ブルーベース(下)
「なにぼーっとしてんのよ。あんまり綺麗でビックリした?」
下から覗かれ、僕は慌てて少し距離をとった。美貴から慣れない化粧品の香りを感じるのが、なんとなく嫌だった。
「唇、なんかヌルヌルしてるよ」
「…あんたさぁ。その貧弱な語彙力でよく本が読めるわね。せっかく新色塗ってもらっても、見せる相手を間違えたら意味ないわね」
紙袋を僕に押し付ける美貴の顔には、すでにいつもの憎たらしい笑顔が戻っている。
「あーお腹空いた。早く行こ」
美貴は唇だけで微笑んで歩き出した。その唇は、先程は桜の