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ASD/ADHD父@胃痛の話③
昨日の話は平行線だった。
相手は発達障害の特性持ち。
思ったことを素直に話しても伝わるはずがない。
私の望みは気持ちを理解してもらうことじゃない。
そんなことはずいぶん昔に諦めたじゃないか。
今回も改善させたいポイントを整理しよう。
過去、私が胃腸を壊してきた7年間に、散々父さんから人並み以下の扱いを受けてきた。
モラハラフキハラは、ASDの特性からルーティンを崩したくない父さんの必死の抵抗だったのかもしれない。
吐き下して意識飛ばしかけて弱った相手に、ADHDの衝動性や捻じ曲がったマイルールを口の多動性で押し付けることで思い通りになってきた結婚生活。
いや、幼少期から口が達者で気難しく、親を言い負かして、それを優しく許容してもらいながら育ったと聞いている。
彼の特性は、歪んだ成功体験で強化されている。
その結果、離婚を突きつけたときに
「俺がイライラすれば周りは思い通りになったのに…どうして?」
と悪びれず発言できてしまうモンスターが爆誕してしまったのだ。
モンスターに倫理観や常識を求めるのはムダ。
今は離婚したくないから必死に取り繕っているだけで、本質は私とはまったく相容れず、こちらが理解したいと1ミリも思わない相手であることを忘れてはならない。
よし。大丈夫。
今回の私の望みは『しんどいアピールやめろ』だ。
見ていて不快極まりない。
同じ状況で酷いことをしてきた加害者が、しんどいアピールすれば優しく心配してもらえると思っている考えの甘さが不快だ。
夜中に夜食を食べて隠す人としての器の小ささも。
指摘したときの聞くに耐えないチープな言い訳も。
その言い訳を心の底から理にかなっていると思って絶対に曲げようとしない腐った価値観も。
『しんどいアピール』がなければ、見なくていい。
目標を明確にして、脳内シュミレーション。
必要な情報を集めて、改めて父さんにアタックした。
「昨日はごめんね。父さんすごく辛そうだから心配で」
「あ?あぁ…」
「私も胃腸の辛い時期が長いから、今の父さんすごく辛いだろうなと思ったら、なんとかしてあげたいって熱くなっちゃって」
「まぁ、すごく辛いな。今朝も調子悪い」
「そうだよね。ちょっとよくなっても、次食べたら調子崩すかもって思うと、食べるのも怖くなっちゃって」
「そうそう」
「すごく辛い中で頑張ってくれてたんだよね」
「そうなんだよ」
「私は父さんが辛そうに食事する姿が見えるとすごく心配で。カロリー摂取しないとって無理して夜中にカップラーメンとか食べてる話を聞いたら余計に心配になっちゃって。食べるの怖いのに食べないといけないのは辛いよね」
「いや、腹は減るんだよ。むしろすごくお腹が空く」
「そうなんだ。食欲はあるんだね。でも、食べたいけど食べたら体調崩すかもって頭によぎりながら、恐々食べてたんだね。それは辛いね」
「うん」
「昨日反省してね、父さんの役に立ちたくて、色々調べた。生クリームとアルコールを緩和するエビデンスは見つけられなかったんだけど、『生クリーム』『胃腸』で検索したら控えた方がいいって情報がたくさん出てきたよ。ほら。」
画面をチラッと見るだけで無言の父。
この情報は信じたくないらしい。
「ネットの情報なんてエビデンスが不確かだよね。息子が胃腸風邪引いた時に小児科の先生は、胃を冷やさないもの、脂質を控えるようにって言ってたよ。私も胃腸科にかかってるけど、同じこと言われた」
「…」
「父さんは信頼できる情報しか信用しないよね。私なんかがいくら言っても受け入れられないか。ごめんね。またやっちゃったよ。あなたのことが心配でついあなたの気持ちを置いてけぼりにしてしまう…辛い中でそんな訳分からん話されて迷惑だよね…本当にごめん」
「いや、まぁ…次の受診で食べてはいけないものを聞いてもみてもいい」
「生クリーム、アイス、カップラーメンは胃に問題ないかって聞いてくれるの?」
「具体的には聞かない。何か良くないものがあれば避けるだけだ」
「そっか」
「…」
「ADHDの薬を変えてもらうのはどうかな?」
「いや、病院で種類は1種類って聞いてる。前に相談したら胃薬処方されそうだったから断った」
「ADHDの薬は3種類あるはずだよ。コンサータ、ストラテラ、インチュニブ。私でも知ってるくらいだから、お医者なら分かってるはず。ネットにもほら」
URLを送ると、こちらは興味を持った様子。
「俺の飲んでる薬がない」
「ジェネリックだからでしょ。今服用してるのはストラテラ」
「次の通院で相談してみる」
「さっきみたいに自分の価値観に凝り固まって、他者の意見を受け入れない瞬間が私はしんどいです。あなたのことを心配して伝えても、『そんなものはない』で片付けられる。回避するには労力を割いて論破できるだけの情報を集めないといけない。だから私は、あなたと話し合ったり、分かり合うのを諦めることが多いです」
「…」
「よかれと思って助言しても突っぱねられたら悲しい。悲しみの次に出てくる感情は怒り。逆の立場なら『じゃあもういいわ!勝手に苦しんどけ』って感情が湧いてこない?」
「まぁ…分かる」
「それが昨日の私怒ってた状態」
「…」
「どっちのエビデンスが正しいって話じゃない。私の世界線では、心配を無碍にして理解できない行動を繰り返しているように見える。それは理解してくれた?」
「まぁ」
「私の根っこには心配がある。あなたが苦しそうだと心配で不安になるの。あなたの世界線では要らぬおせっかいなんだと思う。でもあなたのことが心配だから、辛そうで見てられない。少しでも苦しみをとってあげたくて声をかけてしまう。そしたら世界が違うからぶつかるよね」
「…」
「相手のことを思いやってるのにぶつかるのはすごく悲しいことだと思う。あなたにはあなたの信じる世界があるのも理解していきたいと思う。だからお願いなんだけど、私に辛そうな姿見せないでくれないかな?」
ハッとした表情の父さん。
「分かった。そうする」
輝いた目で答えた。
以来、しんどいアピールは見せなくなったので目標は達成した。
特性のある人間を行動変容させたいなら、正攻法は通じない。
分かってるし、できるけど、すごく疲れる。
トラブルがある度に、息子が成人したら離婚する約束を思い出す。片親では金銭的に不安が残る。ASDの息子に最善の環境を与えるために、この生活を自ら許容している。この選択を選んだのは私だ。
父さんは残り10年で生まれ変わった自分を見せるつもりらしい。
私のことを愛しているのだそうだ。
愛している人の心の内を理解することもできず、自分は頑張っている、改善していると信じている。
私もそんな幸せな世界線で生きてみたいものだ。