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【広島叡智学園 二次対策】VUCAの時代が反映された”新傾向”を徹底解説!
こんにちは!公立中高一貫校対策のiBASEです。
今回も前回の記事に引き続き、広島叡智学園の第2次選抜(グループワーク)について解説!特に、2023年度に新たに登場した”新傾向”についてスポットを当て、その背景の分析や対策方法についてお伝えします。※今年度(2024年)開講するオンライン講座については、以下の記事から詳細をご確認ください。
※2024/12/07:残り5席ほど。講座前日の20:00まで申し込みを受け付け中です。各回完結型の講座のため、単発でのお申し込みが可能です。
1.はじめに
毎年、約20名の受講生に参加いただくiBASEの対策講座。選抜終了後にはその受講生たちからの、分厚い合宿レポートが届きます。どんな出題だったか?先生はどんな感じだったか?合宿中気を付けるべきことは何か?…など、選抜内容が公開されない広島叡智学園の第2次選抜においては、生徒たちからのレポートが対策の指針作りの重要な情報源です。
2023年度の具体的な内容はこちらの記事をご覧いただきたいのですが、とても印象的だった出題内容がありました。
それは、2つ目の課題「小学1年生と6年生が楽しめるレクリエーションの考案」の中において組み込まれていた、ある2つの”仕掛け”についてです。これは、過去の広島叡智学園の第2次選抜ではあまり見られなかった内容で、最新年度の新傾向と言えるかもしれません。
今回の記事はその新傾向に着目しながら、広島叡智学園の第2次選抜で問われている力やその背景、また対策の指針について解説します!
2.時代が反映された”新傾向”
それではここから、実際の出題内容を見ながら、2023年度に特徴的だった「新傾向」の具体的な内容を見ていきましょう。まずは、上記の記事から課題の詳細を引用します。
小学1年生と6年生が楽しめるレクリエーションの考案
【課題】
自身の学校に入学してくる小学1年生と交流するための「レクリエーション」を、用意された道具を使って考えましょう。
【ルール】
①空のティッシュ箱、ハンガー、新聞紙などの道具の中から、メインで使いたい道具をグループ内で1つに決める。
②くじ引きでさらに2つの道具を決定する。
③30分以内に【条件】に従ってレクリエーションを考える。
【条件】
①安全に行うことができること
②3つの道具は全て、必ず使用すること
グループで使用する道具を決定し、制作を行っている最中、「遊びの神様」が登場します。計8グループそれぞれが最初に決定したメインの道具をシャッフルしてしまいます。30分の制作時間が終了すると、ペアとなった2グループ間で互いにレクリエーションを体験し合います。レクリエーションのルールや感想だけでなく、制作中に工夫した点などについても発表します。
この出題の面白いところは、2つ。
1つ目は、使う道具のうち2つが「くじ引き」で決まるという偶然性が組み込まれているところ。自分たちで意思を持って選ぶのではなく、その意思の範囲外で選ばれた道具を使って目的達成を目指すよう指示されているところです。
2つ目は「遊びの神様」の登場によって、自分たちが選んだ(最も使いたいと思った)メインの道具がシャッフルされてしまう、外部環境の変化です。イレギュラーなハプニングが起き、生徒たちの中には大きく混乱したチームもいたかもしれません。
こうした仕掛けはこれまであまり見られなかったものですが、いま世界が置かれている時代背景が反映されていると言えるでしょう。現代はVUCAと呼ばれ、未来の予測が見通しづらい、複雑な時代に突入しています。
VUCA:Volatility(変動性)/Uncertainty(不確実性)/Complexity(複雑性)/Ambiguity(曖昧性)
そんな時代の中では、いつ何が起こるかわかりません。たとえば急な震災が起きたり、新型のウイルスが流行して生活が一変したりすることもあれば、AIの発達によって仕事が奪われたりすることもあるでしょう。自分の意思が及ばぬところで起こる”何か”によって、人間が立てる計画は簡単に崩れてしまうかもしれません。「そんな時代の中で、私たちはどう生きていくのか」ーそんな問いが突き付けられたのが、今回の出題だったと考えられます。
3.「ブリコラージュ」的な課題設定
(急に話が飛んでしまいますが)文化人類学者のクロード・レヴィ=ストロースが書いた書籍『野生の思考』の中に、「ブリコラージュ」という概念が登場します。
フランス語で「ありあわせの道具、材料を用いて自分の手でモノをつくること」を意味し、日本語では「器用仕事」「日曜大工」と訳されるこの考え方は、今回の広島叡智学園の出題コンセプトを明確に言い表しています。
最近首都圏を中心に増えてきた、こうしたグループワーク形式の選抜試験において多く見られるのは、1つのゴールに向かって「戦略的」「効率的」「合理的」に協働させる課題です。広島叡智学園も例外ではなく、最短ルートを逆算的にたどらせる課題が、これまで出題されてもきました。
しかし2023年度の「ブリコラージュ的」出題は、従来型の「ゴールからの逆算的課題」とは全く意味が異なります。自分が描きたいゴールや目標から逆算して今あるリソースを活用するのではなく、今あるリソースの可能性を見出した先に、最高のゴールを描く。「未来起点」ではなく「今起点」の発想での価値創造を求めていると言えるでしょう。
こうした課題において重要となる2つのキーワードがあります。それは「妥協」と「意味づけ」。おそらく自分たちが使いたかった道具が、希望通りに使えるとは限りません。今自分たちが使える道具は、ある種「妥協」した末に受け入れるしかない道具たちです。
重要なのは、それを言い訳や予防線にするのではなく、積極的に新しい「意味づけ」を行えるかどうかです。「この道具は、意外とこう使えるかもしれない」「最初やりたかったことは出来ないけど、むしろ面白いかも」…そんな風に、自分がその時置かれた環境や状況を、ポジティブに解釈し、グループで「意味づけ」を行っていくこと。そうした柔軟性や即興性、「意味づけ」の力はこれから社会に出てからも重要である。
ー今回の広島叡智学園の出題からは、学校からのそんなメッセージが読み取れます。
4.試される「ネガティブ・ケイパビリティ」
こうした不確実性に耐え抜き、むしろそんな状況を面白がる力は近年、「ネガティブ・ケイパビリティ」と名付けられ、教育界でも注目を集めています。
書籍の副題にもついている通り、「ネガティブ・ケイパビリティ」とは答えの出ない事態に耐える力。たとえば、今回の広島叡智学園の出題のように不測の事態にも柔軟に対応できること。すぐには答えが出ない問いについて考えるプロセス自体を楽しめること。あえてすぐに出せる答えに飛びつかず、じっくりと考える時間を味わえること。そうしたあり方が「ネガティブ・ケイパビリティ」と呼ばれます。
自分たちで選んだ「メインの道具」さえ取り換えられてしまったとき、皆さん自身はどんな心境になるでしょうか。「信じられない!ありえない!もう無理!」という気持ちになるのは当然ですが、「なるほど、おもしろいな~」とあえてその状況を面白がってみることが出来れば、状況は前向きに開いていきます。
昨年度のiBASEの受講生(合格者)の1人はこの出題を振り返って、私たち講師にこんな風に伝えてくれました。しなやかな「ネガティブ・ケイパビリティ」を発揮しているなと、講師一同感心したのを覚えています。
「メインの道具を取り替えます、って言われたとき、チームのみんなでめっちゃ笑いました。え、そんなことあるん、って。笑 でも隣のチームの子たちは結構イライラしていて、『もっと楽しんでやったらいいのにね』って同じチームの子たちと話してました」
5.おわりに
広島叡智学園の第2次選抜には、毎年学校からの強いメッセージが練り込まれています。専門対策を行う私たちiBASEは、毎年そのメッセージを丁寧に読み解き、受け取り、そしてご縁をいただいた生徒たちに伝えていきます。
今年(2024年)も、全3回(12/8,15,22)の対策講座を開講します。3回の講座では毎回異なるパターンの課題に取り組んでいただきながら、新傾向で広島叡智学園が練り込んだメッセージや出題の背景を、受講生の皆さんにもお伝えしていく予定です。
※具体的な講座情報は、以下のリンクよりご覧ください!
※2024/12/07:残り5席ほど。講座前日の20:00まで申し込みを受け付け中です。各回完結型の講座のため、単発でのお申し込みが可能です。
※昨年度の講座の様子も、ご参考までに!