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【解説】広島叡智学園中学校の作文って、どんな問題?②(2019年_適性検査B)

※2021/08/09:記事内容の更新
※2023/07/16:下記追記
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こんにちは!公立中高一貫対策のiBASEです。
今回は、全国的にも注目度の高い「広島叡智学園中学校」の適性検査B(文系分野・作文)の問題について解説・分析を行います。

今回はその第2弾!前回の記事では出題の内容を概観しましたが、今回は国語分野を扱う【大問1】について、より詳しく見ていきましょう。


検査B_大問1の出題

1.「ある文章を読んで筆者の主張をまとめる(読解と要約)」と共に、2.「それに対する自分の考えを述べる」という、公立中高一貫校の適性検査としてはおなじみのパターンです。2019年度(開校初年度)では、以下のような出題がなされました。

次の文章は、野中健一さんが書いた「虫食む人々の暮らし」の一部です。これを読んで、あとの問いに答えなさい。(※文章は著作権の都合上、省略)
(問い)
あなたは、この文章を通して、筆者が主張したいことは何だと考えますか。また、筆者の主張に対して、あなたはどのような考えをもちましたか。次の条件にしたがって書きなさい。
(条件)
・この文章を通して、筆者が主張したいことを書くこと。
・筆者の主張に対する自分の考えについて、これまでの経験や学習内容などから具体例をあげて書くこと。
・300字以上400字以内にまとめて書くこと。

0.答案の構成

原稿用紙1枚分の分量です。はじめの50字~100字程度を使って、筆者の主張をまとめましょう。次に、端的な一文で、筆者の主張に対する自分の意見を述べます。残った文字数を使って、自らの主張を補足し分かりやすくするための具体例(これまでの経験や学習内容など)を書きましょう。

1.読解と要約のポイント

課題文は「虫食む人々の暮らし」からの抜粋。文章量としては、他府県の中学校と比べて長くはなく、むしろ短いぐらいの分量でしょう。一方で内容については、きちんと読解のトレーニングを積んでおかなければ、正しく読み切ることがやや難しい内容でした。

==課題文の”ざっくり”解説==

題材は、「虫を食べること」について。日本では、虫を食べることが「気持ち悪い」とか「どうせ不味いのだろう」とか、あきらかに昆虫食そのものを”劣った文化”として捉える傾向にあります。【具体例】

しかし、異質な文化や価値観を不確かな根拠でひとくくりにすることはよくありません。個人の嗜好や価値観は、地域社会の中で共有されています。自分とは違う嗜好を持つ人に出会ったときは、「なぜ?」と考えてみる。そうした疑問が、その背景にある社会や文化を考えるきっかけになるのだと、述べられています。【主張・考え】

==============

出題では「筆者が主張したいことは何だと考えますか」と問われているため、上記解説の②「しかし」以降の内容を端的にまとめることが求められています。

と、簡単に言いましたが、トレーニングを積んだ生徒でも、これは結構難しい。その要因は……

■「虫を食べる」「昆虫食」という具体例が奇抜で印象に残りやすいこと。(=インパクトがあり面白い)
■段落分けが少なく、主張が書かれたまとまりを読み取るのが難しいこと。

国語の読解の基本として、「抽象:筆者の主張や考え」と「具体:主張を分かりやすく伝えるための例」をきちんと分けて読み解くトレーニングが必要です。一般的な中学入試国語では、段落ごとに明確に「抽象⇔具体」が分けられていることが多いため、そうした段落読解が容易になるのですが…。

今回の出題では、ずっと連続する「虫」の話の中に、要所要所で「価値観の多様性と背景にある文化」の話が登場します。トレーニングを積んでいない受験生の多くは、「これは虫を食べることについて伝えている話だ!」と思ったことでしょう。しかし、そう捉えた答案の多くは、大幅に減点を食らったのではないかと予想されます。

そうではなく、これは、「虫」の話を通して「価値観や文化的背景」について述べられた話なのです。虫を食べる話はとてもインパクトがあり、読後すぐは記憶に残りがちですが、あくまで「具体例」に過ぎません。それに気づき、虫の話を排除して主張をまとめられたかどうか、が、最も大きな合否の分かれ目となったことでしょう。

2.自分の考えを述べるポイント

そうした読解を経て、筆者の主張に対する自分の考えを述べなければいけません。改めて、課題文で述べられた筆者の主張を、まとめておきます。

異質な文化や価値観を不確かな根拠でひとくくりにしてはならない。個人の嗜好や価値観は、地域社会脈の中で共有されているので、自分とは違う嗜好を持つ人に出会ったときは、「なぜ?」と考えてみる。そうした疑問が、その背景にある社会や文化を考えるきっかけになる。

さて、これに対する意見を述べよ、というのが出題者からの指示ですが…
これは、大人でも難しいと思います。受験生が限られた時間の中で対応するために、2つのコツと対策をカンタンにご紹介しておきます。

①筆者の主張に【賛成⇔反対】かを述べ、意見を作ろう
最も簡単な方法です。筆者が述べている意見に対して「賛成」なのか「反対」なのか、立場を明確にするだけでも、立派な主張の表明です。今回の題材の場合、「反対」の立場を取ることはなかなか難しいでしょう。多くの受験生が「筆者の意見に賛成です」という立場を取ったことが予想されます。

②「具体例のストック」をたくさん作ろう
上記の通り、自らの主張で他の受験生と差をつけるのが難しい問題です。よって、それを支える具体例の内容が、合否を分けるポイントとなります。公立中高一貫校入試では頻出の、具体例を書かせる作文。何も突飛な体験談やユニークな経験が求められているのではなく、あくまで主張に対して論理的に成立しているか?が、採点の際のポイントです。

今回の題材で言えば、
■自分とは異なる嗜好や価値観に出会った経験が述べられているか
■その価値観にある社会的な背景に対する考察が述べられているか
■自分との違いを乗り越え、相互に理解し合うことのメリットが、具体例の中で述べられているか

の3点が、採点の際には大きな要素となるでしょう。

限られた時間の中で、題材に即した具体例を「その場で思いつく」ことは、小学6年生にとっては至難の業です。そこでiBASEに在籍する生徒の皆さんには、全国の公立中高一貫校で頻出されるテーマについて作文のトレーニングを積み、ある程度の「具体例ストック」を1年かけて作っておいてもらいます。

出題のテーマは学校のビジョンや校訓、入学後の活動の内容にある程度関連することも多く、毎年直前期には、iBASE作文チームが作成する予想問題にも取り組んでもらっています。

たとえば、テーマとしては「リーダーシップの在り方」「多様性(異質なモノの理解)」「コミュニケーション・協働力」「国際性(日本と海外の関わり)」「探究心・研究力」…などが定番。今回で言えば「多様性」についての練習を積んでいた生徒は、対応が出来たことでしょう。

もちろん生徒それぞれの経験や体験によって得意不得意も出てくるため、一人一人に沿ったトレーニングを効果的に積んでいくことが大切だと考えています。

3.まとめ

★【抽象⇔具体】を明確に分け、主張だけを読み取るトレーニングが必要
★想定される出題テーマについて、日ごろから具体例の収集に努めることが必要

以上、広島叡智学園の適性検査B【大問1】についての解説でした。
次回の記事では、社会分野からの出題となる【大問2】を扱います。



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