Diversity&Inclusion for Japan(番外編②)〜ゆるく学ぶD&IとCommunity
なぜ書くか
Diversity&Inclusion(ダイバーシティ・インクルージョン ※以下D&I)というコンセプトがビジネスの世界において重要になる中、日本に住む約1億人には世界的な最新の取り組みやトレンドを学ぶ機会が多くありません。Every Inc.では「HRからパフォーマンスとワクワクを」というビジョンを掲げ、グローバルな取組みやアカデミックな文献からD&Iに関する歴史、取組み、事例など”日本なら”ではなく、”グローバルスタンダード”な情報を提供しています。
https://every-co.com/
https://note.com/iamwhatichose/m/mf03aa387c7b1
とある一日の続き…
(Masa)あぁ宅急便、ダンベル来たわ。
(Eishin)すげえ、重そう!あ、で、D&Iって普段あまり意識しないよなって話でしたけど、海外では過去の歴史を振り返りつつ、現在も残る社会問題を考える年間行事がいろいろあるみたいですよ。Black History Month(黒人歴史月間)、Women’s History Month(女性史月間)、 Mental Health Awareness Month(メンタルヘルス啓発月間)、Asian American and Pacific Islander Heritage Month(アジア・太平洋系米国人の文化遺産継承月間)などなど。先月6月がプライド月間だったので、そのへんとコミュニティーという文脈を絡めて多様性についてちょっと考えてみようかなと。プライドって、日本でも聞いたことある人は増えてるんじゃないかしら。
(Masa)これ12キロ。いい感じだわ。
プライドの歴史
(Eishin) 目指せ、ガチムチ? 世界中で毎年6月に祝われるプライド月間の起源は50年ちょい前の1969年6月28日、NYのゲイクラブ「ストーンウォール」で起きた「ストーンウォールの反乱」だと言われてます。ゲイやトランスジェンダーへの警察による抑圧・ハラスメントが原因で勃発した事件です。元々は、黒人トランス女性のマーシャ・P・ジョンソンが警察に向かってレンガを、プエルトリコ系トランス女性のシルビア・リべラがカクテルを投げつけたことがきっかけと語られることが多い中、事の発端については諸説あるそうですね。
(Masa)カクテル飲む大人ってお洒落だよね。
(Eishin) ってか、カクテル投げるって相当な状況ですよね。 でも、それ以前にもLAのクーパー・ドーナッツ、サンフランシスコのコンプトン・カフェ(2017年には跡地周辺が世界初のトランスジェンダー文化地区と制定された)などでも同様の事件が起きていたんです。当時は同性愛や異性装は犯罪行為と見なされ、地元警察による暴行や逮捕は日常茶飯事だったんだそう。公共の場ではもちろん、LGBTQ+コミュニティーの数少ない憩いの場でも「ありのままの自分」で居るには大変な危険が伴ったんですよ。国によっては今も似たような状況なのが、なんとも心苦しい・・・。
幸いにも、現在では西欧をはじめとした多くの国で、社会の理解や権利向上のための法整備が実現しています。身近なアジアの例を挙げると、台湾での同性婚可決やデジタル担当大臣にトランス女性のオードリー・タンが任命されるなど、進歩的なニュースを耳にした方もいらっしゃるかと。そういった進歩や「ありのまま」の素晴らしさを祝福するとともに、抑圧や差別に対するリジスタンス・リジリエンスの歴史を忘れないために制定されたのがプライド月間なんですよ。
(Masa)プライド期間=虹色(レインボー)期間ってやつね。
プライドの現状・課題
(Eishin)そうそう。昨年はコロナの影響もあり、各国のプライドパレードや祭典が見送りになったりオンライン開催となりましたが、今年はソーシャルディスタンスを保ちながらのイベントが盛り上がりを見せています。東京レインボープライドの開催は4月末から5月頭にかけてと既に終了していますが、ご興味のある方は地方各地のイベントや7月のレインボー・リール東京 (東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)などに顔を出してみるといいんじゃないかと。当事者じゃないけど参加していいの?と思われるかもしれないですが、多くのイベントはアライに対してもオープンですよ。
(Masa)新井?
アライ(Ally)とは何か?
(Eishin)アライってのは「『味方』を意味する単語で、そこから転じて『LGBTQ+を理解・支援する人』」のことです。英語圏ではLGBTQ+に限らず、人種や国籍の有無、障害などさまざまな「非当事者だけど支援者」な人のことを指すことが多いかな。
ひとりひとり違うことが当たり前な社会では、自身の属性や経験とはかけ離れたことに直面することが多々あるし、同じマイノリティとしてひとつのカテゴリーに括られても、違った背景・経験ゆえに分かり合えないこともあると思います。
また、普段はマジョリティ側だとしても、環境や状況が変われば立場が一転し、自らがマイノリティになることだってあるんじゃないかと。「このイシューは自分には関係ない」と思う代わりに、自分と違った視点に注目することで世界が広がるって考えたら、ちょっとわくわくしません?
(Masa)マイノリティレポートとか面白かったよね。
(Eishin) 観てない・・・。日本においては、LGBTQ+に対しての暴力的な差別や露骨なヘイトクライムを見聞きする機会が海外に比べて少ないから、宗教的・文化的抑圧のある他国に比べたらマシだし、特別な支援や配慮は必要ないのでは?という声もあるかもだけど。
でも、P&Gジャパンと一般社団法人fairによる調査では、「LGBTQ+の人々の最大の悩みは『差別や偏見』であり、非当事者の「想像」とのギャップ」が浮き彫りになったんですって。「自分らしく生きるのに苦労を感じるコミュニティ」は45.5%で職場がダントツ一位だと。社会や企業における安心、所属感や公平性に改善の余地があるのは明らかですよね。
(Masa)やっぱりトム・クルーズがさ、すごくいいんだよ。
“I statement” :「わたし」から始まる宣言文
(Eishin) トム・クルーズ推しですね笑
じゃあ、アライとして何が出来るのか?「自分は支援者だ!」と声高に宣言する必要は必ずしもない気がします。また、世の中の多種多様な人々すべてを知ることは出来ないし、中には同意できない考え方もあるかもしれない。
どこから始めればいいの?ってなると思うんですけど、まずは「すべての人の価値観に向き合う」姿勢があればいいんじゃないかと。真摯に向き合い、丁寧に話を聞くことは、シンプルなようでいてとても重要です。
立場変わって今度は自分が話をする際、不用意な発言をしてしまわないか心配に思うかもしれないですよね。自身のバイアスやマイクロアグレッションに気付ければ何よりですが、如何せん無意識な刷り込みであることが多いし、そもそもバイアスフリーになるのは現実的じゃないし。そこで、当事者・アライ関係なくI statement(アイステートメント)を会話に取り入れることをお勧めしたいです。
(Masa)アイステートメント?
(Eishin)よく人って「あなたは〇〇だ」「(特定の人種・性別など)はこうだ」って言いがちじゃないですか。アイステートメントは、その"あなた"を"私は"に変えるものなんです。
(Masa)「男性は体が強い」「アメリカ人は楽天的」「日本人は細かすぎる」「神奈川県出身者は横浜好きすぎる」とか?
(Eishin)といった具合に、意図せずとも相手に対する批評や決め付け、差別的発言などとして受け取られる可能性のある”You statement”を使わず、自身の立場や経験などの根拠に基づいて発言することを指すんですよね。
もし誤解があれば、相手も修正しやすくなる。そもそも、知ったかぶりって疎まれがちだし、避けたいところですよね笑コミュニティーの集まりでも心がけとして広まってるんですけど、「わたし」からはじまる宣言文みたいなもので、60年代にアメリカの心理学者Thomas Gordonが提唱した概念です。
(Masa)マリナーズのセカンドな。
(Eishin)日本語、特に話し言葉だと、そもそも主語を省くことが多いけれど... 例えば、「(あなたはわたしの)話を聞いてないよね」はトゲがあるし、どうしても相手を責める口調だと解釈されがちです。それを「(わたしの)話を聞いてほしい」「話を聞いてくれるとうれしい」というふうに自分を軸にした話し方に変えると、相手もすんなり受け入れやすいっていう。普段のマネジメントとかリーダーシップにも取り入れられる手法だと思います。
I statementを用いた健全な議論を実践すれば、偏見や思い込みが原因の不要な傷つきや衝突などを防ぎながら、あらゆるバックグラウンドに由来する多様な意見を引き出せるんじゃないかなー、って思ってます。
(Masa)ミッションインポッシブル続編出ないかな。あ、Uber来たわ、ほな!
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<参考文献>
What is Pride Month and the History of Pride?, https://www.them.us/story/the-complete-history-of-pride
The Transgender District, https://www.transgenderdistrictsf.com/
Racial Color Blindness, https://www.hbs.edu/ris/Publication%20Files/Racial%20Color%20Blindness_16f0f9c6-9a67-4125-ae30-5eb1ae1eff59.pdf
What are the Essential Components of an I-message?, https://www.gordontraining.com/leadership/what-are-the-essential-components-of-an-i-message/
Are 'I' Statements Better than 'You' Statements?, https://www.psychologytoday.com/us/blog/cui-bono/201211/are-i-statements-better-you-statements
著者紹介:松澤 勝充(Masamitsu Matsuzawa)
神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供するBerkeley Hass Global Access ProgramにJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事。
2020年4月1日に株式会社Everyを設立。採用や人材育成、評価制度など、企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発したプログラム(HRBP養成講座)で、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」を展開している。
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近松瑛真(Eishin Chikamatsu)
東京都出身。University of California, Berkeley大学正規留学を通して社会学・LGBT学を学ぶも、結局学外に広がるアメリカ社会の全貌がつかめず。卒業後にキャンバシングを通して文化・教育・政治などにまつわる会話やエンカウンターを増やすことで、英語力アップ&理解を深める。ベイエリアの環境系NPOで営業・採用・ボランティアコーディネーターなどを兼任したのち、日本語を活かした仕事に就きたいと思い立ち方向転換、CCSF医療通訳プログラム首席卒業。現在は某シリコンバレー企業で日本市場の広告QAを勤めつつ、医療通訳・翻訳家、ときどきアクティビスト・オーガナイザー。日米ハーフでトランスジェンダー・ゲイ。
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