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茨城県北で本物のリゾートホテルを~120年続く老舗旅館の5代目の挑戦~vol.2

 120年続く老舗旅館「としまや 月浜の湯」の5代目 渡辺 悦夫氏に、としまや別荘「海と空と...」の魅力と社長の想いを取材しました。

vol.1はこちらから ↓

vol.2 父親は公務員で母は教師 サラリーマンだった社長が開く新境地

 「海と空と…」の部屋は、全部で6室。
 シリウス、ペガサス、カシオペア・・・すべての部屋に、星の名前がついている。その中の1室に案内されると、またもや目の前には一面の海が広がっていた。

 「見てください。岩礁が広がっていて、ロビーから見える海とまた一味違うでしょう。」

 なるほど、こちらはゴツゴツとした岩肌が見えて、波が砕ける音がする。

部屋から見渡せる海、小さなお社もあった

 そして、同じくらい目を引いたのが、プライベートデッキにある露天風呂だった。
 調べたところによると、海岸沿いに硫黄泉が出ているというのは、とても珍しいことらしい。源泉かけ流しの露天風呂に手を浸してみると、確かに硫黄の匂いがした。

 「この辺りは、磯原温泉発祥の地なんです。先々代が、ここに井戸を掘ったところ、温泉が自噴したんですよ。」

 そして、その磯原温泉については、先々代の竹馬の友でもあった野口雨情が「磯原小唄」で紹介し、広く世に知られることになったという。

海辺では珍しい硫黄泉 贅沢な源泉100%のかけ流しだそう

「チェックインした、基本的にお食事もお部屋で召し上がっていただいて、お部屋でゆっくりしていただきます。だから、ベッドやアメニティにもこだわっています。」

 木の温もりを感じる部屋に、フランスのSPAブランドのアメニティ、そしてクイーンサイズのベッド。大人の空間だ。

こだわりのうかがえるアメニティ、ベッドは両腕を伸ばしてもゆっくりくつろげそうだ

 更に、食事も渡辺社長が自ら仕入れるアワビや伊勢海老などの海産物や、常陸牛など、茨城の海や地場の幸をふんだんに使用したお料理がいただけるという。デッキに備え付けのバーベキューグリルを使って、海辺でのバーベキューも出来るらしい。

お料理の一例、自慢の海の幸は、社長自ら競りに出掛け仕入れているという

「海と空と…は、小学生以下のお子様はご利用いただけません。
 きれいな海もあるのでお子様連れにも人気の場所ですが、そういった方には本館の月浜の湯をご利用いただいています。ここは、大人のリゾートホテルとしてオープンさせたかったんです。」

 ファミリーなど、幅広い年齢層の方が楽しめる旅館が多いこの県北地域で、高価格帯の大人のリゾートを展開するとは、さすが先々代から受け継がれた才覚を発揮されている・・・。そんなことを考えていたが、実はとしまや旅館は奥様のご実家で、渡辺社長はここを継ぐ前はシステムエンジニアとして働いていたという。

「私の父は公務員で、母は学校の先生でした。商売とは無縁の家庭でしたが、もともと観光事業にも興味はありました。

 旅館を引き継いだ当初は、色々大変なこともありました。でも、会社員として勉強したことや経験が生きていると感じています。
 社員というのは、今、会社がどういう状況で、上司や周囲が何を求めているのかを感じる力が大事です。上司は、我々の報告をもって判断するけれど、その元がちゃんとしていなければ、上司の判断も狂ってしまいます。

 また、プログラムを開発するには、理論やロジックがしっかりしていないといけません。それが今の物事の考え方にも影響しています。幾つもある選択肢の中で、この選択をしたらどんな結果になる可能性があるのか・・・それを突き詰めて考えるのが、経営者の仕事だと思っています。」

 結婚式の披露宴会場として、何百人もの方をもてなすのに、初めの頃は毎回1人分の品数から全体量や、それに係る人員を割り出していたそう。「今では、大体で計算できるようになったけどね。」とお茶目に笑う渡辺社長。
 
 そして、「海と空と…」の「・・・」に込められた意味を語ってくれた。

 vol.3へ続く・・・