自宅に、世界で一番ワクワクする《自分の本棚》をつくる (大変な状況のなかでの暮らしのヒント)
今日紹介したいのは、《自分の本棚》というものです。
最近は、本屋さんにふらっと立ち寄り、立ち読みをして帰る、なんてことがなかなか難しい状況になってしまいました。
《なじみの本屋》に足を運び、《本の散策》をする時間は、なんとも言えない贅沢な時間です。
知恵や物語が詰まっている本たちの表紙や背表紙を眺め、気になるものを手に取ってパラパラ見たり、少し読んでみたり。
立ち読みの醍醐味は、この、きちんと読み込むわけではない、気軽な感じで本を開き、ふれあうということです。
このような時間をしばらく味わえないとなると、ちょっと残念ですよね。
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そこで、自分が気になる本・いいなと思う本は買っておき、家の自分の本棚に揃えていきます。
そうやってつくった本棚は、自分にとって、世界で一番ワクワクする本棚になるはずです。
自分が選んだ本(自分選書!)ばかりがそこに並んでいるので、ワクワクしないわけがありません。
そして、その本棚の前で「立ち読み」をするのです。
誰にも気を遣わず、自分の本棚の前で好きなだけ立ち読みをする。
最高ですね。
もちろん、必ずしも「立っている」必要はなく、ソファーやロッキングチェアに座り、珈琲を飲みながら、ゆったりと本を開くというのもよいでしょう。
1日に、20分でも30分でも、そんな時間が取れたら、素敵ですよね。
僕の研究室の学生が、《自分の本棚》の写真を送ってくれました。
この本棚、自分がワクワクする本を、本屋さんや雰囲気のよいライブラリでよくやられているように、《とっておきの場所》に「面置き」で置いている、というところがいいですね。
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今日は、この《自分の本棚》ということについて、少し個人的なこと・考えについても書いてみたいと思います。
僕は、研究・教育・執筆という仕事柄、大量の本を持っています。
自宅の書斎には、ざっと数えて2千冊くらいの本があります。
本に囲まれて暮らしているというような状況です。
これが、僕の書斎の本棚の一部です(このほかに本棚が5個あります)。
本が収納しきれないので、1段あたり前後2列で配置しています。
大学の研究室には、これよりももっと多くの本があります。数えたことはないのですが、数万冊はありそうです。
研究室にいたした方々は、たいてい、「うわぁ、すごい数の本ですね。これ全部読んだんですか?」と聞かれます。
そう聞きたい気持ちはわかります。なにしろすごい量ですから。
あれだけ読んだのならすごいことだな、と思うのは当然でしょう。
でも、答えは「No」です。
本棚にあるのは、読み終わった本ではありません。
「一部は読んで重要だから置いてある本ですが、多くの本は、これから読みたいと思っている本ですね。だから、多くの本は、まだ読んでいないということになります。」
そうなんです。もし読んで内容を知っているなら、もはや手元に置いておく必要はないかもしれません。
これから読む本だからこそ、本棚に置いているのです。
「はあ、そういうものですか……」
予想と違う答えに、ちょっとがっかりされたかもしれません。
でも、僕はここにこそ、本好きの本棚の極意があると思うのです。
自分だけのセレクションの本棚をつくり、それを育てていく。
本棚は、読み終えた本を並べておくだけの場所ではありません。
これから読む本や、いずれ読みたいと思っている本を並べておくことで、それらの本といつでも出会うことができるようにするための場所なのです。
そうやってつくられる本棚は、自分なりの世界観が宿る唯一無二の場所になります。
僕は、「積読」(つんどく)という考えはあまりよくないな、と思っています。
読書のTo Doリストみたいな感じで、強迫的だからです。
読みたい本、読むべき本はあっという間に積み上がり、それを次々に消化しなければならないと急かされ、落ち着かない気持ちになります。
なので、そんな「積読」という考えは、やめた方がいいと思っています。
その代わりに、《自分の本棚》を充実していくという発想に切り替えるのです。
そういう発想の方が素敵だと思いませんか?
きちんと自分の目に届く範囲にあり、しかるべき時期が来たら、あるいはその気持ちが湧いたら、その本は読まれることになるでしょう。
本棚にある本は、大きく構えてそこに存在しているので、積読のように、早く読めとは急かしてきません。
家に、自分が気に入った本たちの住処(すみか)をつくり、その環境・生態系を育てていくんです。
自分がセレクションした本が並ぶ、世界で一つだけの本棚。
家にこもる今だからこそ、《自分の本棚》をつくり、育ててみませんか?
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《自分の本棚》は、「Life with Reading- 読書の秘訣カード(創造的読書のパターン・ランゲージ)」に収録されている読書のコツのひとつです。
読書が苦手な人の多くは、《自分の本棚》をつくるのではなく、「積読」をして、ますます本を読むのが嫌になってしまうということがあるようです。
そうではなく、本の居場所をつくってあげるだけで、本との付き合い方が変わりますし、本を眺めたり読んだりするのが楽しくなります。
読書のコツというと、読み方のコツにばかり意識がいきがちですが、その環境づくりも大切なのです。
実は、今回の前半に登場した《なじみの本屋》、《本の散策》、《とっておきの場所》という言葉たちも、この「Life with Reading- 読書の秘訣カード(創造的読書のパターン・ランゲージ)」のコツです。
この読書のパターン・ランゲージは、慶應義塾大学 井庭崇研究室と株式会社有隣堂の共同研究で制作されました。
有隣堂さんのサイトから、オンラインで注文・入手することができるので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。
こんな状況だからこそ、暮らしに彩りをもたらす、本との付き合い方をよりよいものにしていくのはいかがでしょうか?