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父・薫の話 B面
【父・薫の話B面】
今日観たヴィム・ベンダース&役所広司の「perfect days」。
父・薫と重なった。
薫は真性のヒモ体質で借金王でほぼアルコール依存でほぼギャンブル依存だった。そして最後は病院を振り切って自宅で孤独死。
しかもトイレでこときれているのを、死後1週間以上経った頃に発見されて警察のお世話になるという見事な最期だった。
こう書くと、perfect daysの役所広司の平山さんとは全く違うのだが、それは薫のA面にすぎない。
薫のB面は平沢さん的なところがあったように思う。
さびれたアパートの一人暮らし、つましい生活の中でも、どんな状況でも、楽しみを見つけて暮らせる人だった。
自宅近くの遊歩道の散歩が日課だった
その道に咲く季節の花を愛でていた
散歩中に出くわした、泣いているおばちゃんに声をかけて仲良くなっていた(死後、このおばちゃんから父の携帯に電話がかかってきて、とても優しくしてもらっていたと聞いた)
元々編集畑の人で本を書くのも文を書くのも好きで、読書家で、お金がなかったから図書館で本を借りたり古本屋で買っていた
遺品には区立図書館の借りっぱなしの本が残っていた
子どもはほっぽって蒸発するような人だったのに孫のために物語を書いたりした
猟師町に生まれて魚を捌くのが得意だった
使い終わった包丁はきちんと研いでいた
ちゃんと包丁研げよ、と頼んでないのに砥石をくれた
美味しいものを食べるのが好きで、小さな土鍋でご飯を炊いて、贅沢ではないがいつも何かしら美味しいものを作って食べていた
そのご飯目当てに人がやってきて食って飲んでわあわあ喋って喧嘩みたいになってまた忘れた頃にやってきていた
60を過ぎても、焼き鳥屋の厨房でアルバイトを始めたりしていた(面白いぞ、と言っていた)
いつだって、まだまだ一発当てるぞと、微妙な企画をいつも考えていて、それは私の知る限りはいつも実現しなかった
そして最期、コロナ禍で腐敗した遺体はその存在も確かめようがなく、顔も見れないまま突然私のいる世界から消えてしまった
まだ力がある頃はいろんな想いもあったり愚痴を言ったりもしてたかもしれないが、後年、私がよく交流するようになった頃には、目の前の今がどんな状況でも、楽しんで生きられる逞しさと、人に迷惑はたくさんかけているのになぜか惨めたらしくならない、憎めない、謎の矜持と魅力のあるひとだった
全然平山さんとの共通項をうまく書けないけれど、時代や世の中やいろんな、みんながつい流されてしまうものに合わせて、自分を小さくしたり大きくしようとしたりもせず、明け渡さないでいるところ、が似ていたのか
とにかく、平山さんに触発されてしまって
今、無性に父を思い出す
父が大好きで大好きで、
大好きと言いながら
バカやろーとも言いたくて
そう思えることに、
また泣いている
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薫の話 A面
薫が死んだ時に詠んだ句
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