100年先まで繋いでいく 私たちの使命 ~泉神社 大塚 祐慶 宮司 ~ Vol.1
日立市水木町には、緑樹の美しい森と、1分間に1,500Lもの清水が湧き出る泉があります。
ここは常陸国風土記に「密筑の大井(みつきのおおい)」として記録されており、茨城県指定文化財史跡に定められた歴史的にも価値の高い森です。
また同記には、「泉の水は夏は冷たく、冬は暖かで、湧き流れて川となっています。夏の暑いときには、あちこちの村里から男女が酒や肴を持ち寄ってこの泉に集い、くつろいで飲んだり食べたりして楽しんでいます。※」とあり、当時から人々の憩いの場所となっていた様子を伺い知ることができます。
(※泉神社HP引用)
そして、この場所には縁結びの神様「天速玉姫命(あめのはやたまひめのみこと)をお祀りする「延喜式内常陸二十八社(えんぎしきない ひたちにじゅうはっしゃ) 泉神社」が鎮座しています。
今回は、泉神社の大塚 祐慶(おおつか ゆうけい)宮司※に、これまでの経歴や泉神社のこれからについてお話を伺いました。
(※塚は豕に﹅、祐は示部)
Vol.1 エメラルドグリーンの泉
それは、住宅街の一角にそびえる森の中にあった。
大きな樹木が生い茂る森の入り口には、大きな鳥居。そして、その向こう側には参道が続いている。参道の両側には、たくさんの神社幟(のぼり)が立ち並び、この神社の氏子や崇敬者の多さをものがたっている。
一礼して大鳥居をくぐると、街中の騒音から離れてしまったかのように風の音や小鳥のさえずりが響き渡っていた。
はためく神社幟を両端に見ながら、
「街の中にあるのに、鳥居をくぐった途端、全く違う世界に来た気持ちになるのはなぜだろう。鳥居からお社まで距離があるのは、お参りをする人が心の準備をする時間を持つためなのかな。」
そんなことを考えていると、あっという間に右手にご神木、左手に手水舎、そして正面には拝殿が拝める場所までたどり着いた。
泉神社は、紀元前42年にこの地方に鎮祀されたと伝えられており、天速玉姫命を祀る延喜式内社で常陸地方では最も古い神社である。そのため、鎌倉・室町時代から多くの武将が祈願に訪れたと言われている。
歴史を知って、そこに立つと、きっと武将もここで戦の勝利を願ったのかな・・・と、なんだか過去と繋がれたような気持ちになった。
お参りした後、一度拝殿の敷地から出て、すぐ脇にある階段を下っていく。
下っている途中から、その美しさにハッと目を奪われた。
弁天様とエメラルドグリーンの泉。
圧倒的な透明度で、こんこんと湧き出ている様子がよくわかる。
そして、冬の午後の太陽が、少し早い夕日のようにオレンジ色に光りながら、キラキラと泉を照らしていた。
「まさしく宝石!ものすごい透明度!癒される~。何時間でも眺めていられそう・・・。」
しばらくの間、泉を眺めた担当は、後ろ髪をひかれつつも社務所に向かう。
泉神社。どんな方が宮司なのだろう・・、ドキドキしながら呼び鈴を鳴らし待っていると、
「こんにちは!今日はよろしくお願いします。」
と、爽やかな笑顔の男性が現れた。
ご年配の貫禄ある方を想像していた担当は、想像とは異なる容姿の方の登場に慌てふためくも、急いで挨拶をする。
すると、「私が、泉神社宮司の大塚です。よろしくお願いいたします。」と、にこやかに応えてくれた。