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【短編小説】 あの雲を追いかけて

一体どれくらいの時間が経ったのか。気づけば高三の夏。自分の記憶が正しければ、高一の終わりから学校に行っていない。特に理由はない。別にいじめられてもいないし、友達も多くはないがそれなりにいた。
 
 ただ何となく「学校」という退屈極まりない場所に行くのが億劫になっただけで、心身共に健康だ。家事の手伝いやおつかいにも行くし、散歩にだって行く。不登校ということを除けば良い息子だと思う。我ながら。

 今日は隣町まで海を見に行こう。何より小、中と仲が良かったユースケがいる。久しぶりにユースケに会ってみるのもアリだな。
 
 自転車に飛び乗った。隣町は意外と遠い。車で行くと近く感じるのだが、自転車だとそうはいかず、一山超えなければいけない。
 
 おまけに今日はいや、今日も、35度を超える猛暑日だ。もはやこの異常気象にも慣れてきた。このまま異常気象が続けば人類は、

「うわあー、こりゃ滅びるわなあ。」と、

「明日は雨かあー。」

みたいなテンションで滅んでいくのだろうか。むしろその方が気持ち良いか。

 途中でコンビニに寄った。500ミリリットルの水を買ったが、一瞬で飲み干した。腰を下ろしたが最後、もう一度この重い腰を上げるには相当なエネルギーが必要だった。ぼーっと空を見上げ、雲の流れを目で追っていた。
 
 よし、あの雲がこの街を抜けたら行こう。良い天気だ。もう一本買った水の残りを飲み干す。ん、雨が降ってきた。

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