本に誘われ、ロンドンでジンを一杯
2019年8月7日から9日までロンドンに行ってきた。
お盆休みに友人たちとポルトガルへ行く予定だったので、その日程に無理やりくっつけての弾丸旅行。
そうまでしてロンドンに行きたかった理由は、ロンドンでジンを飲みたかったから。ただ、それだけ。
ジンとの最初の出会いは、山田詠美さんの『放課後の音符』。(装丁が変わったのを知らなかった)
今より少し前の時代の女子高校生が体験する、甘酸っぱくて、でも少し寂しい恋愛が描かれた短編集。その中の1篇に、ひと夏の恋の思い出を語る女の子の話がある。
女の子は夏休みに行った南の島で、耳が聞こえない男の子と出会う。耳が聞こえなくても、視線と体でお互いの気持ちを伝えあい、たくさんの時間を一緒に過ごす。男の子は時おり、島の果物を使ってお酒を作ってくれた。そのお酒に一番近い味がジントニックで、東京に戻った女の子はたびたびそのお酒を飲んでいる。
この話を読んで以来、人生で初めて飲むお酒はジントニックと決めていた。だけどお酒が飲める年になり、居酒屋で初めて飲んだジントニックは、ただの辛いアルコールだった。その時から長い間、ジントニックを飲むことはなかった。
そんな私がもう一度ジンに興味を持ったのは、朝吹真理子さんの小説『TIMELESS』がきっかけ。
主人公の夫がつける香水が、ペンハリガンのジュニパースリングというジンの香りがする香水だった。調香師がロンドン中のジンを飲み歩いて作ったそう。
香水の描写を読んだ途端、どうしてもこの香りを感じてみたくなり、すぐにジュニパースリングを買った。鼻にすっと抜けるさわやかな香りの奥に、ベリーのような甘さが隠れる香りが面白くて、久しぶりにジンを飲んでみたいと思った。
それ以来、東京のジン専門のバーに行ったり、ネットサーフィンをしながらジンの情報収集を続けていた。
2008年にロンドンで200年ぶりの蒸溜免許が発行されたり、それをきっかけに世界各地で土地独自のボタニカルを使ったクラフトジンがブームになったり、ここ数年のジン業界はなんだか面白いらしい。
だったらいっそ本場のジンを飲みにいこう、ということで決めたロンドン旅行だった。
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