思い、思われ、ふり、ふられ
自分の気持ちに真っ直ぐに行動している人を見ると、眩しい、と思う。
周りへの配慮は最低限行いながら、自分の心の声に耳を傾け、気持ちに正直に行動するって、言葉にするより遥かに難しいと思う。
意識していても気づいたら周りに流されて行動してしまうし、仕事をしていたら人目を気にして自分を出せないことの方が多く、萎縮してしまう。
僕は小学校の時からそうだ。
兄が相当にわがままな性格で、兄の機嫌が家族を雰囲気を大きく左右してしまう家庭だった。父も母も僕も、兄の機嫌を損ねないように行動する。3つ下の弟だった僕は些細なことでも兄を怒らせまいと、ビクビクしながら生きてきた。弟の僕には無愛想でもあり、ジャージ1つ借りるのも、タイミングを見計らい、恐る恐るドアをノックしていたものだ。
この時、「思い、思われ、ふり、ふられ」の真っ直ぐな由奈のように、終盤の朱里や和臣のように、自分の気持ちに正直に行動できていたら、人目を気にしすぎる今の性格が少し変わったんだろうか。
でも、兄がわがままだったことを自分の気持ちを出せなかった理由にしている時点で、子ども頃の僕は、序盤の和臣と同じだったのかもしれない。
「思い、思われ、ふり、ふられ」は、咲坂伊緒原作の漫画を、「アオハライド」、「ぼくは明日、昨日の君とデートする」等で有名な三木孝浩監督が実写映画化した、4人の高校生が自分の置かれた環境の中でもがき、恋をし、成長していく、青春が詰まった物語である。
ただの恋愛映画では無く、主人公達が自分や周りの人と真正面から向き合う過程で、悩み、共有し、関わり合いながら人生で大切なことを学んでいく物語だ。大人が誰しも通ってきた学生生活の中での自分を、4人の異なる性格の主人公達の誰かに、思わず投影してしまう。
三木孝浩監督の描写、ナレーション、そして浜辺美波を始めとする俳優達の微妙な表情やしぐさの変化で心の機微を表現する絶妙な演技に、すぐその世界観に引き込まれた。
青春映画でお決まりの文化祭も、浴衣でのお祭りも、中高6年間男子校に通っていた僕には些か刺激が強く、あぁこんな青春してみたかったなあ!!、と高台から叫びたくなるシーンが満載で楽しい。
浜辺美波、北村匠海は君の膵臓を食べたいから大好きな2人であり、そして由奈を演じる福本莉子、和臣を演じる赤楚衛二は今回初めて拝見したが、役にとてもしっくりきていて、声も良く、演技もとても好きだ。
そして改めて、自分の気持ちに正直に生きること、また自分の好きを見つけ追い求めることの素晴らしさを痛感した映画だった。
あぁ、生まれ変わったら共学にしよう。
男子校も楽しかったけどね。やっぱり憧れるよね。