったですね。その時代のニーズを先取りして柔軟に対応してきていることがすごいと思います。

(下佐粉さん)こういった素晴らしい機能をどう知ってもらうかが課題ですよね。

(岡口さん)そうですよね。もっとDb2の良さを広めていきたいですね。

(野間さん)AWSとDb2と言えば当時Db2 Warehouse on CloudをAWS上で稼働させるのに、私がAWSに詳しくなくて、海外のエンジニアとのVPC(Amazon Virtual Private Cloud)等でのやり取りに苦労したことをよく覚えています。

(下佐粉さん)IBMがちょうどクラウド上の Db2 サービスを増やしていた時期で、私もDb2のブログにAWSで稼働するDb2サービスのことを書きました。

(野間さん)途中でNetezzaとかも入ってきて、Netezzaの考え方をまたDb2に実装して、トラディショナルなRDBの世界に新しい要素を次々に取り入れてきましたよね。

(岡口さん)新しい要素で言うとWarehouseだけではなくてpureScaleもありますね。

(野間さん)私はpureScale案件に相当関わってきたので、メインフレームの技術をソフトウェアで実装して、あれがAWSで動くのはすごいですよね。

(下佐粉さん)オープン系に実装しなおしたというのが多分正しいと思いますけど、pureScaleがAWSで動くようになりましたね。元々はInfiniBandでないと動かないなど色々と制約がありましたが、少しずつ改善されて普通のTCPでも大丈夫になって、さらにAWSでも動くようになりました。あのpureScaleがAWSの上でも普通にIBMサポートの範囲で動かせるというのがすごいですよね。

(岡口さん)そうですね。ノード間通信というかネットワークがすごく重要で、メインフレームはハードウェアとセットですからね。それをオープン系のソフトウェアで実装しているテクノロジーなので、結構大変だったと思いますけどクラウドでも動くっていうのがすごいですよね。

(下佐粉さん)AWSの上でpureScaleの大規模なクラスターが動くとかあればぜひサポートしたいし、増やしていきたいなと思っています。

(岡口さん)是非お二人がAWSでサポートしていただけるとすごく安心なんですけど(笑)

(下佐粉さん・野間さん)頑張ってサポートしますよ。

(岡口さん)ありがとうございます。そういえば、Amazon RDSでもDb2が出てくることになりましたね。

(下佐粉さん)先日のイベントで、これまでのRDSのAWSサービスのOracle、SQL Server、MySQL、MariaDB、PostgreSQLに新たなデータベース・エンジンとしてDb2版RDSのリリースが発表されました。AWSとIBMがコラボしてサービス開発したものです。これが出てくるとインストールの作業もなくなるので、マネジメントコンソールから操作して少し待つとDb2 がAWSのVPCで立ち上がってくることになります。よりAWS上でDb2が使いやすくなりますし、私も技術支援する機会が増えると思います。Db2の便利な機能をどんどん使ってほしいですね。
少し余談になりますけど、これはマネージドサービスなので、オペレーション込みになります。バックアップをとっていないデータベースが世の中に結構多いので、バックアップをとってくださいとこれまで何百回も言い続けてきましたが、ユーザーが何もしなくてもバックアップを取るので事故が減るのがいいと思います。

(岡口さん)マネージドの良さですよね。AWS上でDb2をフルマネージドで使いたいというお客様は結構多いですか?

(下佐粉さん)AWSは基本的にお客様のリクエストでサービスを作る会社なので、Db2のRDSが出てきたのはそれだけリクエストをいただいたということだと思います。

(野間さん)ニーズが多かったということですよね。

(岡口さん・下佐粉さん)これは乞うご期待ということで。

(丹羽さん)本日は貴重なお話をいただきありがとうございました。

※4 HTAP:OLTPワークロードとOLAPワークロードの両方を処理するデータベース。
※ Db2は2017年DB2から名称変更していますが、ClubDB2の名称 および当時のDB2はそのまま、最近の製品としてのDb2は小文字で記載しています。

(記念写真:左より 野間 愛一郎氏、岡口 純子氏、下佐粉 昭氏、丹羽 輝明氏)

ファシリテーター:丹羽輝明(Data, AI and Automation 事業部)
執筆:アニバーサリー広報チーム(Data, AI and Automation 事業部)
撮影:鈴木智也(Data, AI and Automation 事業部)


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