あの匂い

伊豆にある祖父母の家は独特な匂いがする。

木とも漆喰とも潮の匂いとも違った不思議と落ち着く匂い。

玄関に入るとすぐに分かる。

その匂いが、祖父の好きな煙草の匂いだと知ったのは

祖父が亡くなってから7年が経ち、自分が煙草を吸うようになった今だった。


祖父は孫の前では決して吸わなかったから

きっと玄関で僕らが来るのを待ちながら、しばし禁煙前の最後の一本を吸っていたのだろう。

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