アイデア 服部一成100ページ
就職活動もままならない大学4年生の時、アルバイト帰りに本屋でたまたま見かけたデザイン雑誌『アイデア』の服部一成特集。
彼が繰り出す100ページのグラフィックデザインに一目惚れし、美大生でも専門学生でもないのに、気づけばデザイナーになろうと決めていた。雑誌で3000円は学生にとっては痛い出費だったが、夢を叶えるためのチケットだと信じ勢いよくレジへと向かった。
それまでは音楽中心の生活で、グラフィックデザインはCDジャケットでなんとなく接種していた。ミスチルや渋谷系を手掛けた信藤三雄の作品は小学生ながら不思議とドキドキしていたことを今でも覚えている。
流行通信とキューピーハーフをはじめとする自由で軽快な服部一成の作品をその雑誌で知り、それ以降グラフィックデザインが人生の中心となった。
これでデザインが上手くなるというような教則本には一切手を出さず、音楽や映画と同じように心躍る作品を貪るように追いかけていった。亀倉雄策、ポールランド、ソールバス、田中一光、原弘、仲條正義、葛西薫とグラフィックの歴史と文化を築いた名だたるデザイナーからもたくさんの刺激を受けた。学校で無理やり叩き込まれた知識はいつの間にかすっからかんだが、一度覚えたデザインはこの先も忘れることはないだろう。
グラフィックデザインの魅力は一瞬で勝負が決まるところだ。その一瞬のために何時間もかけて制作をする。努力や苦労も真っ新な平面には無力同然。パッと作ったものがヒットすることだってある。計算できない生きたアウトプットが素晴らしい。
一つのきっかけで人生が変わる。人生は早い遅いではなく出会い。