ハンナ・アーレント『パーリアとしてのユダヤ人』より「チャーリー・チャップリン」
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今回はハンナ・アーレント『パーリアとしてのユダヤ人』の中で言及されているチャーリー・チャップリンについての個人的な考えをお話ししたいと思います。記事中には私個人の偏見や認識の誤りも含まれていると思います。その点のご理解のほど、よろしくお願いいたします。
学問・思想・宗教などについて触れていても、私自身がそれらを正しいと考えているわけではありません。
序文
以前にも一度チャップリンについての記事を挙げましたが、今回は以前から何度か取り上げたいと言っていたハンナ・アーレントのチャップリン論という側面から論じたいと思います。
パーリアとしてのユダヤ人
ハンナ・アーレントのいう「パーリア」とは日本語でいうところの不可触賤民のことで、国際社会から疎外された国家を示すパーリア国家やパーリア資本主義という言葉もあります。タミール語から英語になった言葉で、元はカースト制度の下で太鼓を叩くことを生業としている下位階級のことをいいます。
ハンナ・アーレントはこの「意識的パーリア」をユダヤ人少数派の誇るべき伝統であり、ユダヤ人のあらゆる欠点として、儲け主義や成り上がり者の特徴を挙げています。
チャップリンについては次のような注釈がついています。
この章が1944年に書かれているので、1919年にチャップリンによって設立されたユナイテッド・アーティスツの『独裁者』(1940)までが作成されていることになります。1940年代以降、チャップリンは共産主義者であると非難され、実際に1952年の映画『ライムライト』のプレミアに出席するためにイギリスに向かう途中に、アメリカはチャップリンの再入国許可を取り消しています。
1940年には共産主義者そしてユダヤ人の嫌疑かけられていたと思われることから、実際にチャップリンがユダヤ人だったのか、共産主義者だったのかということについて決定的な判断は下せないところはあります。
イギリス外務省は2003年に、ジョージ・オーウェルがチャップリンを秘密の共産主義者であり、ソ連の友人であると密かに非難していたことを明らかにしています。
『独裁者』は公開前のプライベート上映でチャーチルとフランクリン・ルーズヴェルトから好評を得ており、1941年の就任式で映画の最後のスピーチをラジオで読むことを薦めています。ニューヨークタイムズは「今年の最も待望の映画」などと膨大な宣伝を行っていたことなどを考慮しても、『独裁者』がルーズヴェルト政権(ニューディーラー)のプロパガンダであった可能性も当然否定できないでしょう。
この文章ではアーレントはチャップリンを完全にユダヤ人であるとして扱っています。これは本文を書いた後に、チャップリンの出自の告白があったため、注釈がつけられたということなのかどうかは私には分かりませんが、注釈と興味深い逆転が見られます。
アーレントのこの指摘は実際にそうなのでしょう。初期にみられるチャップリンのドタバタ喜劇を端的に表現していると思います。しかし、次第に、というよりは1940年代にはいるとそこに政治色が強くみられるようになってきます。
ハンナ・アーレントがいうように『独裁者』の演説が平凡な人間の素朴な知恵だったのか、あるいは平凡なアメリカ人を戦争という非日常へと導くための巧みな戦争プロパガンダだったのかはともかく、その後、例えば1943年にアメリカのウォルト・ディズニーは『死の教育』によって対ナチスドイツ用の戦争プロパガンダを作っており、また、ハリウッドの映画会社の創業者のほとんどすべてがユダヤ人であったこと、ユナイテッド・アーティスツの元社長ジョセフ・シェンクがユダヤ人であったこと、ユナイテッド・アーティスツの主要株主の多くがユダヤ人であったことなどを鑑みると、言い換えると、ハンナ・アーレントが軽蔑的に論じた成り上がりもののユダヤ人たちが背後にいたことを鑑みると、簡単に結論を出すことは難しいものがありますが、いずれにせよ、現実はそれほど単純なものではないということくらいは認識しておくべきであるようには思います。
映画がクリエイターの純粋無垢な想いで作られていると考えている人は日本のみならず世界中にいるわけですが、それがどんなに理想的な言葉や映像で並びたてられていたとしても、それ自体が、悪意ある意図的なプロパガンダではないという根拠はどこにもありません。3S政策という言葉をよく理解されている人でも、映像を用いることで簡単に操作することができるということを理解する必要があると思います。
感想
以前に林千勝氏がチャンネル桜にて、「国際販売大キャンペーンを大群衆のいるところに出て行って演説をした横にいたのはフランクリン・ルーズヴェルトであった」としています。「ドイツ軍はそこまで来ている。我々はそれを阻止しなければならない。」と演説したとしています。ソースがどこにあるのかは知りませんが、検証する必要がある情報であると思います。
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最後に
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